音盤狂日録


9月30日(日): 

 数か月ぶりに聴き比べをした。マーラー;交響曲第6番である。
 斉諧生にとって、マーラーは比較的苦手にしてきた作曲家であるが、このあたりで一度ちゃんと聴いておきたいと思い、馴染みの薄い第2・5〜8番のうち、第6番を選んだ。
 今は昔になったが、1982年、エリアフ・インバル(まだ無名に近かった)と日本フィルの実演で、この曲を聴いて感心した記憶がある。
 苦手とはいえ、なんだかんだで数えてみたら無慮17種を架蔵しており、とても全部は聴ききれないので、両端楽章の冒頭各1分ほどを聴いてみて、6種を選んだ。

 
以下、録音年順に配列。
 
ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)ニューヨーク・フィル(NYP自主製作)
1955年4月10日、カーネギーホールでのライヴ録音。どういうマイク配置なのかわからないが、各楽器が非常にリアルに聴こえる。
マーラーを得意にしたことで有名なミトロプーロスだが、ここで聴ける音楽は世紀末的とか耽溺とかいうよりも、「雄渾」・「絢爛」といった言葉を想起させる。
主旋律を中心に骨太に押しきっていく。極端に言えば、とても破滅しそうにない雰囲気だ。
オーケストラも上手い。ヴァイオリンや木管のソロも肉の厚い音色で美しく、金管も最後まで息切れせずに圧倒的な吹奏を聴かせる。
なお、第1楽章の提示部の繰り返しは行わず、第2楽章アンダンテを配している。
 
ハンス・ロスバウト(指揮)南西ドイツ放送響(DATUM)
CDには1960年と表記されているが、ディスコグラフィによれば1961年3月30日〜4月6日に放送用にスタジオ録音された音源。エアチェック・テープのCD化とおぼしく、鑑賞には差し支えないものの、あまり優れた音質ではない。
ところがプアな再生音から、非常に立体的な音楽が聴こえてくる。管楽器がクリアに響いているのである。今の指揮者でいえば、ブーレーズのような音楽づくりだったのであろう。
もっともロスバウトのマーラーは、ブーレーズ以上にドライだ。
「思い入れ」は皆無、マーラー的な音のずり上げや粘りをことごとく排し、引き締まったテンポと音響で、くっきり・グイグイと進んでいく。
音楽の輪郭・構造を力強く描き出した演奏といえるだろう。
 
ぜひぜひ正規音源からのCD化を望みたい。以前WERGOレーベルから出た同じ作曲家の第7番(1957年)などモノラルながら素晴らしい音質だった。
この指揮者の音楽は、今の時代にこそ適合していると思う。バーデンバーデンの放送局に残っている音源が大規模に発売されれば、一般的な評価は急上昇するのではなかろうか。
 
ラファエル・クーベリック(指揮)バイエルン放送響(audite)
先日発売されたばかりの、1968年12月6日ヘルクレス・ザールでのライヴ録音。
第1楽章など、提示部を繰り返しているにもかかわらず20分30秒という超高速(テンシュテットは25分前後を要する)。
単にテンポが速いだけでなく、異様な切迫感がある。フレーズの切り方あたりから来るのだろうか。
冷静なロスバウトの次に聴いただけに、よけいに興奮ぶりが目立った。
テンポの揺れが大きいばかりでなく、弦合奏が歌うところは陶酔的な表情さえ浮かんでいる。
アンダンテも優美に歌い始めて、非常に切実な、胸一杯の終結に至る。
 
クーベリックのマーラーというと、スタジオ録音盤は「派手な効果や誇張がない」・「落ち着いたスタンス」等と評されるのが常だが、ライヴではまったく違った音楽をやっていたのである。
終楽章など、オーケストラが浮き足立っているような感じさえある。
 
クラウス・テンシュテット(指揮)ロンドン・フィル (1)(EMI)
テンシュテットのスタジオ録音盤で、1983年4〜5月の収録。
一聴して、音の「力」、音楽に込められたエネルギーに圧倒されずにはいられない。
一音一音から、指揮者の思い入れが伝わってくるといっていい。聴く者は、一瞬も弛むことのない噴出を浴び続けることになる。
弱音器をつけた金管の強調、ピツィカートの強奏、弦合奏のちょっとしたアクセント、特定のパートの突出等々、言ってみれば「過剰さ」からマーラーへの共感、同化が立ちのぼってくるのだ。
また、フレージングの呼吸が深く、音楽のスケールが大きいことも特筆したい。
スケルツォでは荒れ狂う主部と柔らかい中間部の対比が光る。
アンダンテでは、遠いところを思いやるようなピアニッシモの歌が、彼岸を渇仰するようなクライマックスに至る。ここにあるのは、人間的な愛の歌ではない。
そして、終楽章。冒頭のチューバ・ソロはもとより、それを支えるハープの低音も意味深い。金管の咆哮やハンマーの打撃に向けた大きな盛り上がりも強烈である。
まさしく「修羅」
この楽章については「英雄の闘争」と表現されることも多いが、もう一つぴったりこないように思う。特定の相手との対立、争いと勝ち負け、という音楽ではない。作曲者が「(英雄は)運命に打ち倒される」と書いたのである。
人間の力ではいかんともしがたい、運命との葛藤・相剋・苦悩・破滅…それには「修羅」という言葉がふさわしかろう。
 
今回聴いた6種の中では、これがベスト
ただし、気楽には聴けないし、始終聴ける演奏ではないと思う。
 
なお、試聴は東芝EMI盤(TOCE9663〜64)で行ったが、これは日本でリマスタリングされた盤で、輸入盤(手許にあるのはCMS7-64476-2の4枚組)とは音の傾向がかなり異なる。
おそらくピークを抑えてレベルの低い音を持ち上げ、音圧を強めているのだろう。「音が近い」ように聴こえる。(反面、音場の奥行きやダイナミックレンジの広さでは輸入盤が優れている。)
↑の感想にも、この音の特徴が影響しているので留意されたい。
 
ガリー・ベルティーニ(指揮)ケルン放送響(EMI&DHM)
1984年9月21日、ケルンでの収録。このコンビの全集のうち最初に録音されたものであった。
管弦楽の質感が美しい
上記テンシュテット盤ではオーケストラが悲鳴をあげるように響く箇所も見られたが、指揮者の方向性かオーケストラの力量か、どんな強奏でも余裕が残っている感じ。
両端楽章のクライマックスでも音楽美を維持しながら、マーラーが書いたものを不足なく音化している。テンシュテットのような逸脱はないが、内側に炎が熾っているのは間違いない。
個人的な意味よりも、もっと客観的というか、宇宙的な視座に立っているかのようである。
アンダンテは至純、至福の透明感を湛えている。これほどチェレスタの響きが似合う演奏もあるまい。美しさを保ったまま高揚していく楽章後半は聴きもの。
 
クラウス・テンシュテット(指揮)ロンドン・フィル (2)(EMI)
1991年11月4・7日、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでのライヴ録音。
基本的には上記のスタジオ録音盤と同様、不世出のマーラー指揮者の存在を感じさせる名演だが、比較すると、アゴーギグやテンポの振幅は大きくなっているのだが、音そのものに「思い」が込められている感じは薄れている。
その点で、やや客観的というか、透徹した目を感じさせる演奏といえるだろう。
アンダンテの主題は一層はかなげ。楽章後半は現世への告別のような趣を湛えて更に感動的だ。
終楽章ではティンパニやハンマーの打撃が際立ち、まことに凄惨なものがある。
オーケストラの非力さ、音の遠い録音が、やや気になるところ。
 
なお、6種の選に漏れたのは次の諸盤(指揮者のABC順)。
太字は、特徴のある演奏で、もう少し時間があれば是非聴きたかったもの。
 
ピエール・ブーレーズ(指揮)ウィーン・フィル(DGG)
リッカルド・シャイー(指揮)コンセルトヘボウ管(DECCA)
ヤシャ・ホーレンシュタイン(指揮)ストックホルム・フィル(UNICORN)
井上道義(指揮)ロイヤル・フィル(CANYON)
ネーメ・ヤルヴィ(指揮)日本フィル(日フィル自主製作)
キリル・コンドラシン(指揮)レニングラード・フィル(BMG)
ジェイムズ・レヴァイン(指揮)ロンドン響(BMG)
小澤征爾(指揮)ボストン響(Philips)
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)チェコ・フィル(CANYON)
ハインツ・レークナー(指揮)ベルリン放送管(徳間)
ジョージ・セル(指揮)クリーヴランド管(Sony Classical)、
 
なお、バーンスタイン新旧盤(新DGG、旧Sony Classical)やバルビローリ(EMI)は未架蔵。(汗)

 昨日の演奏会の情報を演奏会出没表に、入手した音盤の情報をブーランジェ・作品表とディスコグラフィに追加。


9月29日(土): 

 レイフ・セーゲルスタム(指揮)ヘルシンキ・フィル@ザ・シンフォニー・ホールを聴く。

今日はオール・シベリウス・プロで、
「フィンランディア」
交響曲第7番
交響曲第2番
というラインナップ。
 
まことにシベリウスの音楽を堪能した一夜となった。
オーケストラが引き揚げても拍手は鳴りやまず、指揮者が呼び戻されることになったのもうなずける。
 
まず、オーケストラの音色が素晴らしい。渋く、暖かい。
冒頭、「フィンランディア」で最初に弦合奏が出るところでハッとさせられた。弦からは全3曲を通じて嫌な音を聴かされることはなく、特にVaには感心した。
管楽器も、例えば交響曲第2番 第2楽章で主題を吹くFgなど、まさしく北欧の厳しい自然を感じさせる寂びのきいた響き。
Trp独奏も輝きを抑えた音色で見事に調和していた。
 
このホールで聴いたシベリウスといえば1999年10月10日のラハティ響の名演が忘れられない。弦合奏はそちらの方が精度が高かったが、管楽器に関してはヘルシンキ・フィルがはるかに上回る。音色も美しく、奏者も粒ぞろい。
なかんずく、交響曲第2番 第3楽章中間部でのObの節回しには胸を打たれた。三連符で音を弱め、スタッカート気味に最後の音へ入ったのである。
金管はいずれも安定した素晴らしい出来で、交響曲第2番 第4楽章の終結でも、まったく息切れせずに(ラハティは失速気味)、ヒタヒタと高揚し続け、全身鳥肌の立つ思いをした。
 
また、セーゲルスタムの音楽が、懐の大きさと緻密さが両立した見事なもの。
悠然たるテンポ・フレージングで、よく歌い、「フィンランディア」交響曲第2番のそれぞれ終結でも、けっして音楽を煽らず、堂々たる盛り上がり。
また、ポイントポイントでの金管やTimpの強奏や、タメの作り方には、はっきりとした主張を感じる。
 
それでいて、無神経な音の出し方が一瞬たりとも見られない
上記のように、けっこう金管やティンパニを強奏させるものの、野放図な吹かせ方・叩かせ方ではなく、引き締まった音が一貫していたのである。
更に、「ここは勢いに乗って強奏すると、目立つけれども品が落ちる」という箇所では、必ず(!)音を抑えており、感心させられた。
 
交響曲第7番の緻密さも素晴らしかった。
斉諧生的にはTrbの主題(前後3回出る)は英雄的に浮き彫りにしてほしいのだが、今日の演奏は、むしろ全体の音の綾織りの一つという趣、これはこれで納得。
この緻密さに比べると、休憩後の交響曲第2番の書法は少し隙間があって聴き劣りする感なきにしもあらず、しばらく違和感を覚えたほど。
 
アンコールは「カレリア」組曲から「行進曲風に」
これも神経の行き届いた名演で、弦の主題が流麗なワルツのように聴こえ、金管は交響曲同様の見事なフォルティッシモ。
 
ぜひもう1曲と願ったが、演奏旅行最終日ということか、あるいはコンチェルト抜きのプログラムということからか、そこでオーケストラが引き揚げてしまった。
 
セーゲルスタムには、10年ほど前にデンマーク国立放送響を指揮した交響曲全集(CHANDOS)があり、それらは幾分「ゆるい」演奏だったが、今日の名演で面目を一新、是非このコンビで新しい全集を完成させてもらいたい。

 国内の通販業者ほかから音盤が届く。また、演奏会の帰りに音盤屋へ。

山田一雄(指揮)新星日響、ベルリオーズ;幻想交響曲ほか(JOD)
Webを検索していて、ふとCD★WORLDというオンラインショップを見つけた。
安価なコンピレーションものがメインだが、「今月のおすすめ」というページに、最近見かけなくなったJODレーベルのCDが何点か掲載されている。→ここを押して
買いそびれたままになっている山田一雄のライヴ盤が定価の4割引で出ていたのでオーダー。
1990年6月6日、ヨーロッパ演奏旅行におけるベルリン・シャウシュピールハウスでの収録で、一般にはCanyonからリリースされていた音源。
モーツァルト;交響曲第14番K.114をフィルアップ。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)ケルン放送響、ブルックナー;交響曲第7番(BMG)
先日、電網四方八通路の更新をしたついでに、オーケストラの公式Webpageに併設されているオンライン・ショップを覗いてまわった。
概してアメリカ系のオーケストラに多いものだが、ケルン放送響(というか放送局)にもオンライン・ショップがある。
ケルンでヴァントが録音したブルックナーのうち、買いそびれていた7番をオーダー。
1980年1月の収録、ヴァントのことゆえ勿論ハース版。
 
ギュンター・ヴァント(指揮)ケルン放送響、ブルックナー;交響曲第9番(BMG)
上記第7番同様、ヴァントの旧全集のうちCDは架蔵していなかったものをWDR-Ladenにオーダーしたもの。
1979年6月の録音。
 
宇野功芳(指揮)日本大学管、ブルックナー;交響曲第9番(GRND SLAM)
これは新譜。宇野師の指揮記録として捨てがたく(笑)、購入したもの。
1994年12月22日、新宿文化センターにおける第47回定期演奏会での収録。
 
ニューヨーク・フィル、マーラー;放送録音集(NYP自主製作)
とうとう買ってしまったCD12枚組。ラインナップは
第1番;ジョン・バルビローリ(1959年1月10日)
第2番;ズビン・メータ(1982年3月7日)
第3番;ピエール・ブーレーズ(1976年10月23日)
第4番;ゲオルク・ショルティ(1962年1月13日)
第5番;クラウス・テンシュテット(1980年6月18日)
第6番;ディミトリ・ミトロプーロス(1955年4月10日)
第7番;ラファエル・クーベリック(1981年2月28日)
第8番;レオポルト・ストコフスキー(1950年4月9日)
第9番;ジョン・バルビローリ(1962年12月8日)
第10番;ディミトリ・ミトロプーロス(アダージョ;1960年1月16日、プルガトリオ;1958年3月16日)
大地の歌;ブルーノ・ヴァルター(1948年1月18日)
さまよう若人の歌;ウィリアム・スタインバーグ(1964年11月27日)
特にバルビローリやテンシュテットには強く惹かれる。
いずれも音の状態は、それぞれの年代なりに良好なもの。
 
リリースされたときから欲しかったのだが、ちょっと値が張るので二の足を踏んでいたところ、最近のマーラー聴き直しシリーズの中で、やはりこれは…という気になり、ニューヨーク・フィルのオンライン・ショップにオーダーしたもの。
国内の音盤屋では4万円超で売っているが、ここでの定価は225ドル、送料34.5ドルを加算して邦貨約3万円と、かなり差がある。
 
ガリー・ベルティーニ(指揮)ケルン放送響ほか、マーラー;交響曲第8番(EMI)
ベルティーニのマーラー全集は、第1〜5番を仏EMIのバジェット盤で買ったが、まだ第7・8番が欠けていた。
上記ヴァント盤で書いたWDR-Ladenで探してみたら両曲とも見つかったのでオーダー。ところが第7番は品切れで、こちらだけが届いた。
1991年11月12〜14日、サントリー・ホールでのライヴ録音。東芝EMIの音源だが、録音スタッフはドイツ側なので、輸入盤を買うのが正解と考えている。
 
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮)NHK響、ラフマニノフ;交響曲第2番ほか(KING)
この秋最大の話題となるであろう、N響のライヴ・シリーズ。演奏会帰りに音盤屋に立ち寄ったのも、この発売日にあたることから。
意外に品薄で、予定していたものすべては買えなかった。また、マタチッチのベートーヴェンは、以前、DENONレーベルから出ていたものと同じ音源とのこと。
さて、このラフマニノフは昨年9月20日、サントリー・ホールでのライヴ。当時、感激のコメントがあちこちのWebpageで見られたもの。とうてい聴き逃すことはできないものゆえ購入。
グリンカ;序曲「ルスランとリュドミラ」(1999年2月26日)をフィルアップ。
 
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)NHK響、ストラヴィンスキー;春の祭典ほか(KING)
これもN響のライヴ・シリーズ。スクロヴァチェフスキのCDは必ず買うことにしている。
バーバー;メディアの復讐の踊り
プロコフィエフ;「ロメオとジュリエット」第2組曲(抜粋)
をカプリング。
いずれも1996年2月14日の収録、N響の初顔合わせとなった定期演奏会とのこと。
 
リーラ・ジョセフォヴィッツ(Vn)シャルル・デュトワ(指揮)モントリオール響、プロコフィエフ;Vn協第1・2番ほか(Philips)
これも新譜。
斉諧生的には関心の薄いヴァイオリニストだが、第1番は集めている曲なので、ともかく購入。
チャイコフスキー;憂鬱なセレナードをフィルアップ。
それにしてもデュトワ&モントリオール響がDECCA以外のレーベルから出てきたのには驚いた。
 
久保田巧(Vn) バッハ;無伴奏Vnパルティータ第2・3番(JOD)
これもCD★WORLDから。
邦人ヴァイオリニストのバッハ;無伴奏は、見かけると、なぜか買いたくなってしまう。
上記山田一雄盤同様、JODレーベルのもので定価の4割引、入手できるときに入手しておこうとオーダー。
 
ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響、ブラームス;悲劇的序曲・大学祝典序曲・ハイドン変奏曲(瑞ELITE、LP)
イッセルシュテットの未架蔵盤、しかもディスコグラフィにも掲載されていなかったものである。
見た瞬間、独Artiphonほかから出ている放送用録音の再発ものかと思ったのだが、あのセットにはハイドン変奏曲は収録されていないので別音源と判断し、オーダー。
この盤がオリジナルかどうかはわからないが(むしろ疑わしく感じるが)、聴感では1960年代前半くらいのスタジオ録音(勿論ステレオ)といったところ。
これはクラッシクLPドットコムという初めて利用した店から。
 
ロバート・ラッセル・ベネット(指揮)RCAビクター管ほか、ガーシュウィン;「ポーギーとベス」(抜粋)(米RCA、LP)
「ポーギーとベス」には目がない斉諧生、未架蔵の抜粋盤をカタログに発見して、即オーダー。
しかも、この曲の管弦楽組曲を編んだこともあるラッセル・ベネットの指揮とあらば、見逃すことはできない。
gershwinfan.comロバート・ショウのディスコグラフィ等によれば、このモノラル・抜粋がオリジナルの発売形態で、全曲録音やステレオ盤はない模様。
ライズ・スティーブンス(M-S)、ロバート・メリル(Br)、ロバート・ショウ合唱団という、完全クラシック畑の歌唱陣も目を惹く。
これもクラッシクLPドットコムから。
 
ナンシー・フィエロ(P) 「世界初録音〜女性作曲家鍵盤作品集」(米AVANT、LP)
タイトルから想像できるように、リリー・ブーランジェの作品を収録しており、彼女の全録音蒐集の一環として購入。
収められているのは「行列」「夜想曲」のピアノ独奏版。
録音データは明記されていないが、マルPが1974年で、斉諧生架蔵盤の中では最も早いもの。
ピアニストはロサンジェルス生まれ、南カリフォルニア大で学んだ後にナディア・ブーランジェの教えを受けたとか。彼女によると、
リリーは1918年に亡くなったのに、ナディアはまるで去年亡くなったばかりの人のように、いきいきとした記憶で彼女のことを語りました。
という。
その他、マリア・シマノフスカグラツィナ・バチェヴィッツ等、珍しい作曲家の作品を収録。
これはParnassus Recordsから。

9月26日(水): 

 国内の通販業者からLPが届く。

ハンス・シュミット・イッセルシュテット(指揮)北ドイツ放送響、バッハ;管弦楽組曲第2番&メンデルスゾーン;交響曲第4番(独NDR自主製作、LP)
ジャケットには明記されていないが、業者カタログによれば1964年録音という北ドイツ放送響の自主製作盤。友の会か何かの会員に頒布されたものだろう。
もちろんイッセルシュテットの未架蔵盤ゆえオーダーしたもの。両曲とも正規録音はない。
モノラル録音だが良好な音質。バッハのFl独奏者はゲルハルト・オットーとクレジットされている。

9月25日(火): 

 Barnes & NobleからCDが届く。

アンドレ・コステラネッツ(指揮)ニューヨーク・フィルほか、ガーシュウィン;交響的絵画「ポーギーとベス」ほか(Collectables)
「ポーギーとベス」の管弦楽組曲版の未架蔵音源、1954年2月15日録音のコロンビア盤LP(モノラル)のCD復刻である。
『レコード芸術』9月号の輸入盤情報ページで見つけてから、あちこちの音盤屋で捜したものの見つからず、オンライン・ショップでオーダーしたもの。
上記記事の筆者は満津岡信育氏、
<俺にはないものばかりだぞ>に突っ込む直前の猛烈なドライヴ感やラストの<神様、出かけます>の高揚感が聴きものだ。
とのこと。
使用楽譜はラッセル・ベネット版をベースに指揮者が独自の改編をおこなったもの。
CDとしてはフィラデルフィア・ポップス管による「ショウ・ボート」「南太平洋」「十番街の殺人」をメインに、コステラネッツ管とのガーシュウィン;パリのアメリカ人も含まれている。(これらはいずれも1951年録音)
なお、レーベルの公式Webpageは、→ここを押して。大手レーベルから権利を買い取っての復刻を専門にやっているところのようだ(クラシックのTESTAMENTのような感じか)。
 
ロバート・ショウ(指揮)ロバート・ショウ・フェスティバル・シンガーズ、「20世紀の祈り」(TELARC)
バーバー弦楽のためのアダージョを無伴奏合唱曲に編んだ「アニュス・デイ」のCDを探していて見つけた盤。
これも音盤屋で探したが見つからず(国内盤で出たこともあるのだが)、オーダーしたもの。
なんと10分55秒をかけて演奏している(クリストファーズ&ザ・シックスティーン盤では8分23秒)。
「もう一人の」合唱の神様の棒に期待。
そのほかの収録曲は、
グレツキ;すべてを汝に
ペルト;マニフィカト
マルタン;ミサ
シェーンベルク;地には平和を

9月24日(休): 

 

ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮)ザグレブ・フィル、チャイコフスキー;交響曲第5番&ヤナーチェク;シンフォニエッタ&スメタナ;「わが祖国」(CROATIA)
マタチッチの録音が出たとあっては買わざるべからず。
チャイコフスキーが1975年、ヤナーチェクとスメタナが1979年のライヴ録音である。
少し硬めだが鮮明で、力のある音が聴ける。
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)フィルハーモニア管ほか、モーツァルト;歌劇「魔笛」(EMI)
リチャード・オズボーンカラヤン評伝(白水社)の影響で、カラヤンのモノラル期録音のうち優れたものを聴きたい気持になってきた。
今日立ち寄った音盤屋のワゴン・セールで、EMIの"Great Recordings of the Century"に含まれているセット物が何点か並んでいたのだが、とりあえず曲としても集めている「魔笛」を購入。
オズボーン著に曰く、
すっきりと想像力豊かに指揮されていて、戦後のウィーンで活躍したモーツァルト歌手たちの絶頂期に近いころの配役で、おおむねみごとに歌われている。
とのこと。その配役は、
タミーノアントン・デルモータ
パミーナイルムガルト・ゼーフリート
パパゲーノエーリヒ・クンツ
夜の女王ヴィルマ・リップ
ザラストロルートヴィヒ・ヴェーバー
弁者ジョージ・ロンドン
といったところ。
1950年の録音で、art方式によるリマスタリング。

9月23日(日): 

 連休を利用して「日録」以外の更新に手を着けた。
 (その1) 約5カ月ぶりに電網四方八通路の更新を行った。
 
 (その2) 先日入手した資料本の情報をもとに、パレー・ディスコグラフィを改訂。また、マイケル・グレイ氏からその後に御教示いただいた情報を追加。

 (その3) 以前、聴き比べを行った際の記事を独立させて、作曲世家に移した。

 ルクー;P四重奏曲(未完)は→ここを押して
 シューベルト;アルペジオーネ・ソナタは→ここを押して

9月22日(土): 書籍と楽譜が届いた。
 いずれもSheet Music Plusからで、
 Jörg Hillebrand 著の『イーゴリ・マルケヴィッチ 〜生涯、活動と作曲〜』(Gustav Bosse刊)
 約300頁のうち、小伝が60頁、作品解題190頁、作曲家論20頁、指揮者論20頁という構成である。作曲家マルケヴィッチを本格的に論じたものは初めてなのではないだろうか。ドイツ語がもう少し楽に読みこなせると良いのだが…。(嘆)
 
 楽譜は、
 ステーンハンマル;3つの無伴奏合唱曲集(英語版、Walton)
 リリー・ブーランジェ;兵士の埋葬のために(スコア、Kalmus)
 後者は粗悪なリプリントだが、それでも貴重だ。

 Ars AntiquaからLPが届いた。

アンタル・ドラティ(指揮)ワシントン・ナショナル響ほか、ディーリアス;アパラチアほか(米IGS、LP)
ディーリアスの珍しいLPがあったのでオーダー。
「プライヴェート・レコーディング」とあり、一応悪くないステレオ録音だが、会場ノイズの加減からすると、ひょっとしたら隠し録りテープからのレコード化かもしれない。(汗)
1971年11月14日、ニューヨークでの録音とある。
ロリン・マゼール(指揮)ニュー・フィルハーモニア管、夜想曲〜パリ・大都会の歌〜(1971年11月3日、ニューヨーク)
(演奏者不詳) ハープシコードのための舞曲(ピアノによる演奏)
をカプリング。
 
メナヘム・プレスラー(P)セオドア・ブルームフィールド(指揮)MGM管ほか、ショスタコーヴィッチ;P協第1番ほか(米MGM、LP)
集めている曲、ショスタコーヴィッチの第1番の未架蔵盤があったのでオーダー。
プレスラーはボザール・トリオのピアニストして有名だが、協奏曲録音は珍しいと思う。Trp独奏はハリー・グランツとクレジットされているが経歴等は不詳。
同じ作曲家のPソナタ第2番をカプリング。
モノラル録音で、工藤さんのディスコグラフィによると1954年録音とのこと。
 
グンナー・バルテル(Vn)ほか、名演集(瑞自主製作、LP)
北欧のヴァイオリニストの自主製作盤LP2枚組という妙なものが見つかった。曲目に興味があったのでオーダー。
解説等はなく、ジャケットは新聞記事の切抜き等の図版で埋まっているので経歴等の詳細はわからないが、ストックホルム・フィルのコンサートマスターを務めていたようだ。
収録曲と共演者は、
シマノフスキ;Vn協第1番(ヨーラン・ニルソン(指揮)ストックホルム・フィル)(1977年8月10日)
ルーセンベリ;Vn協第2番(ヘルベルト・ブルムステット(ブロムシュテット)(指揮)ストックホルム・フィル)(1967年9月7日)
R・シュトラウス;Vnソナタ(トーレ・ヴィベリ(P))(1977年6月20日)
アウリン;組曲(トーレ・ヴィベリ(P))(1975年10月9日)
ルンドクヴィスト;ソナチネ)(トーレ・ヴィベリ(P))(1966年9月8日)
この中では、シマノフスキとアウリンに興味を惹かれる。
音質等は優れており、放送用録音かそれ以上のクオリティ。
成立の由来がよくわからないが、追悼盤ではなさそうだし、ひょっとしたらオーケストラを定年退職した記念にでも作ったものだろうか?
 
アーヴェ・テレフセン(Vn)ほか、スヴェンセン;弦楽八重奏曲(諾Philips、LP)
こちらは有名なノルウェー出身のヴァイオリニスト、テレフセンが参加している盤。彼の録音も集めておきたいのでオーダーしたもの。
曲は初めて入手するものだが、全4楽章で約35分を要するもの。
テレフセン以外の演奏者は未知の名前だが、写真で見る限りベテラン揃いの模様。
録音データは明記されていないが、マルPは1969年とある。
 
アーヴェ・テレフセン(Vn)ヨーラン・ニルソン(P) シェーグレン;Vnソナタ第4番ほか(瑞Caprice、LP)
↑同様、テレフセンの録音を見つけたのでオーダー。
シェーグレンは1853年生まれ、1913年没のスウェーデンの作曲家。Vnソナタは全部で5曲つくっており、Capriceレーベルから全集も出ているが、そこに収録されているのはこれとは別な演奏者によるもの。
同じ作曲家のPソナタ第2番をカプリング。
 
デイヴィッド・ストーン(Vn)アラン・シラー(P) ディーリアス;Vnソナタ第2・3番ほか(英AMON RA、LP)
ディーリアスの未架蔵盤、しかもVnソナタがあったのでオーダー。
演奏者の経歴はジャケットに記載されているが、あまり目立つところがない。(^^;
VnとPのための伝説(原曲は管弦楽伴奏)をフィルアップ。
なお、ディーリアスについては、ビル・トムソン氏のディスコグラフィがWeb上で公開されているが(→ここを押して)、この盤は掲載されていない。
 
ヴィルヘルム・シュヒター(指揮)ベルリン・フィルほか、モーツァルト;歌劇「魔笛」(抜粋)(米VOX、LP)
抜粋ながら「魔笛」の未架蔵盤があったのでオーダー。
届いてみれば、よくわからないディスクだった。モノラルの擬似ステレオ化らしいというのはさておいても…。
歌手としてはエリーザベト・グリュンマー(Sop)、エリカ・ケート(Sop)、ヨーゼフ・トラクセル(Ten)、ヘルマン・プライ(Br)、ゴットロープ・フリック(Bs)と挙がっていて、なかなかと思わせる。
ところが、指揮者の名前が3人、オーケストラの名称が2つクレジットされている!
指揮者は、標記シュヒター、ホルスト・シュタインヴェルナー・シュミット・ベルケ、オーケストラはBPOと「ベルリン・シンフォニー・オーケストラ」。
もしかしたら、最初から「魔笛」の抜粋として企画されたものではなく、各歌手のアリア集等から「魔笛」に含まれる曲を掻き集めて仕立て上げたのであろうか?

9月21日(金): 朝日新聞社が発行している月刊誌『person』11月号に、佐渡裕諏訪内晶子村治佳織のインタビューが掲載されている。→ここを押して

佐渡裕;「早く六十五歳になって年金もらって、年に十回くらい指揮して、あとはたばこ屋でもやってられたらええのにと思います。」
諏訪内晶子;「ベルリン芸術大学はちゃんと試験を受けて入ったんです。(中略)実は卒業試験がまだなんです。別に学歴にこだわるわけじゃないんですが、始めたら一応区切りをつけたいというか、できるところまでは、きちんとやりたいと思いますから。」
村治佳織;「(アランフェス王宮内の教会での)録音がすべて終了し、オーケストラも指揮者も全員が帰った後、私は教会の祭壇に向かってお礼を言いました。静かにお祈りをしただけですが、すべての人々に感謝の念を捧げたいと思ったのです。」

 あとは書店で御覧ください。表紙がKinki Kidsですので、ちと心理的抵抗があるかもしれませんが…。(笑)

 

小林研一郎(指揮)チェコ・フィル、チャイコフスキー;交響曲第1番(EXTON)
このコンビによるチャイコフスキー全集の新譜。コバケンの音盤は買わざるべからず。
先月第3・4番が出たばかり、これで5枚目になる。あとは第2番を残すのみ。
 
ミヒャエル・ギーレン(指揮)シンシナティ響ほか、ドビュッシー;交響詩「海」ほか(VOX)
音盤屋の棚を見ていて、ふとギーレンの未架蔵盤を発見したので慌てて購入。
1984年のデジタル録音だが、これが初発売とのこと。→ここを押して
ギーレンとフランス音楽といえば、南西ドイツ放送響とのラヴェル;「ダフニスとクロエ」(Arte Nova)が素晴らしい美演であった。
マーラーとブルックナー同様、ラヴェルとドビュッシーもセットで名前が挙がるわりに両方とも良く演奏できる人は少ないものだが、ギーレンはどうだろうか?
カプリングはスクロヴァチェフスキ(指揮)ミネソタ管ラヴェルだが、こちらは全集盤を架蔵済み。

9月20日(木): 書籍が3冊、届いた。
 1冊はNHK交響楽団からで、機関誌『フィルハーモニー』2000/2001 Special Issue。「N響全演奏会記録2(1945-1973)」を目的にオーダーしたもの。→ここを押して
 約2,300回のコンサートを記録した、見るからに力作だが、検索できないのでは利用価値が低い。完成の暁には、索引を付けるか、デジタル化してCD-ROMで出すか、データベース化してWWWに上げるかしてほしいもの。
 
 もう2冊はAlapage.comから。
 Jean-Philippe Mousnier氏によるポール・パレーピエール・モントゥーの資料本である(ともにL'Harmattan刊)。
 いずれも小伝、写真、初演リスト、演奏会記録、ディスコグラフィ、未発売音源リストを網羅した素晴らしいもの。
 問題は、斉諧生が読めないフランス語で書かれていることである。(嘆)
 とはいえ、各種リストを眺めているだけでも飽きない。たとえばパレーの未発売音源には、

モーツァルト;交響曲第41番
ベートーヴェン;交響曲第3・4・5・9番
ブルックナー;交響曲第7番
チャイコフスキー;交響曲第4・5・6番
R・シュトラウス;「ドン・ファン」「ティル・オイレンシュピーゲル」
ムソルグスキー(ラヴェル編);展覧会の絵
フォーレ;レクイエム、歌劇「ペネロペ」

等が並んでいるのである…!
 
 なお、同書については、9月8日の項に記したマイケル・グレイ氏からメールで御教示いただいた。


9月19日(水): 

 

カール・シューリヒト(指揮)シュトゥットガルト放送響ほか、未発表放送録音集(M&A)
シューリヒトの放送録音が、しかも放送局のライセンスを得た正規盤として発売されたので購入。
CD4枚組のうち3枚はシュトゥットガルト放送響との1950年代初めの録音で、
シューベルト;交響曲第8番「未完成」(1952年2月29日)
ブルックナー;交響曲第9番(1951年11月2日)
メンデルスゾーン;「アタリア」序曲(1950年4月29日)
ワーグナー;「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死(1950年4月29日)
レーガー;モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ(1950年11月5日)
ハイドン;Vc協第2番(Vc;エンリコ・マイナルディ)(1950年11月5日)
このうちブルックナーは以前DISQUES REFRAINレーベルから出ていたようだ。
最後の1枚は戦前・戦中の演奏で、
J.C.バッハ;シンフォニアニ長調(1937年4月9日)
ベートーヴェン;交響曲第7番(1937年2月26日)
上記2曲はベルリン帝国放送管の演奏。
ワーグナー;『神々の黄昏』より「ジークフリートの死」(1942年6月19日)
ベートーヴェン;交響曲第3番より第2楽章(1942年6月19日)
この2曲は大ベルリン放送管の演奏。両方とも葬送行進曲であり戦中の演奏ということで前後の事情が気になる。時期的には対ソ戦開始から1年、スターリングラード攻略戦が始まる前で、ドイツが押していた頃なのだが。
なお、音質的には、いずれも良好。
1937年の2曲のみ、サーフェス・ノイズがあり少し古めかしい音だ。

9月18日(火): 

 

ジョージ・セル(指揮)クリーヴランド管、マーラー;交響曲第6番(Sony Classical)
マーラーを一度ちゃんと聴こうと、このところ集めているが、肝心な演奏の一つが手許にないことに気づいた。
LP時代末期、廉価盤で「悲劇的」を聴こうとすると、これかクーベリック盤(DGG)くらいしか選択肢が無かったものだ。
もちろん内容的にも柴田南雄先生のお墨付き、買わざるべからずと早くから架蔵していたのだが、転居の際に実家に置いてきたのか見当たらない。
CD屋の店頭に在庫があったので購入、やはり今回もバジェット・プライス。もっともLPは2枚組で第10番(アダージョ・プルガトリオ)を第4面に収めていた。
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)ベルリン・フィル、シベリウス;交響曲第4番ほか(EMI)
このところリチャード・オズボーンカラヤン評伝(白水社)を読んでいて、しばしば登場する彼のシベリウス演奏が気になりはじめた。
カラヤンのシベリウス演奏については、以前中古音盤堂奥座敷の合評会でケーゲル第4番を取り上げたとき、同曲のDGG盤を酷評したことがある(→ここを押して)。
ところが、オズボーンの本によると、カラヤンは、第4番を「演奏後数日は気分的に立ち直れない作品」の一つに数えていたという。そこまで感じるものがあったとするなら、無視することはできない。
DGG盤はカラヤンの2回目の録音(1965年)だが、やはり3回目・最後の録音(1976年)も、彼の結論として聴いておこうと思い、輸入盤ではCDが出ていないようなので、国内盤を購入。東芝EMIでリマスタリングしたもので、原産地主義の斉諧生としては少し抵抗があるのだが、やむを得ないだろう。
カプリングがヒンデミット;交響曲「画家マティス」(1957年録音)というのは腑に落ちない。
ちなみに、上記のカラヤンを落ち込ませる曲として、シベリウス以外ではR・シュトラウス;『エレクトラ』マーラー;交響曲第6番ベルク;管弦楽のための三つの小品オネゲル;交響曲第3番「典礼風」が挙がっていたとのこと。
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)ベルリン・フィル、シベリウス;交響曲第5・6番(EMI)
前項同様、カラヤンのシベリウス演奏の「結論」を聴くために購入。同じく国内盤である。
第5番は4回目(1976年)、第6番は3回目(1980年)の、それぞれ最後の録音に当たる。
 
佐渡裕(指揮)コンセール・ラムルー管、サティ;管弦楽曲集(ERATO)
同郷・同年のよしみ(?)で、彼のCDはアリア集と吹奏楽以外は買うようにしている。これも、ようやく輸入盤が出てきたので購入。
見てびっくりしたのはジャケット写真。国内盤(→ここを押して)と同じだった!
申し訳ないが、どう見ても似合わない格好なので(笑)、輸入盤はきっとラムルー管の公式Webpageみたいな写真になるのだろうと決め込んでいたのである。(→ここを押して)
 
ピエール・ブーレーズ(指揮)クリーヴランド管、ストラヴィンスキー;「夜鴬の歌」・組曲「兵士の物語」ほか(DGG)
しばらく途絶えていたブーレーズのストラヴィンスキー再(再々)録音シリーズの新譜が出ていたので購入。このシリーズでは「火の鳥」全曲の素晴らしさが忘れられない。
幻想的スケルツォカンタータ「星の王」をフィルアップ。
なお「兵士〜」は、7人の奏者による。
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)フィルハーモニア管、ブリテン;フランク・ブリッジ変奏曲ほか(EMI)
これもオズボーンカラヤン評伝から。
その演奏には磨き抜かれた技巧と深い悲劇性があり、それを聴くと、カラヤンが録音した戦争ものの傑作の中に、
  ブリテンの『シンフォニア・ダ・レクイエム』が欠けているのが惜しまれる。
カラヤンの録音をあまり買わない斉諧生だが、フィルハーモニア管とのものは、1990年頃にある程度まとめてCD化されたもの(3枚組1セット、4枚組2セット)を架蔵している。
この曲もそれに含まれていたのだが(CMS7-63464-2)、復刻の音質が今ひとつ芳しくなかった。
EMI自慢のart方式でリマスタリングされているというものを見つけたので購入してみた。
比較試聴してみると、やはりこちらが美しい。シベリウスバルトークあたりも買い直したくなってくる。(^^;
カプリングはRVW;タリス幻想曲ストラヴィンスキー;カルタ遊び

9月15日(土): 

 Parnassus RecordsからLPが届いた。消印は9月6日付け。

ポール・パレー(指揮)デトロイト響、オッフェンバック;序曲集&オーベール;序曲集(米Mercury、LP)
もちろんCDでは架蔵済みだが、LPは今回初めて入手するもの。
米Mercuryのステレオ盤LPは日本の店では概して高価だが、格安の値でカタログに出ていたのでオーダー。
 
マカレスター・トリオほか、「女流作曲家による室内楽曲集」(米VOX、LP)
リリー・ブーランジェ;「夜想曲」・「行列」を含むLP3枚組、彼女の全録音蒐集プロジェクトの一環として購入。
CDでは架蔵済みだが、アナログ録音はLPで持っておきたい。
ブーランジェ以外にはクララ・シューマン、タイユフェール、ファニー・メンデルスゾーン等を収録。
 
マリアン・アンダーソン(A)ピエール・モントゥー(指揮)サンフランシスコ響ほか、マーラー;亡き子を偲ぶ歌ほか(米RCA、LP)
モントゥーの未架蔵LPが安く出ていたのでオーダー。
数年前にBMGから出たモントゥー・エディションでCD化済みの音源だが、初期盤LPで持てれば、これに越したことはない。
カプリング(というよりこっちがA面でメイン)は、
フリッツ・ライナー(指揮)RCAビクター響、ブラームス;アルト・ラプソディ
で、こちらも嬉しい収穫。なお、合唱はロバート・ショウが指揮する彼の合唱団の男声パート。

 9月8日と昨日の演奏会の情報を演奏会出没表に、今日入手した音盤の情報をパレー・ディスコグラフィブーランジェ・作品表とディスコグラフィに追加。
 また、9月6日のストコフスキーに関する記述に誤りがあったので訂正。


9月14日(金): 

 戸田弥生ヴァイオリン・リサイタル@京都府民ホール「アルティ」を聴く。
 企業メセナとして入場料を900円に設定したコンサートで、主催は22世紀クラブという団体。

今日の曲目は
一柳 慧;展望(Vnソロ)
バッハ;無伴奏Vnソナタ第1番
バッハ;無伴奏Vnソナタ第2番
ケージ;TWO4
というもの。
ケージのみシュテファン・フッソング(アコーディオン)が加わった。
 
とにかく、よく鳴る音の持ち主。このホールでは多くのヴァイオリニストを聴いてきたが、いちばんよく鳴っている。
勿論その都度、座席位置は異なるが。
また、強く歌い込む人で、一柳作品でも、無調風の曲ながら、彼女の歌を聴いているだけで楽しめた。
奏者によっては、もっと厳しさや緊張感を追求するアプローチもあり得ようが。
 
2曲のバッハでも、バロックの様式感や構築性よりも、
「歌うわよ! バッハだけれど歌うわよ!」
という彼女の声が聞こえてくるような(笑)、情熱的な演奏であった。
斉諧生的にはバッハ演奏としては評価しづらく(苦笑)、同じ無伴奏曲ならバルトークとかパガニーニであれば素直に楽しめるものを…という感強し。
ともあれ熱演は熱演で、盛んな拍手とブラヴォーの声あり。
 
休憩後のケージは、うってかわって静寂そのもの。
当初、Vnと鍵盤楽器のための6つのメロディと告知されていたのだが、プログラム印刷時点で標記の曲に変更された様子。
 
約30分間、2つの楽器が、最弱音で、シンプルな音を長く引っ張り続ける…という趣の音楽。
聴く者は、ひたすら耳を澄ますうちに、心の中から3つめの音を聴く、心の中の声に耳を傾けることになる。楽器の音がなにかを伝えるというよりも。
 
演奏前に、戸田さんとフッソングが(彼は日本語が達者)こもごも解説された中で、
ケージが禅と出会い、龍安寺の石庭を度々訪れていた
という話があったからというわけではないが、本当に石庭を前に瞑想しているような、そんな音楽体験であった。
 
そしてアンコールとして演奏されたバッハ;G線上のアリアには、龍安寺を訪れたとき石庭の次に見ることになる、緑の美しい小さな庭を思い出した。
楽器の組合せからして、ひょっとしてピアソラでも聴かされたら、ケージの静寂がぶち壊しになると懸念したのだが、心配無用であった。

 演奏会の前に音盤屋へ。折しも中古盤セール中。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)ウィーン・フィル、ブラームス;交響曲第2番ほか(EMI)
先日来、リチャード・オズボーンカラヤン評伝(白水社)を読んでいる。
なにぶん上下巻各600頁ほどの大冊ゆえ、まだ1959年頃にいるのだが(苦笑)、気になる記述のある音盤を聴きたくなり、音盤屋の棚を捜したところ2点を見つけたので購入。
これは1946〜50年にウィーン・フィルと行った一連のEMI(要するにウォルター・レッグ)によるレコーディングからの1枚。
ブラームス;交響曲第2番(1949年10月18、22〜24、27日、11月8日)
モーツァルト;フリーメーソンの葬送行進曲(1947年12月13日)
R・シュトラウス;メタモルフォーゼン(1947年10月27〜29日、11月3日)
物思いに沈むドラマティックな演奏(中略)まさに『森の奥から』かすかにもれてくる光、という感じがする
とオズボーンが評するブラームスもさることながら、世界初録音のシュトラウスこそ、ぜひ聴きたかったもの。
1947年10月のカラヤンとウィーン・フィルハーモニーの弦楽奏者によるレコードほど、
  曲を深く感じ取ると同時に優美に静謐にまとめられている演奏はない。
この曲をカラヤンは繰り返し録音(録画)しているが、なんといっても作曲(=敗戦)から3年と経っていない時期のものゆえ、演奏者全体に切実な「のめり込み」が期待できるのではないかと思うのである。
 
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)フィルハーモニア管ほか、「アリア、序曲、間奏曲集」(EMI)
カラヤンお得意の曲集で、似たような曲を(少しづつ違えて)何度も録音しているが、これは1954年のフィルハーモニア管との録音を中心に、ボリス・クリストフとのアリア等を加えたもの。
オズボーンの本には、フィルハーモニア管の首席Ob奏者シドニー・サトクリフ(とんでもない名人)の言として、
私はカラヤンはとくに情感豊かな指揮者とは思っていませんでした。(中略)
  でも、このときの彼は完全に『いってしまって』いました。
  近くで爆弾が破裂しても、彼は気づかなかったでしょう。
「いってしまった」カラヤンを是非聴いてみたいと購入。
このとき(1954年7月22〜24日、キングズウェイ・ホール)の録音曲目は、
ビゼー;「カルメン」第4幕間奏曲
マスカーニ;「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
マスカーニ;「友人フリッツ」第3幕間奏曲
グラナドス;「ゴイエスカス」間奏曲
レオンカヴァッロ;「道化師」間奏曲
プッチーニ;「マノン・レスコー」間奏曲
マスネ;「タイス」瞑想曲(Vn独奏;マヌーグ・パリキアン)
ヴェルディ;「椿姫」第3幕前奏曲
ムソルグスキー;「ホヴァンシチーナ」第4幕間奏曲
オッフェンバック;「ホフマン物語」舟歌
コダーイ;「ハーリ・ヤーノシュ」間奏曲
(太字がこのCDに収録されている曲)
なお、オズボーンは「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲で、デニス・ブレインがオルガン・パートをホルンで吹いている、と書いているが、これは誤り。
夢中人さんの素晴らしいWebpage「憧れのデニス・ブレイン」にあるとおり、オルガンも得意だったブレインが、ホルンではなくオルガン奏者を務めたのである。
 
パトリック・ダヴィン(指揮)ラインラント・ファルツ・フィル、フローラン・シュミット;「サロメの悲劇」(原典版)(MARCO POLO)
ポール・パレーが名盤を遺すなど、組曲版が有名な「サロメの悲劇」の原典版。
組曲は大編成のオーケストラにより、こちらは比較的小編成。
演奏時間も組曲版は30分弱だが、7つの場からなる原典版は約60分に及ぶ。
前から気になっていたのだが、以前は高価だったMARCO POLO盤が中古格安で売られていたので購入。
 
ラファエル・ゴロー・ドラバール(Org)オーレット・シュテイエ(指揮)コルマー少年合唱団ほか、ジャン・アラン;合唱曲&Org曲集(K617)
オルガニストマリー・クレール・アランの兄としてのみならず、近年、その作品の高雅さが再評価されているジャン・アランの作品集。
以前、ArionからリリースされたCD等を聴いて気に入っている人だが、中古盤セールのワゴンで格安の音盤を見つけたので購入。
カプリングは、デュリュフレ4つのモテットアランの名によるプレリュードとフーガ。後者はアランと親しかった作曲者が、その死を悼んで書いたもの。
 
アンドルー・マンツェ(Vn)リチャード・エガー(Cem) ヘンデル;Vnソナタ全集(HMF)
古楽派ヴァイオリニストでは寺神戸亮と双璧をなすマンツェの新譜は買い逃せない。
冒頭に置かれたニ長調は有名な作品で、愛惜佳曲書にも掲げた(「第4番」と表記)。

9月12日(水): 

 

マリオ・ブルネロ(指揮)オーケストラ・ダルキ・イタリアーナ、ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110&グバイドゥリーナ;「最後の七つの言葉」(FONIT CETRA)
ふと音盤屋の棚で見つけた旧譜(マルC&Pは1997年)。
ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏曲第8番の弦楽合奏版は、ずっと集めているので買わざるべからず。
通常はルドルフ・バルシャイの編曲で演奏されるが、ブックレットの解説に「バルシャイ版ではない」と特記してあるものの、それでは誰のかということは明記されていない。(^^;
1996年4月9日、ベネツィアでのライヴ録音。
なお、カプリングのグバイドゥリーナ作品では、ブルネロは独奏チェロを担当している。
 
カール・ハインツ・シュテッフェンス(Cl)チャリス・アンサンブルほか、モーツァルト;Cl五重奏曲ほか(TUDOR)
ベルリン・フィルの首席奏者、シュテッフェンスのソロ・アルバム…もっとも彼の地位については開封してブックレットを読んで初めて知った。
「魔笛」の音楽を2本のクラリネット用に編曲したものを収録しており、これは見逃せないと購入したもの。
そのほか「フィガロの結婚」の編曲とCl五重奏曲の断片(K.516c/KAnh91)を収める。
第2Clはヴェルナー・ミッテルバッハ(バイエルン放送響)が付き合っている。

9月11日(火): 

 

オレグ・カエターニ(指揮)ロベルト・シューマン・フィル、ワーグナー;序曲・前奏曲集(ARTS)
ここでも何度か書いているが、姓こそ異なれ、カエターニはイーゴリ・マルケヴィッチの子息。
ブックレット記載の略歴によれば、主な活動はドイツで行っているようだが、師匠筋は父親、フランコ・フェラーラキリル・コンドラシンイリヤ・ムーシンと、非ドイツ系に学んでいる。
父親に似た、ドイツの演奏伝統に安住しない、鋭いワーグナー演奏を期待して購入。
収録曲は、
「さまよえるオランダ人」序曲
「ローエングリン」第1・3幕前奏曲
「タンホイザー」序曲・第3幕への序奏
「ワルキューレの騎行」
「マイスタージンガー」第1幕前奏曲
に加えて、世界初録音という「エンツィオ王」序曲(初期の劇音楽の一部)が目を惹く。

9月8日(土): 

 大阪センチュリー交響楽団第71回定期演奏会(指揮:高関健)@ザ・シンフォニー・ホールを聴く。

今日の曲目は、
ラヴェルほか合作;バレエ音楽「ジャンヌの扇」
ラヴェル;歌劇「スペインの時」(演奏会形式)
という珍しい曲揃い。
関西二期会との共催という形になったためか、オペラ・ファンとおぼしい御婦人方の姿が目立った。
 
なお、高関氏が振るときの例で、弦が第1Vn―Vc―Va―第2Vn、木管の後ろの正面奥にCb(4本横一列)、右手奥に金管とティンパニという配置。
 
10人の合作による「ジャンヌの扇」は、ラヴェル作曲の「ファンファーレ」が有名で、ときにラヴェル;管弦楽曲集の音盤に収録されることもあるが、全曲の演奏・録音は非常に少なく、耳にするのは今回が初めて。
作曲家10人の顔ぶれは、曲順にラヴェルフェルー(→ここを押して)、ロラン・マニュエルドラノワルーセルミヨープーランクオーリックフローラン・シュミット
いずれも愉しい曲揃いだったが、とりわけミヨープーランクの快活さが印象に残った。
 
ただ、これは合作の弊害かもしれないが、10人とも腕によりをかけて書いたのか、管弦楽をフルに鳴らすオーケストレーションばかり。
例えば木管楽器のソロを活躍させる、楽器編成は薄いが美しい旋律の曲…というのがない。1人で組曲を書けば、必ず出てくるパターンだと思うのだが。
 
後半の「スペインの時」は、特に装置や小道具・衣装を用いず、舞台前縁に歌手を立たせて歌わせる式。
演奏前に、指揮者から簡単な解説や舞台上の約束事〜下手が時計屋の入口、上手が寝室、椅子に座るのは時計の中に隠れる意味 等〜の案内があったので、進行はよく理解できた。
 
やはりラヴェルの音楽の美しさは格別で、とても愉しかった。
しかし不思議なことに、彼の音楽はああいう人間味のプンプンした話(要するに艶笑譚である)には合わない。神話とか御伽話ならぴったりくるのに。。。
聴きながら、「あ、このへんは『ダフニスとクロエ』」、「この感じは『マ・メール・ロワ』」などと考えていた。
 
オーケストラは立派な出来で、もう少し音色の魅力があれば…と思わないでもないが、アンサンブルなり表情なり、間然とするところがない。
 
問題は5人の歌手で、皆それなりにきちんと歌ってはいるのだが、表現意欲は買えるが声が無いとか、声はそこそこだが表現力が弱いとか、どうにも面白くない。
歌手抜きで管弦楽だけだったらもっと楽しめるのに…などという思いが頭をかすめた(もちろんそれでは話がわからないだろうが(笑))。
 
趣向のきいた企画で、内容も優れており、このコンビの今後に期待したい。経営母体の大阪府の財政危機の中、難しい問題に直面しているのが本当に気の毒。→ここを押して

 Ars Antiquaほかから荷物が届いた。

シュトゥットガルト室内管、バッハ;ブランデンブルク協(全曲)(TACET)
WWWをうろうろしていて、ふと、TACETレーベルの日本代理店のWebpageを見つけた。→ここを押して
超優秀録音で好きなレーベルなのだが、カタログのページを見ていて、店頭で見かけたことのないブランデンブルクがあるのに気づいた。
なるべく集めるようにしている曲で、2枚組で3,000円だからお買い得でもあることから、メールでオーダー。折り返し確認メールが来て銀行振込、すぐに発送してもらったもの。
かつてミュンヒンガーの手兵であり、その後、マルティン・ジークハルトを経てデニス・ラッセル・デイヴィスが芸術監督となっているそうだが、この録音は指揮者無しで行われている。
主な独奏者は
ベンジャミン・ハドソン(Vn、コンサートマスター)
ロバート・アルドヴィンクル(Cem)
ナタリー・シュヴァーベ(Fl)
ラインホルト・フリートリッヒ(Trp)
といったあたり。名前を知っているのはTrpくらいだが、この人は名手だ。
 
アウリンQ&クリスチャン・ポルテラ(Vc) シューベルト;弦楽五重奏曲(独TACET、LP)
なんとLPの新譜、しかも2001年2月の新録音である。
音にこだわるTACETレーベルが誇る(?)、すべて真空管製の歴史的な機材を用いて録音・製作された、"The Tube"というシリーズの第2弾。もちろんアナログ録音である。
ただ、真空管ファンの斉諧生ではあるが、音だけで買ったのではない。
一つには、なるべく集めるようにしている曲だからであり、二つには、アウリンQはフォーレ(cpo)やバルトーク(Accord)以来、評価している団体だからである。
なお、共演のチェリストは1977年チューリヒ生まれの若手。
↑同様、ハイファイ・ジャパンから購入したもの。
 
ボロディンQ、ステーンハンマル;弦楽四重奏曲第3番(瑞Barben、LP)
昨年9月に地元の中古音盤屋で瑞TELESTARレーベルのLPを発掘して狂喜乱舞した録音の、別レーベルのものがカタログに出ていたのでオーダーしたもの。
1958年6月7日、ストックホルムでの録音。TELESTAR盤同様モノラルだが、遙かに力強く非常に優秀な音質で喜ばしい。あるいはこれがオリジナルか。
なお、CDはSwedish Societyレーベルから出ている。
 
ヴラフQ、ステーンハンマル;弦楽四重奏曲第4番(独DGG、LP)
永らく探求していたステーンハンマルの音盤がようやく手に入った。\(^0^)/
いつもならカタログがアップされたら、すぐチェックするのだが、今回は中国出張中だったため、オーダーが遅れた。ほとんど諦めていたのだが、幸運にも入手でき、またまた狂喜乱舞である。
この音源については、各種の資料には常に掲載されており、早くから知っていたが、ドイツ・グラモフォンというワールドワイドなレーベルがステーンハンマルを出しているのも不思議なら、演奏者がチェコの団体というのもまた不可思議。
ジャケットを見ると、プロデュースはPHONO SUECIAが行ったもので(それにしては御本家からのリリースを見たことがない)、録音は1972年10月にプラハのスプラフォン・スタジオで行われている(録音スタッフはチェコ人らしい名前)。
 
ヤープ・ファン・ツヴェーデン(Vn)ロナルド・ブロウティガム(P) バッハ;シャコンヌ&ベートーヴェン;Vnソナタ第8番ほか(蘭Philips、LP)
最近はハーグ・レジデント管の指揮者として活躍しているツヴェーデンの、ヴァイオリニスト時代の初期の音盤を見つけた。
後にBMGでショスタコーヴィッチなどを録音しており、なかなか面白い人なので、これもオーダー。
1985年7月のデジタル録音だが、CDでは見たことがない。
標記2曲以外に、モーツァルト;VnソナタK.304ヴィニャフスキ;スケルツォ・タランテラをカプリング。

 今日、入手した音盤の情報をステーンハンマル・作品表とディスコグラフィに追加。
 また、先だって有名な盤鬼(『クラシックプレス』にベルリン・フィル・ディスコグラフィを発表した人)、マイケル・グレイ氏から直接メールを頂戴して、パレーが戦後まもない頃、仏POLYDORに録音したSP3点について、録音年月日のデータを御教示いただいた。パレー・ディスコグラフィに追加するとともに謝辞を記す。


9月7日(金): 

 

ラファエル・クーベリック(指揮)バイエルン放送響、マーラー;交響曲第6番(audite)
auditeから出てくるクーベリックのライヴは全部買っているところ、新譜がリリースされたので購入。
これで、このシリーズのマーラーは第1・2・5〜7・9番が揃ったことになる。
少し古く、1968年12月6日、ヘルクレス・ザールでのライヴ録音だが、音質は優れている。
 
井上喜惟(指揮)アルメニア・フィル、矢代秋雄;交響曲ほか(Altus)
愛惜佳曲書に掲げた矢代の交響曲の新録音が出たので購入。
2000年9月、アルメニアの首都イェレヴァンで開催された日本音楽週間でのライヴ録音。国内ではあまり活動していない指揮者だが、高く評価する人もいる井上喜惟(ひさよし)の表現に期待したい。
それにしても、初演の渡邉暁雄&日フィルの最初の録音がCD化されないものか。
なお、ドビュッシー;牧神の午後への前奏曲ラヴェル;歌曲集「シェヘラザード」をカプリング。後者の独唱は林千恵子(M-S)。

9月6日(木): 

 

レオポルト・ストコフスキー(指揮)交響楽団、バッハ;管弦楽編曲集(BMG)
ストコフスキー編曲・指揮によるバッハの録音は数多いが、これは1947・50年の録音を集成したもの。
定番のトッカータとフーガ ニ短調小フーガ BWV.578はともかくとして、シャコンヌ 無伴奏Vnパルティータ第2番は少なく、これと1934年のSP録音の復刻盤(Pearl)があるだけ。
シャコンヌの管弦楽編曲といえば、少し前に小澤征爾が師斎藤秀雄の編曲を録音しているが(Philips)、ストコフスキー版は斎藤を大きく凌ぐ出来栄えだというので、捜していた。
数年前のリリースなのでなかなか見つからなかったのだが、ふだん行かない音盤屋で棚晒しの店頭在庫を発見したので狂喜して購入。
 
(附記)
ストコフスキーのシャコンヌには、1974年録音のロンドン響盤がありました(BMG)。謹んで訂正とお詫びを申し上げます。m(_ _)m

9月4日(火): 

 

サカリ・オラモ(指揮)バーミンガム市響、シベリウス;交響曲第5番・「カレリア」組曲ほか(ERATO)
オラモの全集第2弾。後期から録音していくというのは心強い。
バーミンガム市響は前任ラトルとも全集を録音していたから、オーケストラがシベリウスの語法に慣れているという点でも期待できるかもしれない。
「ポヒョラの娘」「吟遊詩人」をカプリング。
なお、いま読んでいるリチャード・オズボーンカラヤン評伝(白水社)によると、彼は1938年にストックホルムで交響曲第6番を指揮し、以来、この作曲家を愛しその音楽に安らぎを見いだすようになったとか。同じ年のうちに、ベルリン・フィルとの2度目の演奏会でもこの曲を取り上げたという。
 
チョン・キョンファ(Vn)サイモン・ラトル(指揮)ウィーン・フィル、ブラームス;Vn協&ベートーヴェン;交響曲第5番(EMI)
チョン・キョンファのブラームスは、前にソナタ集が出ていたが、協奏曲は初めての録音。
往年(1970年代)の神懸かり的な凄演は近頃見られなくなったようだが、それでも満を持してのリリースには期待高し。
カプリングのベートーヴェンはライヴ録音(2000年12月1〜3日)だが、こちらは同月18〜20日のスタジオ収録。

9月3日(月): 

 昨日の演奏会の情報を演奏会出没表に、入手した音盤の情報をペレーニ・ディスコグラフィに追加。
 また、音盤狂昔録平成13年8月分を追加。


9月2日(日): 

 神戸文化ホールへ出かけ、神戸市混声合唱団秋の定期演奏会を聴く。
 指揮者として宇野功芳師が招かれているのである。師の指揮については、かねてから管弦楽よりも合唱に優れておられると考えており、ぜひステージを聴いてみたいと念願していたもの。オーケストラの演奏会は何度かホールに足を運んでいるが、合唱は音盤でしか聴いたことがなかったのだ。
 師の本領とすべき女声合唱でないのが少し残念だが。

プログラムは4部からなっており、
 
モーツァルト;ミサ・ブレヴィスK.259
 
大中恩;秋の女よ(佐藤春夫 作詩)
池辺晋一郎;いつもの子守歌・思い出の子守歌(別役実 作詩)
清瀬保二;蛇祭り行進(草野心平 作詩)
新実徳英;ヒロシマにかける虹(津田定雄 作詩)
 
細川潤一;マロニエの木陰
黎錦光;夜来香
服部良一;山のかなたに
古関裕而;三日月娘・長崎の鐘
 
高田三郎;心の四季(吉野弘 作詩)
 
というもの(下線はCD録音のある曲)。
 
なお、第3ステージは師が愛惜される戦時中前後の歌謡曲で、女声のみによる。
客席(ほぼ満席)の平均年齢がずいぶん高かったが、この団体の演奏会はいつもこうなのだろうか? あるいは、このステージの曲目がしからしむるところか?
 
宇野師は1930年生まれ、既に70歳を超え、見かけはますます「頑固ジジイ」風に、振りはますます巨匠風(笑)になっておられる(指揮棒は用いず)。
前奏部や間奏部で伴奏ピアノをも、しっかり指揮されるのは、師の年来の持論ではあるが、見ていて面白くもあり煩わしくもあった。もちろん出てくる音楽は雄弁そのもので、聴き応え十分。
2人のピアニスト(宮下恵美沢田真智子)はいずれも好演、心から讃えたい。
 
さて、冒頭のモーツァルトは、まずまず美しい出来。
師のモーツァルトは、推奨される音盤に聴く演奏よりも躍動や愉悦に不足する感があるが、これは戴冠式ミサ等の録音でも同様なので、音楽性からくる問題であろう。
もちろん、「グロリア」の"miserere(憐れみたまえ)"以下で音色を曇らせたり、「クレド」の"passus et sepulutus est(苦しみを受け葬られ)"で大きくテンポを落としたり、といった宇野師特有の表情付けは健在であった。
 
第2ステージの現代日本の有名合唱曲集は優れた出来であった。
秋の女よ冒頭、思い入れ十分なピアノ前奏に続いて出る「泣き濡れて」の声に込められたエネルギーと「ため」は、宇野師のベートーヴェン;交響曲第3番「英雄」「コリオラン」序曲の第一音を思わせる。
合唱団の弱音や柔らかい音色も美しく、いつもの子守歌・思い出の子守歌の哀しみと慰めが、いたく心に沁みた。
蛇祭り行進途中のクナッパーツブッシュ的なテンポの踏みしめや、ヒロシマ〜両端のコラール風旋律の美しさなど、表現の振幅も大きく、楽曲の素晴らしさを明らかにする名演だったといえよう。
もっとも、客席後方から「素晴らし〜ぃ!」などと奇声が発せられたのには興醒めだったが…。
 
宇野師十八番の歌謡曲ものも、演奏の質は第2ステージ同様ながら、詞や曲の性質ゆえにセンチメンタリズムが表面に出てしまい、ちょっと居心地が悪かった。
例えば、極端に遅いテンポの長崎の鐘。弱音で歌い出し、"なぐさめはげまし"でフォルテに盛り上がって、"鐘が鳴る"でピアニッシモに戻るのであるが、そこまでしなくても、と思ってしまう。
 
最も期待していた心の四季は、第2ステージの各曲同様、やはり素晴らしい演奏。
第1曲「風が」は、CDに比べ、速めのインテンポによるものだったが、ライヴゆえの感興か。斉諧生の好きな曲だが、美しい演奏で満足した。
白眉は第2曲「みずすまし」と第6曲「雪の日に」。吉野弘の詩ともども高田三郎の生や死への想いが全面に強く出た曲だが、宇野師も表現の振幅を大きくとって、その深い意味を掘り起こす。
後者で"雪がはげしく降り続ける"とフォルテで歌い出した声を裏付けていた「気持ちの強さ」には心打たれた。
 
アンコールは池辺晋一郎;風の子守歌・思い出の子守歌の2曲。
 

 演奏会の前後に神戸や梅田で買い物。

井上道義(指揮)ロイヤル・フィル、マーラー;交響曲第6番(Canyon)
井上さんのマーラーは先だっても第9番を買ったところ。
この第6番も前から気にはなっていた。中古格安で見つけたのを機に購入。
1988年5月3〜4日、ロイヤル・フェスティバル・ホールでのライヴ録音で、これが彼のロンドン・デビューであったという。
なお、ライナーノートによると、例のハンマーは、井上氏が自作のハンマーをロンドンに持ち込んで叩かせていたところ、本番中、2回目の打撃で壊れてしまったという。第3版に基づき3回目の打撃を削除した演奏だったので、事なきを得た…とのこと。
 
ヘルマン・シェルヘン(指揮)ウィーン響、マーラー;交響曲第9番(Orfeo)
↑の井上盤同様、このところ聴き直してみたくなったマーラーを購入。半額ワゴン・セールで提供されていたのがきっかけ。
1950年6月19日、ウィーン楽友協会大ホールでのライヴ録音。音は聴きやすいが、マーラーとしては頼りないボリュームだ。
 
パーヴォ・ベリルンド(ベルグルンド)(指揮)ヘルシンキ・フィル、シベリウス;交響曲第3・5番(EMI)
もちろん架蔵済みのベルグルンド2回目の全集録音の1枚。架蔵盤は国内盤であったところ、中古音盤屋で輸入盤しかも初発時の1枚ものを見つけたので購入。
今はミドル・プライスの2枚組・2組で簡単に手に入るようになったが、斉諧生がCDを集め始めた頃には極めて入手難、あちこちの中古屋で捜し続けたことを思い出す。
聴き比べてみたが、輸入盤の方が音の抜けがよく清澄さが感じられたのは、そうした思い入れのせいか…?
 
ピエール・フルニエ(Vc) バッハ;無伴奏Vc組曲(全曲)(TDK)
かつてFM東京の「TDKオリジナルコンサート」で放送されたライヴ音源をCD化するというシリーズの第1弾。→ここを押して
放送時期の後半は、斉諧生が熱心にエアチェックしていた頃と重なっており、とても懐かしい。
フルニエのバッハ全曲とあらば、それでなくても聴きたいところであり、一二もなく購入。
1972年3月2・4日、虎の門ホールでのライヴ、オンマイクで収録された音質も優れている。
音源が保管されているというオッコ・カム(指揮)ヘルシンキ・フィルオイゲン・ヨッフム(指揮)バンベルク響ローラ・ボベスコ(Vn)など、是非是非、リリースしてもらいたいものだ。
 
ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)ニューヨーク・フィル、ショスタコーヴィッチ;交響曲第5番(米Columbia、LP)
神戸のLP取扱い店で探求盤を発見、狂喜して購入。
この演奏は、奥座敷同人工藤さんによるショスタコーヴィッチのディスコグラフィで、
これほどまでに戦慄の走る悲劇的な演奏は、ソ連の団体を含めても、ほとんど見当たらない。
 全ての音が重い意味を持って、聴き手に突き刺さるように響いてくる。
 ただの一瞬も表面的な効果を追いかけることがなく、切実な音楽の流れに無条件に引き込まれてしまう。
 恐い、本当に恐い名演である。
と絶讃されているものなのだ。→ここを押して
レーベルは、いわゆる「六つ目」なので1960年代の再発盤であろうが、このあたりの初期盤は保存状態が悪いものも多いので、これで良しとしたい。
 
ミクローシュ・ペレーニ(Vc)イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管、ドヴォルザーク;Vc協&チャイコフスキー;ロココ変奏曲(洪HUNGAROTON、LP)
ペレーニの未架蔵LPを見つけたので、これまた狂喜して購入。
デジタル録音によるものでありCDでは2とおりのレーベルで架蔵しているのだが…。(苦笑)

平成13年2月3日(土):ドメイン"www.seikaisei.com"を取得しサーバーを移転。「音盤狂日録」の過去ログを「音盤狂昔録」として公開。

平成12年9月10日(日):「提琴列伝」に、ミクローシュ・ペレーニを掲載。

平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステーンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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