音盤狂日録


1月30日(日): 

 バークシャーから荷物が届いた。
 15点19枚で送料を含めて152.31ドル、1枚当たり約850円という計算である。
 プラ・ケースに切り込みが入っていたりするのはアウトレット品ゆえしかたないのだが、その取り替えもちょっとした手間ではある。

ゲルト・アルブレヒト(指揮)チェコ・フィル、ブルックナー;交響曲第8番(Canyon)
もちろん逆輸入盤、15.98ドルと超格安。
最近、読売日響を指揮しているアルブレヒト、ベートーヴェンやブルックナーの評判が良く、一度聴いてみたいとオーダーしたもの。
ノヴァーク第2稿(最も一般的な版)による、1994年の録音。
 
ジョージ・ヴァス(指揮)オックスフォード・オーケストラ・ダ・カメラほか、ディーリアス;管弦楽曲集ほか(Whitehall Associates)
演奏者は未知の人だが(また聞いたことのないレーベル)、
ディーリアス;「フェニモアとゲルダ」の間奏曲
ディーリアス;「夜明け前の歌」
ディーリアス;「2つの水彩画」
ディーリアス;「春一番の郭公を聴いて」
ディーリアス;「夏の夜、河の上に歌える」
エルガー;弦楽セレナード
エルガー;序奏とアレグロ これはメディチQが参加
RVW;グリーンスリーヴズ幻想曲
ウォーロック;弦楽セレナード
ホルスト;ブルック・グリーン組曲
と佳曲の数々、オーダーせざるべからず。
1993年の録音。
 
ガブリエル・カスターニャ(指揮)ベルリン響、ヒナステラ;パブロ・カザルスの主題によるグローセスほか(Deutsche Schallplatten)
一昨年、ベン・ドール盤(Koch)を聴いて感銘を受けた標記の曲の別な演奏を見つけたのでオーダーしたもの。
序曲「ファウスト・クリオロ」op.9
パンペアーナ第3番op.24
バレエ組曲「エスタンシア」op.8bis
をカプリング。
どうしてまたこのレーベルがこのオーケストラでヒナステラを録音したのかよくわからないが(笑)、とりあえず歓迎したい。指揮者はアルゼンチン出身の若い人。
録音は1994年。
 
ラルフ・カーシュバウム(Vc)ピンカス・ズッカーマン(指揮)イギリス室内管ほか、ハイドン;Vc協第2番ほか(BMG)
年末年始のバッハ聴き比べで、非常に良かったカーシュバウムを探していたら、これを見つけたのでオーダー。
スタイリッシュなハイドンは、彼にピッタリではなかろうかと期待している。
交響曲第6番「朝」協奏交響曲(交響曲第105番)をフィルアップ。
後者のソロ・パート(Vn、Vc、Ob、Fg)には、ズッカーマンとカーシュバウムが加わっている。
1993年の録音。
 
エミール・ナウモフ(P)アラン・ロンバール(指揮)国立ボルドー・アキテーヌ管、モーツァルト;P協第20・24番(FORLANE)
ピアニストには関心が薄い斉諧生だが、このところ追っかけているナウモフの協奏曲録音を見つけたのでオーダー。
P協の短調作品2つをカプリングしたもので、1990年4月の録音。作曲者の没後200年記念を目当ての企画だった模様。
それにしても、どうも斉諧生が関心を持つ演奏家にはマイナー・レーベルを放浪する人が多いような気がする。
 
サンドラ・ミラー(Fl)ヴィクトリア・ドレイク(Hp)トーマス・クローフォード(指揮)オールド・フェアチャイルド・アカデミー管、モーツァルト;Fl協第1・2番、Fl&Hp協(Music Masters)
ニューヨークとその近郊を活動範囲とする古楽器アンサンブルによるモーツァルト;管楽器のための協奏曲全集の1枚で、これは第2巻。
先年、たまたま第1巻(Cl協・Fg協・Ob協)を聴き、非常に感心した。特にFg協には、ベストを争うのではないか、という印象が残っている。
続巻を聴いてみたいと気にかけていたのだが、このレーベルはあまり輸入盤店で見かけず、たまにあるとずいぶん高い値付けだったりして、延び延びになっていた。今回、バークシャーで見つけたので喜んでオーダーしたもの。
独奏者はいずれもオーケストラの首席奏者とのこと。
 
ルーシー・パーハム(P)ジャン・クロード・カサドシュス(指揮)ロイヤル・フィル、ラヴェル;P協&フォーレ;バラード&フランク;交響的変奏曲ほか(RPO)
フランス系指揮者では贔屓にしている一人、JCCの未知の音源が見つかったのでオーダー。
イギリスの若い女性ピアニストがソロを弾く標記3曲のほか、フランク;交響詩「ジン」をフィルアップ。
録音は1993年。いっとき輸入盤店に氾濫したRPOの廉価シリーズだが、これを見かけたことはなかったように思う。
なお、今回のオーダーの中でこれが一番安く、1.99ドル。
 
スタニスラフ・マツラ(指揮)チェコ・フィルほか、マルティヌー;2群の弦楽合奏、PとTimpのための二重協奏曲ほか(panton)
愛惜佳曲書に掲載している曲の未架蔵音源を見つけたのでオーダー。
1938年に完成したこの曲が持つ緊張感は、戦争への抗議と、殺伐とした時代の鏡として書かれたことに由来するという。
カプリングはいずれもマルティヌーの作品で、
ズデニェク・コシュラー(指揮)プラハ放送響パラブル(1958)
リュボミール・マリ(Va)ヴァーツラフ・スメターチェク(指揮)プラハ響ラプソディ・コンチェルト(1952)
3曲とも1979年の録音。
 
ユリウス・ベルガー(Vc)シュテファン・J・ブライヒャー(Org)ヴィヴァルディ;Vcソナタ集(Orfeo)
RV39〜47の9曲とイ長調(擬作)を収めた2枚組。
年末年始のバッハ聴き比べで感心したベルガーを探していたら、これが見つかった。同じバロック系の作品ゆえ、期待できるのではないかとオーダー。
オルガン伴奏というのも気に入った。弦楽器には、ピアノやチェンバロよりも適合的だと思う。
1990年の録音。
 
セント・ルークス室内アンサンブルほか、シューベルト;弦楽五重奏曲ほか(Music Masters)
この曲も好きなので、オーダーしてしまった。
一時期、ティルソン・トマスマッケラス等と録音していたセント・ルークス管と共通するメンバーからなるアンサンブル。
Vnは2人とも日本人女性で、田中直子佐藤瑛理子
弦楽五重奏のための序曲ハ長調D.8をフィルアップ。少し以前、1980年代終り頃の録音。
 
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)ブリジット・エンゲラー(P)シューマン;Vnソナタ第1・2番ほか(HMF)
フランスの名手(パリ音楽院教授)シャルリエの、買いそびれていたCD(1991年録音)を見つけたのでオーダー。
3つのロマンスop.94をフィルアップ。
 
ノーバート・ブレイニン(Vn)カルロ・L・ミンツィ(P)ブラームス;Vnソナタ全集ほか(DUCALE)
1987年に解散したアマデウスQの第1Vn奏者ブレイニンの、初のソロ録音…とジャケットにある。
1993年の録音、けっこうな年齢になっているはずだが(四重奏活動を40年以上やっていたのだ)、ウィーンの伝統を受け継ぐVnが聴けるのではないかと期待。
CD2枚組で、Vnソナタ3曲を1枚に、もう1枚にスケルツォ(FAEソナタ)ハンガリー舞曲(ヨアヒム編)全21曲を収めている。こういう組み方も珍しい。(@_@;)
 
オスカー・シュムスキー(Vn)レオニド・ハンブロ(P)ブラームス;Vnソナタ全集&Vaソナタ全集(Music Masters)
↑で書いたようにあまり見かけないレーベルだが、尊敬すべきシュムスキーのブラームスの全集があるとは吃驚。
しかもVaソナタと合わせて5曲をCD2枚組に収録、こんなディスクも初めて見る。(@_@;) (@_@;)
録音日は明記されていないが、1991年頃の模様。
ハンブロも昔から名前を聞く人だ。何でだったかは…失念。
 
パスカル・シュミット(Vn)アンヌ・ヴァン・デン・ボッシェ(P)エネスコ;Vnソナタ第3番ほか(CYPRES)
何となく(笑)好きなレーベル、CYPRES@ベルギー。
この盤も曲目が非常に興味を惹く。
↓28日の項にも書いたように、好きな標記の曲に続けて
トゥルヌミール;ソナタ・ポエムop.65
ルーセル;Vnソナタ第2番op.28
オネゲル;Vnソナタ第1番
と来れば、オーダーせざるべからず。(苦笑)
 
磯村和英(Va)バッハ;無伴奏Vnソナタ第1番・無伴奏Vc組曲第2番(Va版)ほか(Music Masters)
東京Qのヴィオリスト、初のソロ録音…とジャケットにある。録音は1990年頃。
日本人が海外のレーベルに録音していると、なんとなく気になるのはどうしてだろう? 曲もバッハだし、オーダーしてみた。
その他、バッハ(コダーイ編);半音階的幻想曲BWV903レーガー;無伴奏Va組曲第1番op.131dブリテン;悲歌をカプリング。

1月29日(土): 日帰りで広島へ出かけた。
 日本シベリウス協会のオフ「アイノラの集い」が開催されるのである。会場はヤマハ広島店。
 
 協会事務局長から御挨拶があった後、プログラム前半は、ミニ・コンサート。
 演奏者は山根浩志(P)、小林宏光(Tuba)のお二人。
 前半はピアノ曲。曲目はもちろんシベリウスエチュードop.76よりもみの木op.75より
のほか、メリカントパルムグレンペッテション・ベリエルなど北欧一色。
 いずれもリリカルな美しい曲で、ピアノの響きもまろやかで美しく、ただただ聴き惚れるのみ。
 後半ではマドセン;Tubaソナタという珍しいものも聴かせていただいた。
 
 後半は場所をノルディックサウンド広島に移して、お茶会とお喋り。
 通販で世話になっているお店の方々に御挨拶したり、会員の方からシベリウス文献の紹介や珍しい音源を聴かせていただいたり、和やかでしかも充実したひとときを過ごした。

 ノルディックサウンド広島さんで、もちろん買い物。
 壁一面に並んだ棚に、Phono Suecia、Swedish Society、Caprice、Intim Musik、Opus3、Finlandia、Ondine、NKF、Simax、Kontrapunkt等々、北欧レーベルばかりが収まっているのは、まさに壮観。

DGG、EMI、DECCAは全くなく、メジャーはNaxosのみ。

 また、試聴用のCDが多数用意してあり、しかも自由に聴けるのが特長。おかげでずいぶん購入枚数が増えた。(^^;;;

トール・マン&ステン・ブルマン(指揮)イェーテボリ響&ストックホルム・フィルほか、ベルワルド;交響曲第1・3番ほか(CAPRICE)
同じ曲を、演奏伝統の継承を異にする2人の指揮者で聴き比べる趣向のCD2枚組である。
マン(1894〜1974)はベルワルドの孫弟子に当たり、いわば直伝系の演奏。
ブルマン(1902〜1983)はアンリ・マルトーにヴァイオリンをツェムリンスキーに指揮を学んだ、いわばドイツ系の演奏。
収録データは以下のとおり。
トール・マン ステン・ブルマン
オーケストラ 収録年月日 オーケストラ 収録年月日
交響曲第1番 イェーテボリ響 1946年10月25〜26日 スウェーデン放送響 1968年4月19日
交響曲第3番 ストックホルム・フィル 1938年9月29日 ストックホルム・フィル 1968年4月21日
序曲「エストレッラ・デ・ソリア」 イェーテボリ響 1941年11月6日 ストックホルム・フィル 1968年4月21日
なお、CAPRICEの歴史的録音シリーズの特長で、詳細なブックレットが付属している。
大半がスウェーデン語で、英訳は要約程度なのが残念だが、1818〜1946年の間のベルワルド作品の演奏記録が掲載されていること。
斉諧生的にはこれが宝物で、ステンハンマルが指揮者としてベルワルドを演奏した記録を調べることができる。これはいずれ、演奏家ステンハンマルの記録に掲載したい。
 
ペッカ・ヘラスヴォ(指揮)ヘルシンキ音楽院管、シベリウス;弦楽四重奏曲「内なる声」(弦楽合奏版)ほか(ヘルシンキ音楽院自主製作)
シベリウスの珍しい曲・演奏には、ついつい手を出してしまうが、これは弦楽四重奏曲「内なる声」の弦楽合奏版(指揮者自編)。
編成の拡大で曲趣がどうなるか、興味・期待を持って購入。
そのほか、珍しい音楽劇(メロドラマ)3曲を収録している。
「嫉妬の夜」(1888)・「伯爵夫人の肖像画」(1906)・「孤独なシュプール」(1925)で、朗読をラッセ・ポウスティ(フィンランドを代表する俳優とのこと)が担当。
演奏は音楽院の学生オーケストラ、4-4-3-2-1の弦楽とハープの編成である。
 
ペッカ・カウッピネン(Vn)タピオ・トゥオメラ(指揮)エッセン・フォルクワング室内管、シベリウス;Vnと管弦楽のための作品集(Koch-Aulos)
録音が比較的珍しいVn曲・弦楽合奏曲を集めたCD。
ユモレスクop.89から2曲、
美しい組曲op.98a
田園組曲op.98b
性格的な組曲op.100
等を収録。
中でも組曲op.117は、1929年、シベリウスが筆を折る直前の作品とされ、推敲を残したまま、死後25年ほどたって発見されたもの。
カウッピネンは1966年生れでヘルシンキ・フィルのコンサートマスター。(オーケストラの公式Webpageのメンバー表は→ここを押して)
 
ヘニング・クラゲルード(Vn)ビャルテ・エンゲセット(指揮)ラズモフスキー響、「ノルウェーのVn名曲集」(NAXOS)
NAXOSからは、先だってスウェーデンのVn曲集が出たが、今月はノルウェーのもの。
シンディング;組曲
スヴェンセン;ロマンス
グリーグ;「君を愛す」(Vn編)・「過ぎし春」
といった有名な(一部で、かな?)佳曲のほか、
ブルハルヴォルセンの作品を収めている。
どれも美しい抒情が聴けるに違いないと期待して購入。
ヴァイオリニストは1973年生まれの新鋭。
 
マンフレード・グレースベク(Vn)マイヤ・レフトネン(P)クーラ;室内楽作品全集第2巻(Vn曲集その1)(MILS)
「アイノラの集い」で演奏されたクーラ(1883〜1918)の作品が美しく、少し気になっていたところにこれを見かけ、購入してみた。
Vnソナタop.1のほか、小品10曲を収録。
ヴァイオリニストは1955年トゥルク生れ、1982年以来、フィンランド・ナショナル・オペラのコンサートマスターを勤めているとのこと。
なお、MILSのクーラ作品集については、ウッドマンさんのユビュ王の食卓に詳しいレビューがある。→ここを押して
 
カレヴィ・キヴィニエミ(Org)シベリウス;Org曲集(Art Inn)
シベリウスの面白そうなCDは買わずにいられない。
これは「オルガンの魔術師」ことキヴィニエミが、シベリウスの有名曲を(おそらく自分で編曲して)演奏したもの。
「フィンランディア」「悲しきワルツ」など15曲を収める。
特に、「アンダンテ・フェスティーヴォ」は感動的ではないかと期待。
もちろん、オリジナルのオルガン曲であるop.111の2曲(いずれも小品)も含まれている。
使用楽器は、ラプア大聖堂のもの(1938年建造、1988年補修)。
フィンランドの国内リリースで日本には入ってこないそうだ。こういうのを入手できるのがノルディックサウンド広島の強みである。
 
ミカ・ヴァユリネン(アコーディオン)ムソルグスキー(ヴァユリネン編);「展覧会の絵」(アコーディオン版)ほか(MILS)
以前から凄いという噂を耳にしていたヴァユリネン、昨年5月の来日公演を聴き逃したのが未だに悔やまれるのだが、今日、店頭で試聴してみたところ、なるほどこれは!と吃驚。
メシアン(ヴァユリネン編);「主の降誕」(部分)ベリンスキー;ツァラトゥストラかく語りきをカプリング。
ヴァユリネンは1967年ヘルシンキ生れ、近々FINLANDIAからピアソラの録音も出るというから楽しみ。
 
それにしてもこのMILSというレーベル、一般の輸入盤店では見たことがないが、録音も非常に優れており、注目を要する。
ノルディックサウンド広島のWebpageにはカタログが掲載されている。→ここを押して
同店では通信販売にも応じるので、興味のある方は上記サイトから問い合わせを。
 
「スウェーデン作曲家協会の75年 1918〜1993」(Phono Suecia)
CD3枚組のセット物、アッテルベリラーションヴィレンブロムダールといった有名どころから(一部で、かな?)知らない名前まで29人の作品が、様々な音源で収められている。
斉諧生的には、ラングストレム;詩曲を、北欧ヴァイオリニストの中で一押しのセミー・スタールハンメルが演奏しているのが重要で、購入したもの。
最も演奏時間は僅かに4分43秒、これも音盤道か(泣)

1月28日(金): 

 

ピエール・ブーレーズ(指揮)クリーヴランド管ほか、マーラー;交響曲第4番(DGG)
このところ気に入っているブーレーズのマーラー、新しいのが出たので購入。
マーラー・フリークには必ずしも評判は良くないそうだが、ネチョネチョしたところがないのは、斉諧生的には好みである。
曲が曲だけにウィーン・フィルを起用してほしかった気もするが、ブーレーズ的にはオーケストラ固有の*色*を避けたのだろうか。
独唱はユリアーネ・バンゼ(Sop)という人。
 
エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロサンジェルス・フィルほか、マーラー;交響曲「大地の歌」(Sony Classical)
サロネンとラトルは、どうしてこれだけよく同じことをするのだろう?
アルトに代えてバリトンを起用した録音は、これまでクレツキバーンスタインしかなかったのに、先年出たラトル盤に続き、今回サロネンも男声2人の歌唱を採用している。
しかも、ボー・スコウフス(Br)はともかく、プラシド・ドミンゴ(Ten)の起用には吃驚。
絶叫調に傾く演奏が多い中にあって、サロネンの美しい「響き」がどう生きるか、興味津々。
テノールが歌う曲は1999年2月、バリトンの曲は1998年3月と、収録データが約1年もずれているのが、目をひく。
 
本名徹次(指揮)日本フィル、早坂文雄;「七人の侍」ほか(KING)
ディスクの大半は古代の舞曲(1937、ワインガルトナー賞受賞作)、序曲ニ調(1939、皇紀二千六百年奉祝管弦楽曲懸賞入賞作)、管弦楽のための変容(1953、遺作)といった所謂「純音楽」が占め、映画「羅生門」の音楽も収められているが、お目当ては映画「七人の侍」のための音楽である。
「侍のテーマ」「間奏曲」を合わせて5分30秒ほど。
斉諧生はそう熱心な映画ファンではないが、邦画のベスト・ワンには、この作品を挙げる。(洋画なら「薔薇の名前」。)
「侍のテーマ」の誕生の瞬間を、黒澤明は、こう語っている。
「あれ、楽譜は破いて捨ててあったんだよ。それをつなぎ合わせて、弾いたんだ。タン、タン、タン、ターン、タタ、ターン、タタターンって。瞬間、僕は『それ!』って言ったね。そして、『それをもっと勇ましくそれをもっと悲しく』って言って、いろいろピアノで弾いてもらった。」(西村雄一郎編『巨匠のメチエ』(フィルムアート社))
早坂は黒澤の次作「生きものの記録」を作曲中に長逝、武満徹らが担った棺を、「侍のテーマ」が送った。
 
ピーター・ウィスペルウェイ(Vc)オーストラリア室内管、ショスタコーヴィッチ;Vc協第1番&コダーイ;無伴奏Vcソナタ(CHANNEL CLASSICS)
正月に聴いたバッハでこの人には少し落胆したのだが、好きなショスタコーヴィッチの1番を出してきたからには買わざるべからず。
ショスタコーヴィッチを弾き振りで、とは多少懸念もしたくなるが、ライナーノートの紹介を読むかぎりではこの団体、コンサートマスターのリードで演奏するのが常のようである。
 
イダ・ヘンデル(Vn)ウラディミール・アシュケナージ(P)シマノフスキ;「神話」&エネスコ;Vnソナタ第3番ほか(DECCA)
ヘンデルは1928年生れ(1923年説もある)、数年前にTESTAMENTレーベルからバッハの無伴奏全曲が出たときにも驚いたが、メジャーから新録が出たのでまた吃驚。
標記の2曲の他、バルトーク;狂詩曲第1番・ルーマニア民俗舞曲を収録。いずれも東欧ものなのは、彼女の生地ポーランドに因んだのだろうか(1939年にイギリスへ移住)。
「神話」の全曲盤やエネスコの第3ソナタは、なるべく買うようにしている曲なので購入。特に後者は作曲者直伝とのこと。
しかしそれ以上に楽しみなのが、ボーナスCDとして付属している1940年代の音源。カール・フレッシュを驚嘆させた神童時代から間もない頃である。
ベートーヴェン;Vnソナタ第8番シマノフスキ;夜想曲とタランテラバルトーク;ルーマニア民俗舞曲や各種の小品を収録。
 
カスパー・ツェーンダー(Fl)パトリツィオ・マッツォーラ(P)「FlとPのためのフランス音楽」(pan)
こういうディスクにはリリー・ブーランジェの曲が入っているかも…と思って手に取れば、案の定、「春の朝に」を演奏していた。
御承知のとおり彼女の作品の録音は全点蒐集が心願、買わざるべからず。
Fl奏者は1970年スイス生まれ、指揮も学んでフランス国立管シャルル・デュトワのアシスタントをしている…とライナーノートにある。
ブーランジェの他、ドビュッシールーセルタイユフェールタンスマンボニジョリヴェの曲を吹いている。
 
ミシェル・ポルタル(Cl)マーシャル・ソラル(P)「ファスト・ムード」(BMG)
クラシックと現代音楽とフリー・ジャズを股に掛けて活動しているポルタル、『レコード芸術』2月号のインタビュー(198頁)によれば、「もうクラシックの演奏家として日本に来ることはないよ」と言っているそうだが、これはジャズ系の新譜。1999年3月、ブーローニュでのスタジオ録音。
バス・クラリネット、クラリネット、ソプラノとアルトのサキソフォンを吹きまくっている(多重録音もあり)。曲は2人のオリジナル。
ピアニストも斯界では有名な人らしいが、実を言うと斉諧生は全く知らない。(^^;;;

1月26日(水): 

 京都市交響楽団第421回定期演奏会(指揮:井上道義)@京都コンサート・ホールを聴く。
 今日は、ステージ向かって右手の3階バルコニー席を取ってみた。前回の2階バルコニーがイマイチだったので、今度は3階、しかも舞台に近いあたり(というかコントラバスを真下に見おろすくらい)を試したのである。
 斉諧生は、このホールで音が飛んでこない感じがするのは、舞台上方に反響板がないために、楽器から出た音が上に昇ったまま前に向かないからではないかという仮説を持っている。これが正しければ、3階バルコニーでは、しっかりした音が聴けるはず。
 結果としては、ほぼ正解だった。
 「ほぼ」というのは、響きが少しこもる感じがしたためで、もう少し舞台から離れた位置がベストかもしれない。
 あと問題は、ヴァイオリンが「上」に、低弦が「下」に聴こえること。(笑)

さて、今日は、久しぶりの井上さんで、曲目は
プロコフィエフ;古典交響曲
コルンゴルト;Vn協(Vn:渡辺玲子)
ハイドン;交響曲第103番「太鼓連打」
というもの。
1曲目の後の配置換えの時間に出てきた井上さんが、
「今日の曲目は、コテコテの古典です」
と、さぶいギャグを言っていたが、コルンゴルトは、ちょっと「古典」とは言いづらいのではないか。たしかに1945年の作とは思えないようなロマン的な作風だが。
 
プロコフィエフ;古典交響曲
弦合奏は順に10-8-6-5-4という編成。
第1楽章開始からしばらくは、↑の妙な音像定位に戸惑っていたのだが、第2主題が出る頃には慣れてきた。
洒落っ気、エレガンスを感じる演奏なのだが、残念なことには、弦合奏が磨き足りない感じ。
ちょうど指揮者の顔が見える角度だったので、井上さんの百面相(爆)を楽しみながら、第3楽章までを聴いていた。腕を降ろして肘でリズムを刻んだり、やりたい放題。(^o^)
ところが終楽章に入ると空気がガラリと変わった。
この曲としても速めのテンポに、楽員全員顔色を変えて、突進!
弦合奏の音色は相変わらずだが(^^;;;緊密なアンサンブルの中で指揮者の鋭い表情付けが極まりまくり、素晴らしかった。
 
曲間で、指揮者がちょっとお喋り。
「お久しぶりです」で笑わせた後、↑の冷凍ギャグが来たのだが、
「このオーケストラは、あまり古典をやっていません」と続いたのには驚いた。
「古典をやらない」というのが一昨年の解任の理由の一つであり、井上氏はそれに反発していたからである。
 
コルンゴルト;Vn協
先日来、予習を重ねてすっかり好きになった曲。
オーケストラを見て驚いた。
木管はイングリッシュ・ホルンやバス・クラリネット、コントラファゴットまで、打楽器奏者はティンパニを含めて4人を動員、ハープとチェレスタまでいるのに、金管はトランペット2+トロンボーン1という少なさ(ホルンは4)。
渡辺さんのソロは上手だとは思うのだが、音色の太さや音量が、この曲には不足している感じ。
考えてみれば、ヴァイオリニストには苛酷な曲である。ほとんど休む間がない上に、技巧的にも高度なものを要求され、同時に豊麗で大きな音を出さないといっこうに聴き映えがしないのである。
初演する予定だったフーベルマンが逃げ出し、ハイフェッツに託されたというのも、そのゆえか。
オーケストラの響きは、ちょっと未整理な感じがした。
 
ハイドン;交響曲第103番「太鼓連打」
この曲では、また編成が小さくなるので、休憩時間中に配置を大変更。ティンパニも通常のものから古楽器タイプのものに入れ替え。
そのティンパニ、冒頭の「太鼓連打」は、「ドロドロ」でも「クレッシェンド―デクレッシェンド」でも「ff―デクレッシェンド」でもなく、大胆きわまりないカデンツァ!
これはアーノンクールがやっていた(TELDEC)ので、ひょっとしたらと思っていたが、まさしく期待どおり、いや期待以上。
ところが、そのあとの弦合奏が、ちょっとベタッとした音とリズムだったのでガッカリ。
どうも井上さんは弦合奏の響きを作るのが不得手ではないか。同じ京都市響でも、ムントが振ると段違いに佳い響きがするのだから…。
全体的には、ガッチリした、まずまず立体的な音楽で、木管やホルンのソロも美しく、立派な演奏ではあった。
ただ、斉諧生的に長調系のハイドン(やモーツァルト)に求めたい、暖かい弦の響きと、自然に息づきながら前に前に進んでいくリズムとが、両方とも乏しかったのである。
京響にも、そろそろ、そうしたものを求めたい。
 
なお、来年度の予定表が配付されていた。ネット上では、関西クラシック音楽情報で読める。(→ここを押して)

1月25日(火): 

 

クリストフ・ポッペン&イザベル・ファウスト(Vn)ヘルムート・リリンク(指揮)シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム、バッハ;Vn協全集(HAENSLER)
前にバルトーク;無伴奏Vnソナタほか(HMF)の良かったファウスト(しかも美女)、バッハの新譜が並んでいたので、買ってきた。
2人の分担がジャケットに明記されていないので、少し不安だったが的中。ファウストは、二重協奏曲BWV.1043の第2ヴァイオリンだけしか弾いていないのである。(T_T)
もちろん、一番有名なイ短調BWV1041ホ長調BWV1042二重協奏曲ニ短調BWV1043の3曲を収録。…というか、3曲だけ。(笑)
新譜にしては安めの値段だったのは、42分という収録時間のせい?
 
舘野泉(P)オッコ・カム(指揮)日本フィル、グリーグ;P協ほか(東芝EMI)
前から聴いてみたかった舘野さんのグリーグがCD化されたので購入。
1972年4月、日本フィルが分裂する直前、既に存続の危機が叫ばれていた頃の録音である。(日フィルのWebpageを参照→ここを押して)
その後の騒動を考えれば、よくCD化できたものだ…とも思える。それだけ歳月を経た、ということなのかもしれない。
オリジナルのカプリングは、ラフマニノフ;パガニーニ狂詩曲だったのだが、CDは「北欧の抒情シリーズ」ということもあって、シベリウス;P曲集を持ってきている。
シベリウスは1971年6月の録音。…ということは、LP4枚組で出たシベリウス;P名曲大系(東芝、1978年7月録音)とは別音源ということになるのだが、データが混乱しているところもあり、ひょっとしたら同一かもしれない。
↑の問題は、聴き比べが必要なので、結論は後日に。
 
ジャン・ベルナール・ポミエ(P)ベートーヴェン;後期Pソナタ集(ERATO)
これを見て笑ったアナタ、許光俊(編著)『こんな「名盤」はいらない!』(青弓社)を読んだでしょ?! (爆)
同書64〜66頁、鈴木淳史という人が、ポリーニ盤(DGG)を斬った上で、持ち上げているのが、これ。曰く、
「構成に関するセンスは抜群で、音の一つ一つをないがしろにすることはまったくなく、丁寧で確実なタッチでその音楽はつくられている。」
ピアノ音楽は不得手な斉諧生だが、人が絶讃しているものは聴きたくなるのが常、ましてや贔屓のイヴ・ナットの弟子で、その系統の音楽づくりというのであれば、是非、聴いてみたいと思った次第。
CD2枚組に第28〜32番を収録、1995〜97年の録音。全集の一部だそうだ。
 
ジェリー・マリガン(バリトン・サキソフォン)「ナイト・ライツ」(Mercury)
これは、ジャズ。
実はこれも↑の「人が絶讃しているものは聴きたくなる」の現れで(笑)、サダナリ・デラックスの最新の更新、「中級ジャズファン ホントの愛聴盤」を読んで、気になって気になってしようがなくなったもの。(その頁は→ここを押して)
だって、
「このページを見ているひと全員がこのアルバムを買うまで何度でも紹介する」
というのだから、これは…と思ってしまう。
楽器がバリトン・サックスというのも興味を惹かれる。あの低音でジャズ、快感かも…。

1月23日(日): この土日は、職場の親睦会の旅行で九州方面へ行っておりました。

 博多駅での乗り継ぎに時間があったので、天神の新星堂へ行ってみた。

アルトゥーロ・トスカニーニ(指揮)フィルハーモニア管、ブラームス;交響曲全集ほか(TESTAMENT)
名演の誉れ高い録音の、正規音源による初発売である。
1980年代初め、CETRA原盤のLPが国内盤で出たことがあり、その時に買って聴いて仰天したものだ。
トスカニーニ嫌いで有名だった故・福永陽一郎氏も、
本当の大家というものの、精神の剛毅と柔軟さ、振幅の大きさを思い知らされ、(中略)ここでのトスカニーニは、NBC相手のときと違って、音楽に呼吸させている。またそれに応じるフィルハーモニア管弦楽団も最良の時代にあって、ほとんど名人芸的演奏の境地をきかせる」
と絶讃していた(『私のレコード棚から』音楽之友社)。
トスカニーニも、コンサートの後に、
「もう10年若かったら今まで出したレコードを全部廃盤にし、余生のすべてをかけて自分のレパートリー全曲を録音したい」
「(自分の音楽生活で)一番楽しかったのは、(フィルハーモニア管と)ブラームスの二番のリハーサルをした時だ。(略)私が他の奏者と一緒になって演奏している一人の演奏家にすぎなかったのは、生涯であの時ただ一度だよ。」
と言っていたとか(レッグ&シュヴァルツコップ回想録『レコードうら・おもて』音楽之友社)。
悲劇的序曲
交響曲第1番
交響曲第2番(以上1952年9月29日ライヴ)
ハイドン変奏曲
交響曲第3番
交響曲第4番(以上1952年10月1日ライヴ)
なお、LPでは省略されていた両日のイギリス国歌演奏も収録されている。

 最近入手した音盤の情報を、リリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィレイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


1月21日(金): 

 

ヤーノシュ・フェレンチク(指揮)ハンガリー国立歌劇場管ほか、バルトーク;歌劇「青髭公の城」(HUNGAROTON)
Klassischer Platz@かとちぇんこさん で紹介されているフェレンチクのCDを捜しているのだが、最晩年の英雄幻想など、なかなか見つからない。
今日、中古盤屋で1枚見つけたので購入。
『レコード芸術』2月号によれば、フェレンチクはこの曲を3回録音しているそうだが(151頁)、これはその最後、1981年のデジタル録音。
エフゲニ・ネステレンコ(Bs)、エレナ・オブラスツォワ(M-S)が歌っている。

1月20日(木): 

 

キャサリン・マルケイゼイ(Fg)エミール・ナウモフ(P)ほか、サティ;ピアノ曲集(Fgのための編曲)(SAPHIR)
先日から気になって集めているナウモフのディスクをまた1枚購入。
サティのピアノ曲をファゴットとピアノで演奏したもので、編曲者は明記されていないが、あるいはナウモフ自身であろうか。
収録曲は
3つのジムノペディ
6つのグノシェンヌ
冷たい小品集
スポーツと気晴らし
なお、「スポーツと気晴らし」では、フィリップ・メイエによる朗読が入る。

1月19日(水): 以前、1月3日の項で、ピーター・ウィスペルウェイの生年を不詳としていましたが、読者の方から「1963年」であると教えていただきました。
 記して感謝の意を表します。<(_ _)>

 通販業者からCDが届いた。

テディ・パパヴラミ(Vn)クリストフ・ラリュー(P)パガニーニ&サラサーテほか;Vn作品集(HMF)
これは…実は、業者のデータベースの誤り。
検索結果は、「Paganini, Stenhammar, Francois Couperin etc.」だったので、ステンハンマル全録音蒐集プロジェクトの一環としてオーダーしたのである。
ところが、来たCDはパガニーニとサラサーテと、Peci(ペキ? ペチ?)という現代作曲家のVn曲集。
考えてみれば、↑の3人では、いくらなんでも組合せが変。
返品しようかと思ったが、はたして事情を説明する英作文が出来るのか(苦笑)。
チラッと聴いてみたところ、まずまず良さそうなヴァイオリンなので、引き取っておくことにした。
ヴァイオリニストは1971年ヨルダン生まれ、神童としてアルバニアなどで演奏中にアラン・マリオン(Fl)に見出され、パリでピエール・アモイヤルらに学んだという。
これは彼の初録音、
サラサーテのザパテアードカルメン幻想曲
パガニーニの奇想曲(抜粋)「ネル・コル・ピウ」変奏曲
それにPeciアルバニアの3つの舞曲
等を演奏している。
 
カレン・グライルズ(指揮)ニュージーランド・ナショナル・ユース合唱団、合唱曲集(MANU)
これは間違いなく(笑)、ステンハンマル;後宮の庭園に(3つの無伴奏合唱曲より)を歌っている。
その他、ブラームスホルストアルヴェーンプーランク、あるいはニュージーランドの作曲家の作品などを演奏している。

1月18日(火): 本業関係で東京出張。
 チャット等で御一緒している方々が「迎撃」ミニミニ・オフ会を開いてくださることになり、用務終了後、夕方から最終の新幹線まで、歓談に時を過ごした。
 お忙しい中、平日にお集まりいただいた皆さんに、あらためてお礼申し上げます。 <(_ _)>

 オフ会までの時間を利用して音盤屋廻り。

マレク・ヤノフスキ(指揮)フランス放送フィル、名演集(Le Chant du Mond)
1989〜99年の間、音楽監督を務めたヤノフスキとこのオーケストラの記念アルバムとして、ライヴ録音を集成した4枚組。
先年来日した折りには残念ながら聴くことができなかったのだが、充実ぶりは耳にしていたので、購入してみた。
収録曲目も結構魅力的。
シューマン;交響曲第2番(1990年10月16日)
ブラームス;交響曲第2番(1999年1月8日)
ブルックナー;交響曲第6番(1999年4月23日)
R・シュトラウス;アルプス交響曲(1997年5月22日)
シベリウス;交響曲第7番(1999年1月8日)
ワーグナー;ジークフリートの葬送行進曲(1992年3月14日)
フォーレ;組曲「ペレアスとメリザンド」(1996年4月17日)
ドビュッシー;交響詩「海」(1996年4月17日)
デュティユ;「音色、空間、動き」(1996年3月9日)
フランスのオーケストラが演奏するシベリウスは珍しく、この1曲だけでも欲しいところだ。
 
アルマン・ジョルダン(指揮)スイス・ロマンド管、ラヴェル;「ラ・ヴァルス」&ドビュッシー;「遊戯」&デュカス;「ラ・ペリ」(CASCAVELLE)
CASCAVELLEレーベルは、マルケヴィッチビーチャムのライヴ録音やコルボのモーツァルトなどを活発に出した後、見かけなくなっていた。
活動を再開したのか、マルC&P1999年のディスクを発見。
20世紀フランスのバレエ音楽を3曲収めており、デュカスの佳曲を聴きたく思って購入。
「ペリ」は、ファンファーレだけはよく録音されるが、バレエ音楽本体の録音は貴重だ。
ジョルダンは1985〜1997年の間、首席指揮者を務めているが、いずれも1980年代半ばの録音。
 
フランティシェク・ノヴォトニー(Vn)イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)プラハ室内フィル、ドヴォルザーク;Vn協ほか(MATOUS)
ヴァイオリニストの姓を見て、バッハ;無伴奏Vnソナタとパルティータのユニークな録音(Supraphon)で知られるノヴォトニーかと思い、きっと民俗色豊かなドヴォルザークではと思って買ってみたのだが、人違いだった。(^^;
あちらは「ブジェチスラフ」・ノヴォトニーで1924年生まれ。このCDのヴァイオリニストは1964年生まれ、もしかしたら親子かもしれないが、ブックレット記載の簡単なバイオでは確認できなかった。
もっとも、チラッと聴いた感じでは、音色・和声感など好ましそうなヴァイオリンなので、出会いを喜んでいる。
 
ラルフ・カーシュバウム(Vc)ロジャー・ヴィニョールズ(P)ユッカ・ペッカ・サラステ(指揮)スコットランド室内管、バーバー;Vc協・Vcソナタほか(Virgin)
年末年始のバッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べで、非常に良かったカーシュバウムを見つけたので購入。
1988年の録音、有名な弦楽のためのアダージョをフィルアップ。
 
ソニア・ヴィーダー・アサートン(Vc)カトリーヌ・コラール(P)ブラームス;Vcソナタ第1・2番(LYRINX)
知り合いから薦められているコラールの、そのまたお薦めディスクを見つけたので購入。
チェリストは未知の人だが、1961年サンフランシスコ生まれ、パリでジャンドロンミュレールらに、モスクワでシャホスカヤに学んだとのこと。
チラッと聴いた感じでは、力強い音と渋い音色で、斉諧生的には好ましいチェロである。
 
ドミニク・ド・ヴィリアンクール(Vc)エミール・ナウモフ(P)ブラームス;Vcソナタ第1・2番ほか(PIERRE VERANY)
先だってバッハフォーレに感心したので、ナウモフのCDを捜していたところ、3点見つけたので、全部買い込んだ。
これはブラームスのVcソナタにVnソナタ第1番のチェロ編曲をカプリングしたもの、1996年の録音。
名前を見て女性と思ったチェリスト、ブックレット裏に掲載されている写真を見て吃驚、顎の角張った堂々たる男性である。ドミニクが男性名でもあることを思い出した次第。(^^;;;
姓の方の発音には自信がない。綴りはWilliencourt。
ナヴァラミュレールロストロポーヴィッチに学んだという。
 
イズー・ショア(Vc)エミール・ナウモフ(P)フランク;Vcソナタ&ドビュッシー;Vcソナタ&プーランク;Vcソナタ(SAPHIR)
ネットの通販サイトで検索して発見したが、NOT AVAILABLEで切歯扼腕していたディスクが棚にあったので驚喜して購入。
フランクはもちろんVnソナタの編曲、ドビュッシーもプーランクも佳曲ゆえ。
チェリストは1964年パリ生まれ、シュタルケルに師事し、現在はインディアナ大で教授を務めているそうだ。
1997年録音。
 
エミール・ナウモフ(P)ライヴ・イン・パリ(GEGA NEW)
録音は3点の中でこれがいちばん古く、1989年3月1日。シャンゼリゼ劇場でのライヴ録音である。
なかなかユニークなプログラムで、
チャイコフスキー;ロメオとジュリエット(管弦楽曲からナウモフ自編)
チャイコフスキー;四季(4曲抜粋)
スクリアビン;練習曲op.2-1、8-11
ラフマニノフ;前奏曲op.3-2、32-12
ラフマニノフ;ヴォカリーズop.34-14
ラフマニノフ;音の絵op.39-4
ラフマニノフ;道化役者op.3-4
ストラヴィンスキー;タンゴ
ナウモフの生国ブルガリアのレーベルからの発売。
 
ポーラ・ロビソン(Fl)サミュエル・サンダース(P)グリーグ&アンデルセン;Fl曲集(ARABESQUE)
リリー・ブーランジェの曲が入っているCDでもないかとフルートの棚を見ていたら、先日聴いたプーランクが良かったロビソンの、北欧Fl曲集があったので購入。
グリーグは、ソルヴェイグの歌「君を愛す」「春」等、歌曲からのアレンジ8曲を収めている。
アンデルセン(「アナセン」が正しい発音だそうだが)はデンマークの人(1847〜1909)。フルート奏者、作曲家、また指揮者として活躍、フルートの曲を多く書き残した。ここでは小品11曲を演奏している。
ロビソンの爽やかな音色で北欧の抒情を楽しめるのではないかと期待。
1995年の録音。
 
スサーナ・マリン(P)P曲集(RNE)
ふと見たピアノ・オムニバスの棚で、リリー・ブーランジェの未架蔵盤を発見、狂喜して購入。
「古い庭で」「明るい庭で」「行列」の3曲を演奏。
いずれも録音は比較的珍しく、特に「行列」のピアノ独奏版は、これが2つめ。
その他は、主にスペインの20世紀作品を収録している。
マドリッド生まれの独奏者による1990年の録音。
 
サーストン・ダート(Org)イギリス・オルガン音楽(J Martin Stafford)
ダートの演奏の、Stafford氏による復刻盤CDを見つけたので購入。番号からすると、これが第1号だった模様。
ダートというと英オワゾリールというイメージだったのだが、これは珍しく英EMI原盤、1957年の録音。
イギリス各地の17〜18世紀建造のオルガン4基を用いて、バードブルギボンズパーセルヘンデルらの小品22曲を収めている。
ダートのイギリス鍵盤音楽は聴き逃せないので、購入。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィルほか、ムソルグスキー;歌劇「結婚」(米OLYMPIC、LP)
これは、東京の知人が見つけてくださった1枚。今日のミニミニ・オフで受け取ったのである。
ムソルグスキーのオペラといえば、「ボリス・ゴドゥノフ」「ホヴァンシチーナ」しか知らなかったが、こういうのもあるらしい。LP1枚に収まるようだ。
しかしレイボヴィッツという人、どこでどんな仕事をしたのか、本当に見当がつかない…。(^^;;;
おそらく1950年代初めのモノラル録音と思うが、これは1970年代半ばの盤、御丁寧にQS4チャンネルにエンコードされている。

1月16日(日): 

 

ピエール・ブーレーズ(指揮)ウィーン・フィル、マーラー;交響曲第6番(DGG)
先週、第9番に感心したので、もっと向いてそうな5〜7番から1つ聴いてみた。
予想どおり、良かった。
9番同様、スコアの絵解きのように明快なバランスで、各パートが聴こえてくる。強奏のさばきも鮮やかだし、弱奏での音色の絡み合いの表出も耳を奪われる。
それでいて、それぞれの音が、ちゃんと「生きている」。両端楽章の力感も十分。
もちろんブーレーズのことなので、マーラー的な「あく」は洗い流されている。
第3楽章冒頭の主題提示など、「むせかえる」ような耽美にはほど遠い。そのかわり、楽章全体に陰影が射し込む趣があり、斉諧生的には高く評価する。
しばらく遠ざかっていたマーラーだが、また聴いてみよう。
 
イヴリー・ギトリス(Vn)マルタ・アルゲリッチ(P)フランク;Vnソナタ(日CBSソニー、LP)
Recitativo-Fantasiaという素敵なWebpageを見つけた。
ピンと来る人もいると思うが、これはフランクのヴァイオリン・ソナタの第3楽章の標題。もちろん、この曲のコーナーがある。
そこで、この演奏に熱い讃辞が捧げられており(→ここを押して)、これはこれはと、久しぶりにLPを引っぱり出して、聴いてみた。
いわゆる「熱演」ではないのだが、凄いエネルギーが込められた演奏で、アルゲリッチもタジタジとなる踏み込みを見せている。
深めのヴィブラート、ラプソディックなまでのアゴーギグ、さすがギトリスという演奏だ。
ただ、斉諧生的には、第3楽章など、もっと「沈潜」したものがほしい。
また、ひょっとしてライヴ収録なのか、ときどき無造作な音が聞こえてハッとする。
ギトリスは好きなヴァイオリニストだが、この曲に関しては少し違うかな、という気がした。独特の音色も好みを分かつだろう。
とはいえ、柔らかい音色が実に美しいアルゲリッチのピアノともども、価値の高い演奏であり、CD復活が望まれる。
LPにはRicordi原盤と表示されているので、あるいは権利関係がややこしくなっているのかもしれない。
 
ミハイル・コペルマン(Vn)アンナ・ガーフィンケル(P)フランク;Vnソナタ(Melodiya)
↑を聴いたついでと言ってはなんだが、フランクの未聴盤を何点か取り出してみた。
1989年4月のライヴ録音、当時コペルマンはボロディンQの第1ヴァイオリンだった。
ライヴにもかかわらず、音程や音色は、ほぼ完璧。美音である。
やや粘着的な傾向があり、斉諧生的には、もっと突き抜けるもの、天翔るものがほしいところだが、これはこれで立派な演奏だと思う。
ピアノは、ちょっと重いかもしれない。
 
モーリス・アッソン(Vn)クリスチャン・イヴァルディ(P)フランク;Vnソナタ(IMP)
アッソンはシェリングに師事したヴァイオリニスト、師に倣ってフランスからベネズエラに移住した。
第1楽章冒頭の主題は、ヴィブラートを控え、ポルタメントを排しており、斉諧生的には好ましい。
全体にライヴ的な勢いがあり、3種の中では最も気に入った。
とはいえ、第2楽章の主題提示でG線の響きが唸っているのは残念。また、弓を返すところでのノイズが耳につくなど、ライヴ的なマイナスも出てしまった。
 
モーリス・アラール(Fg)アニー・ダルコ(P)、サン・サーンス;Fgソナタ(仏CALLIOPE、LP)
甘く柔らかい音が素晴らしい。堪能した。
高音域のフォルテのビンと張った音色の艶やかさ、最低音域のブゥンとした響きの魅力、なるほど、バッソンに惚れ込む人がいるはずである。
ウィンナ・ホルン同様、プロ・オーケストラの世界では稀少種と化しているが、繁栄を取り戻してもらいたいものである。
 
ポーラ・ロビソン(Fl)チャールズ・ワズワース(P)プーランク;Flソナタ(仏ERATO、LP)
木質感のある清楚な音色が好もしい。ヴィブラートを控えめにしているのも斉諧生向き。
もう少し味付けが濃くても、という気もするが、これはこれで良かった。
 
エミール・ナウモフ(P)バッハ;ピアノ編曲集(SAPHIR)
冒頭のパッサカリア ハ短調BWV582で、パッサカリア主題が低音で轟然と響き続けるのに、まず圧倒された。
「思いみよ、わが魂よ」(ヨハネ受難曲)の夢見るような柔らかい響きの美しさ、有名な「主よ、人の望みの喜びよ」のコラール主題を横切る寂しさ・哀しさ、いちいちは挙げないが、どの曲も実に良かった。
ナウモフのピアノは、オルガンのようにもチェンバロのようにも響き、普通にピアニストが弾くバッハとは一線を画する。
「ピアノによるバッハ」の見事な解答だと思うのだが、どうだろう。
斉諧生はピアノの演奏技術にはまるで疎いのだが、あるいはペダルの使い方が超絶的に上手いのだろうか。
録音も鮮烈、打鍵のあとに残る響きが美しく減衰していく様子を手に取るように聴き取ることができる。
 
ピアソラ五重奏団、「AA印の悲しみ」(messidor)
久しぶりに聴き直してみた。1986年11月、ウィーン・コンツェルトハウスでのライヴである。
ピアソラ・ファンには隠れもない名演だが、やはり圧倒された。
ピアソラの長大なソロに始まり20分以上に及ぶ表題曲をはじめ、息をもつかせぬ緊張感というか、5人が火の玉になって突進するようなアンサンブルと情念の高まりは、まことに比べるものもない。
クラシック・ファンにも広く聴かれてほしい名盤である。国内盤あり。
なお、題名の「AA印」とは、ピアソラ愛用のバンドネオンがAlfred Arnold製であったことに因む。

1月15日(土): 中古音盤堂奥座敷同人による「1999年の5盤」が公開された。
 諸賢にまじって斉諧生も寄稿しておりますので、よろしければごらんください。→ここを押して

 通販業者からLPが届いた。

ジャン・クロード・カサドシュス(指揮)リル・フィル、デュティユ;交響曲第1番(仏CALLIOPE、LP)
注目しているJCCの録音であり、オーダーしたもの。
1977年11月の録音。現在は「国立リル管」と名乗っているが、前年に創立されたばかりで、名称も違っている。
ひょっとしたらリル管の初録音か何かでもあったのか、ジャケット裏面にはメンバー表が掲載されている。
驚いたのは、フルートの首席にパトリック・ガロワがいること。まだ20歳そこそこだったはずである。この後、彼はフランス国立管へ転出、更にソリストへの道を歩き出すことになる。
 
ジュリアン・ビッグ(指揮)フェニックス室内管、ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.110a&弦楽のための交響曲op.118a(英Phoenix、LP)
見たら買うことにしている曲なのでオーダーしたもの。
1983年12月のロンドン録音。デジタル。
演奏者の正体はジャケット等に記載が無く不明だが、オーケストラの名称がレーベル名と同じということは、あるいは臨時編成のものか。
1980年代前半には、この曲の録音は珍しかったと記憶するので、レパートリーの穴を狙った企画だったのかもしれない。
 
リリアナ・イサカーゼ(指揮)グルジア室内管、レスピーギ;リュートのための古代舞曲とアリア第3組曲ほか(ソMELODIA、LP)
旧ソ連の実力派、イサカーゼが地元グルジアで率いている団体との1982年録音。
彼女の指揮ならきっと優れた弦楽合奏であろうとオーダーしたもの。
カプリングは、シューマン(ヘルマン編);東洋の絵。四手ピアノのための作品(op.66)を編曲したものである。
 
リリアナ・イサカーゼ(指揮、ヴァイオリン)グルジア室内管ほか、メンデルスゾーン;弦楽のための交響曲第9番&シュニトケ;合奏協奏曲(ソMELODIA、LP)
これもイサカーゼ、1983年録音。
妙なカプリングで、A面はイサカーゼの弾き振りでメンデルスゾーンの若書き、B面がシュニトケ。こっちでは彼女はヴァイオリンを弾き、指揮はサウリウス・ソンデキス
イサカーゼは旧ソ連の現代音楽をよく弾いており、シュニトケのVnソナタの録音もあった。
シュニトケのソロは、彼女の他に、オレグ・クリサ(第2Vn)、作曲者(P)、ナタリア・マンデノヴァ(Cem)。
この曲には、クレーメルの録音(Eurodisc)もあったはず。
 
リリアナ・イサカーゼ(Vn)エドゥアルド・サナーゼ(指揮)グルジア室内管、ヴィヴァルディ;Vn協ホ短調RV.278&メンデルスゾーン;Vn協ニ短調(ソMELODIA、LP)
イサカーゼの3枚目は1980年録音。
このオイストラフ門下のヴァイオリニストは、どんなヴィヴァルディを弾くのだろうか? 興味を持ちつつオーダー。
メンデルスゾーンは若書きの方である。念の為。
 
ポール・ジェイコブス(P)ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィル、ベートーヴェン;P協第2番ほか(米OLYMPIC、LP)
レイボヴィッツの未架蔵音源を見つけたのでオーダーしたもの。
Oceanic原盤なので1950年代初めのモノラル録音と思われるが、これは1974年に再発されたもの、電気的に4chにエンコードされている(QS方式なのでステレオ再生可能)。
カプリングに特色があり、ベートーヴェン14歳の習作P協変ホ長調(1784年)を、レイボヴィッツが補作したもの。
指揮者自ら執筆したライナーノートによれば、(1)第1楽章のカデンツァを作り、(2)第2楽章の作曲者自作のカデンツァが後半を欠いているのを補い、(3)終楽章のオーケストレーションを一部修正したとのこと。
 
ジョルジ・パウク(Vn)グンナー・スターン(指揮)ロンドン・フィル、チャイコフスキー;Vn協(米Alshire、LP)
好きなヴァイオリニスト、パウクのチャイコフスキーがカタログにあったのでオーダー。
指揮者は未知の人、経歴等は不明。
おそらくオリジナルの録音ではないと思う。どこかマイナーレーベルから買い取ったものだろう。録音年代もよくわからない。
 
マリヤ・グリンベルク(P)ゲンナージィ・ロジェストヴェンスキー(指揮)モスクワ放送響、ショスタコーヴィッチ;P協奏曲第1番ほか(英EMI、LP)
もちろん原盤はMELODIA。
オーダーするときから予想していたとおり、音源は昨年TRITONレーベルから国内盤CDが出たのと同じ。
もっともCDはモノラルでオーケストラの音が頼りないものだったが、こちらはステレオで、しっかりした音。
同曲ベストを争う演奏ゆえ、ちゃんとした音のLPで聴けるのは嬉しい。
独奏トランペットはセルゲイ・ポポフ
なお、ヤコブ・フリエール(P)キリル・コンドラシン(指揮)モスクワ・フィル、ハチャトゥリアン;P協とのカプリング。
収録時間的にはハチャトゥリアンがメインなんだろうけれど(笑)。
 
ダグマル・バロゴーヴァ(P)イルジー・コウト(指揮)プラハ放送響ほか、ショスタコーヴィッチ;P協奏曲第1番ほか(チェコPANTON、LP)
ショスタコーヴィッチの第1番を、もう1枚。独奏トランペットはミロスラフ・ケイマール
さっき気付いたのだが、この演奏、一昨年、CDで買っていたのである。(爆)
その時の日録の記述は、
「ピアノの音は力強く、聴き映えがするが、切れやパワーは今一つ。第4楽章も、やや遅めのテンポだが、460〜478小節で弛めないのは評価したい。」
「弦合奏も上手くはないが、表現意欲は強烈、第1楽章53〜55小節の開放弦の音色など、よく効いている(下品なくらいだ)。」
というもの。
まあ、アナログ録音はLPで持つのが原則だし、安かったから、いいのだけど。
ボハチ(?)という人の新作P協(1974年)をカプリング、こちらはミルカ・ポコルナ(P)ウラジミール・ヴァーレク(指揮)チェコ・フィルの演奏。
 
アニー・ダルコ(P)ほか、サン・サーンス;管楽器のためのソナタ集(仏CALLIOPE、LP)
フランス管楽器の魅力が全開したディスクというので捜していたところ、LPが見つかったのでオーダーしたもの。
オーボエ;モーリス・ブールグ
バッソン;モーリス・アラール
ホルン;ジルベール・クルジエ
トロンボーン;ジャック・トゥロン
クラリネット;モーリス・ギャベ
という面々、1975年の録音である。
とりわけアラールのバッソンは「涙物の名演」(『200CD 管楽器の名曲・名盤』)とか。大いに期待。
ジャン・ユボー(P)ヴィオッティQ、フランク&ピエルネ&ヴィエルヌ;P五重奏曲集(仏ERATO、LP)
既に単発でCD化されており、フランクとヴィエルヌは架蔵済みだが、アナログはLPで持つ原則を適用してオーダーしたもの(1983年録音だがアナログの模様)。
特にヴィエルヌは、この演奏のCDを聴いて好きになったのである。
フランス近代の室内楽を好まれる向きには、ぜひ耳にされることをお薦めします。
 
リンカーン・センター室内楽協会、プーランク;管楽器のための室内楽曲集(仏ERATO、LP)
プーランクの管楽曲は、このところ好きになっているのでオーダーしてみた。
妙な名前の団体だが、公式ページがある。→ここを押して
現在のメンバーとはずいぶん異同があるが、
ピアノ;チャールズ・ワズワース
フルート(ピッコロ);ポーラ・ロビソン
オーボエ;レナード・アーナー
クラリネット;ジェルヴァーズ・ド・ペイエピーター・シメナウアー
ファゴット;ローレン・グリックマン
ホルン;ロバート・ルーチ
という顔触れ、たいていは知らない人だが、フルートのロビソンは好きな人だ。
収録曲は
六重奏曲2本のClのためのソナタClソナタCl&Fgソナタヴィラネル(Picc)P&Ob&FgトリオFlソナタHrnエレジーObソナタ
↑のP五重奏曲集と同じく1983年の録音だが、同じERATOでも、こちらはデジタル。
この演奏、CDで出ていたのであろうか? 見かけた記憶はないのだが。
 
エマニュエル・クリヴィヌ(Vn)クリスチャン・イヴァルディ(P)バルトーク;Vnソナタ第1・2番(仏L'ESCARGOT、LP)
指揮者のクリヴィヌが、まだヴァイオリニストだった、1970年代終わり頃の録音である。
優れた奏者だったそうだが、はたしてどんなだったのか、興味を惹かれてオーダーしたもの。
フランク等の録音もあるそうだが(CDは見かけたことがある)、それも聴いてみたい。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ビゼー;「アルルの女」第1・2組曲(ソMELODIA、LP)
カタログでオーダーしたら、妙なものが入荷した。
10インチ盤でジャケットがなく、レーベル面はキリル文字だけなので、よくわからないのである。
ひょっとしたら旧ソ連のオーケストラを振った未知の音源かもしれないが、西側でのスタジオ録音の焼き直しかもしれない。
とりあえず、記録しておく。

 松が取れたので、トップページを平常バージョン戻す。
 今日入手した音盤の情報を、レイボヴィッツ・ディスコグラフィに追加。


1月14日(金): 

 

ピエール・ブーレーズ(指揮)シカゴ響、マーラー;交響曲第1番(DGG)
先週、第9番を聴いて面白く思ったブーレーズのマーラーは第5〜7番を架蔵しており、唯一(現時点で)残っている第1番を購入。
昔は好きだったのだが、最近、終楽章の「くどさ」に辟易するようになってきたので、19分20秒とかなり短い時間で演奏しているこの盤が解毒剤(?)にならないか、ちょっと期待している。
 
ユージン・オーマンディ(指揮)フィラデルフィア管ほか、ショスタコーヴィッチ;交響曲第15番ほか(BMG)
High Performanceシリーズでの復刻。1972年10月の録音。
その年の1月の世界初演と初録音は作曲者の息子マキシム、これは西側での初録音という触れ込みだった。
この交響曲は出れば買うことにしている好きな曲なので、即購入。
また、オーマンディとフィラデルフィアのコンビについては、ネット上に熱心なファン・サイトも多く、ちゃんと聴き直してみたいもの。
もっとも柴田南雄先生は「オーマンディは作曲者の心の葛藤とはまったく無関係な所でハッピーな音を鳴らしている」と批判的(『レコードつれづれぐさ』音楽之友社)。
はたして実際の演奏はどのようなものか、聴いて確かめてみたい。
エミール・ギレリス(P)が、1965年1月8日にカーネギー・ホールで録音したPソナタ第2番をカプリング。
 
ヤシャ・ハイフェッツ(Vn)ほか、二重協奏曲集(BMG)
Living Stereoシリーズでの復刻。このシリーズでのハイフェッツは買い逃さないつもり。
エリック・フリードマン(Vn)マルコム・サージェント(指揮)ロンドン新響、バッハ;2つのVnのための協奏曲BWV.1043
ウィリアム・プリムローズ(Va)アイズラー・ソロモン(指揮)RCAヴィクター響、モーツァルト;協奏交響曲K.364
グレゴール・ピアティゴルスキー(Vc)アルフレッド・ウォーレンシュタイン(指揮)RCAヴィクター響、ブラームス;二重協奏曲
という構成。
 
イツァーク・パールマン(Vn)エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)ボストン響、チャイコフスキー;Vn協&シベリウス;Vn協ほか(BMG)
High Performanceシリーズでの復刻。1966〜67年、パールマンの初期録音。
最近のパールマンは衰えが目立ち、先日出たアルゲリッチとの共演盤も買っていないくらいだ。
しかし、この時期のものなら、ぜひ聴いてみたい。引き締まった瑞々しい音楽が聴けるものと期待している。
なお、彼はチャイコフスキーは5回録音しており(LD含む)、これはその2回目。
ドヴォルザーク;ロマンスをフィルアップ。
 
パスカル・モンタイエ(テオルボ)バッハ;無伴奏Vc組曲第1〜3番(Virgin)
テオルボはリュート属に分類される楽器だが、リュートとどう違うのか、どうも諸説あるようだ。→ここを押して
簡単に言えば、低音弦を付加した、より大型の楽器…ということなのだろう。
バッハのこの曲集をギター(山下和仁など)やリュート(ナイジェル・ノースなど)で弾いたCDはあったが、テオルボは初めてではないか。
好きな曲集だし、バッハの編曲ものは何となく買ってみたくなる。低音が、どう威力を発揮するのか楽しみ。
演奏者の読みには自信がない。原綴はMonteilhet。

1月10日(祝): 三連休最終日は、↓の演奏家ステンハンマルの記録の作成に費やした。予想外に手間取り、CDをじっくり聴くことができなかったのは残念…。

 作曲世家ステンハンマルに新しいページ、演奏家ステンハンマルの記録を追加。

 リンク集電網四方八通路に新着サイトを追加。


1月9日(日): 

 通販サイトCompact Disc Connectionから荷物が届いた。
 簡素なつくりのサイトで、こみいった検索はできないが、価格・レスポンス速度などでは、"CD now"などから一歩抜きん出ている感じだ。

ジェームズ・コンロン(指揮)ケルン・ギュルツェニヒ管、シュレーカー;管弦楽曲集(EMI)
オペラ「はるかなる響き」で興味を持ったシュレーカーの管弦楽曲を聴いてみたいとオーダーしたもの。
ある大きなオペラへの前奏曲(「メムノン」)
間奏曲op.8
あるドラマへの前奏曲(「烙印を押された人々」)
ロマンティック組曲
を収録。
コンロンは、デジタル初期にERATOから売り出して失敗した(笑)のが記憶に残っているが、オペラを中心に着実にキャリアを重ねているらしい。
ライナーノートによれば、ケルン市の音楽総監督を勤めているということだが、この団体はケルンのオペラハウスのオーケストラがコンサートを開くときの名前のはず。
また、"Conductor's assistant"として"Philipe de Chalendar"という名前がクレジットされている。
なお、先日、閑古鳥の部屋で、この盤の評を見つけた。→ここを押して
 
カトリーン・ショルツ(Vn、指揮)ベルリン室内管、モーツァルト;Vn協第1・2・3番(Berlin Classics)
先月購入した第4・5番をチラッと聴いた感じが良かったので、残り3曲もオーダーしたもの。録音は同時に行われている。
カデンツァは3番でフランコのものを使っているが、1・2番では自作を用いている。
これで、先日購入したパメラ・フランクとのモーツァルト対決ということになる。ちょっと楽しみ。(^o^)
 
オリジナル・ブロードウェイ・キャスト、ロジャース&ハマースタイン;『ザ・サウンド・オブ・ミュージック』(Sony Classical)
 
オリジナル・ブロードウェイ・キャスト、ロジャース&ハマースタイン;『南太平洋』(Sony Classical)
ミュージカルのディスクが当「斉諧生音盤志」に登場するのは珍しいが、実は、それぞれボーナス・トラックがお目当てなのである。
この両曲、オーケストレーションをロバート・ラッセル・ベネットが担当していた(ロジャースは「オーケストレーションは僕がやるより彼の方が上手いからネ」と言っていたとか)。
ラッセル・ベネットといえば、ガーシュウィンのオペラを管弦楽曲化した交響的絵画「ポーギーとベス」が斉諧生の愛聴曲。実はここでも、ミュージカルの旋律を管弦楽曲に編んでいるのである。
で、編曲ものの好きな斉諧生、聴いてみたくなってオーダーしたのである。
交響的絵画「ザ・サウンド・オブ・ミュージック」(演奏時間約16分)は、ウィリアム・スタインバーグ(指揮)ピッツバーグ響の演奏。
1968年の録音でMCA原盤の音源を収録したもの。(ミュージカルの方は1959年録音)
交響的脚本「南太平洋」(演奏時間約9分)は、アンドレ・コステラネッツ(指揮)フィラデルフィア管ポップスの演奏。
フィラデルフィア管にポップス・オーケストラがあったとは知らなかったし、その録音も初めて見るが、コステラネッツが振っているとは、なお驚き。1951年12月の録音。(ミュージカルの方は1949年録音)
なお、この2枚は、先だって刊行されたONTOMO MOOK『クラシック輸入盤パーフェクト・ガイド』(音楽之友社)で教えられた。
 
Monday Night Big Band、"Thanks to Thad"(TCB)
また珍しくビッグ・バンド・ジャズ。スイスのレーベルがスウェーデンで録音したものである。
少々贔屓にしているピアニスト、ヤン・ルングレンが参加しており、もともと彼のことを教えていただいたAnjaさん@サロ様と彩ちゃんの部屋のお薦めとあってオーダーしたもの。
サド・ジョーンズThad Jonesの名前は、実は今まで知らなかった。ジャズの方では有名な人らしい。
このバンドの名前も、サド・ジョーンズの楽団がヴィレッジ・ヴァンガードの月曜夜に出演したことから取っているのだろう。→ここを押して

 

オレグ・カエターニ(指揮)ロベルト・シューマン・フィル、シューマン;交響曲第1番(CALIG)
マルケヴィッチの息子、カエターニの指揮振りやいかに?と聴き始めたが、冒頭、金管と弦楽で繰り返されるファンファーレの音型で躓いてしまった。
弦合奏の響きが、どうにも変。バランスが悪く、和音の収まりがついていない。この曲はいつもここでジンと来るのに、これでは…。
全体に、副題の「春」にふさわしい晴朗な気分や、いわゆるシューマネスクな抒情には乏しく、ちょっと期待はずれ。
評価するとすれば、ティンパニの音を目立たせて、推進力のある音楽をつくっている点か。
 
アンドレ・ヴァンデルノート(指揮)ベルギー・フランス語放送(RTBF)響、ベルリオーズ;幻想交響曲(WEITBLICK)
「アンドレ・ヴァンデルノートの芸術」の第1巻。
彼の一枚看板みたいな曲なので、期待して聴き始めた。
冒頭の木管合奏や弦合奏がふっくらした柔らかい響きで、夢見るような雰囲気なのに感心。アインザッツは少々ばらつき気味だが…。
ところが第1楽章の後半になっても、盛り上がりやグロテスクな切迫感が、いっこうに現れない。そのうちそのうち、第4・5楽章ではきっと…と思っていたが、結局、最後まで、そのままだった。
木管やヴァイオリンが美しい演奏で(低弦は音量が弱い)、ユニークではあるが、はたしてどの程度の存在価値があるかというと、ちょっと首を傾げざるを得ない。
フランス国立放送管盤(米Command、LP)では、もっと覇気とエネルギーがあった。これが丁寧な復刻でCD化されないものだろうか。
(旧盤のオーケストラを、前に「パリ音楽院管」と書いたのは誤りでした。訂正してお詫びします。)
 
ピエール・ブーレーズ(指揮)シカゴ響、マーラー;交響曲第9番(DGG)
これを買ったのは、もう2年前になる。ちょっと思い立って、CDラックから取り出した。
冒頭、第2ヴァイオリンに出る、「大地の歌」の終結"ewig"のモチーフが、表情を殺した虚無的な音色になっているのが目を惹く。
ここをはじめ、全体に「マーラーくささ」というか、濃い表情付けを回避した演奏。マーラー・フリークには受け入れられないかもしれない。
しかし、さすがにシカゴ響、ソロは上手いしアンサンブルは完璧。ここまでカッチリ譜面を音にしてくれれば、それで十二分とも思う。けっこう気に入った。
ただ、もう少し弦合奏が暖かく、ボディのある音色だったら…と残念。録音の加減か斉諧生宅のオーディオ装置の限界か。
終楽章で、弦合奏だけくらいの少ない声部で進行するところで、立体感に物足りなさがあるのは、↑と同じ問題か、あるいは演奏者の問題だろうか。
 
ヤン・エキエル(P)ヴィトルド・ロヴィツキ(指揮)ワルシャワ国立フィル、シマノフスキ;交響曲第4番(MUZA)
この曲、柴田南雄先生が見事に要約されているとおり、「民謡を取り入れた新古典的な作風だがフランス印象派ふうの所も多分にあり、スラヴ音楽特有の底力もあるという秀作」。
この演奏では、印象派的な楽器の絡み合いのところが飛んでしまって、特徴的なリズムによるパワフルさのみが際立っている。ピアニストも剛直一本槍。
これはちょっと残念だった。
それにしても、この曲の理想的な録音は、なかなか現れない。ギーレンスクロヴァチェフスキあたりが手がけてくれないものだろうか。
 
ウィリアム・スタインバーグ(指揮)ピッツバーグ響、ロジャース(ベネット編);交響的絵画「ザ・サウンド・オ
アンドレ・コステラネッツ(指揮)フィラデルフィア管ポップス、ロジャース(ベネット編);交響的脚本「南太平洋」(Sony Classical)
こちらは1951年のモノラル録音だが、音的には、むしろずっと聴きやすい。
編曲のまとまりも、こっちの方が良さそうだ。
実はこの作品、映画等でも見たことがなく、曲も「バリ・ハイ」しか知らないので、あまり大きなことは言えないのだが。
 
Monday Night Big Band、"Thanks to Thad"(TCB)
ビッグ・バンドといっても、音楽的にはモダン・ジャズに近いもので、グレン・ミラーあたりとは全然違うもの。
管楽器の響きというか、音の「抜け」が良く、アメリカの団体とはまるで違うのが面白い。

1月8日(土): 

 年末年始のバッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを、別ページにまとめました。→ここを押して
 全6曲各10種を一覧できるようにしましたので、ちょっと大きく・重めになってしまいましたが、御容赦ください。
 なお、CDデータ・演奏時間・総合評を加筆しました。

 昨日入手した音盤の情報を、リリー・ブーランジェ 作品表とディスコグラフィに追加。


1月7日(金): 

 

サラ・チャン(Vn)ジェームズ・コンロン(指揮)ケルン・ギュルツェニヒ管、ゴルトマルク;Vn協ほか(EMI)
愛惜佳曲書」で取り上げたゴルトマルクは、クライスラーミルシテインが愛奏したことで知られる曲(前者の録音が残っていないのは痛惜の極み)。
かつて素晴らしいパールマン盤があり、最近ではNAXOSからも出たが、新録音が出たので購入。
サラ・チャンのCDを買うのは初めてだ。付けは最近、ツェムリンスキーシュレーカーなど、このあたりの音楽の録音を盛んに行っているコンロンなのも楽しみ。
序曲「縛られたプロメテウス」をフィルアップ。
 
J・リーバー(Va)ハンス・シュタットルマイヤー(指揮)マルタン;ヴィオラ・ダ・モーレと弦楽合奏のためのソナタ・ディ・キエザほか(Koch-schwann)
これも「愛惜佳曲書」で取り上げた曲、オーボエ・ダ・モーレとオルガンのためのソナタ・ディ・キエザの異版で、当初のオルガン・パートを1952年に弦楽合奏に編曲したもの。
この曲の新録音は珍しく、見つけたからには買わざるべからず。
CDとしては、同じ作曲家のVnと2群の弦楽小合奏のためのポリプティク弦楽合奏のためのエチュードがメインだが。
 
フィリップ・ピストル(Ten)アンヌ・クレアリィ(P)「フランシス・ジャムの詩によるフランス歌曲集」(HIR2)
CD屋の新譜コーナーで、このタイトルを見てピンときた。
リリー・ブーランジェ;歌曲集「空のひらけたところ」を収録しているに違いない、と。
手に取ってみたところ、そのとおりだったので、即購入。
上記歌曲集の全13曲のうち、第1・2・5曲を収録。
その他、ジャン・アラントマジ等が付曲したものを合わせ、計16曲を歌っている。
演奏者は未知の人だが、両方ともパリ高等音楽院出身の若手らしい。

1月5日(水): 

 今年初めての買い物。

リッカルド・ムーティ(指揮)ミラノ・スカラ座管、カセッラ;パガニーニアーナ&ブゾーニ;トゥーランドット組曲ほか(Sony Classical)
ブゾーニの曲のことは、長木誠司著『前衛音楽の漂流者たち』(筑摩書房)で読んで以来、気に懸かっていた。
ぜひ聴いてみたかったが、この盤も含めてめぼしいディスクが見当たらず、そのままになっていた。
今日立ち寄った某百貨店の新春企画の中古CD市で、この盤が格安で出ており、カプリングのカセッラに免じて、購入。
カセッラの曲は、ウィーン・フィルの委嘱作ということで、興味があったのである。
マルトゥッチ;夜想曲・ノヴェレッタ・ジーガも収録。
なお、後で気がついたのだが、ブゾーニでは、全8曲からなる組曲のうち、第4・6曲を省略している。
 
パメラ・フランク(Vn)デヴィッド・ジンマン(指揮)チューリヒ・トーンハレ管、モーツァルト;Vn協全集(ARTE NOVA)
フランクはR・ゼルキン一家(?)の実力派、先に出たブラームス;Vnソナタ全集(DECCA)やベートーヴェン;Vnソナタ全集(Music Masters)も架蔵済み。
甲高くならない、中域の充実した、暖かい美音の持ち主であり、モーツァルトにも期待したい。
カデンツァを、ヨアヒム作を用いた第5番を除いて、ジンマンが書いているのも興味深い。
フィルアップにハフナー・セレナード(抜粋)を充てているのも趣向だ。
 
ゲルハルト・タシュナー(Vn)ヴァルター・ギーゼキング(P)ほか、フランク;Vnソナタ&ブラームス;Vnソナタ第3番ほか(TAHRA)
1941年、19歳でベルリン・フィルのコンサートマスターに就任したことで有名なタシュナーの未発表録音が出たので購入。彼のCDは、前にEMIやArchiphonから協奏曲を中心にしたものがあった。
今回は戦中〜戦争直後のベルリンでのソナタ録音が中心。
バッハ;シャコンヌ(1943年6月25日)
タルティーニ;悪魔のトリル、H.ギーゼン(P)(1949年3月27日)
サラサーテ;ツィゴイネルワイゼン、ミヒャエル・ラウハイゼン(P)(1943年12月4日)
フランク;Vnソナタ、ヴァルター・ギーゼキング(P)(1947年4月10日)
ブラームス;Vnソナタ第3番、ヴァルター・ギーゼキング(P)(1947年4月10日)
ハチャトゥリアン;Vn協、アルトゥール・ローター(指揮)ベルリン放送響(1947年9月24日)
タシュナーのドイツ風のヴァイオリンによるバッハとブラームスに期待したい。もちろんフランクにも興味あり。
なお、上記のうち、サラサーテとハチャトゥリアンは、Archiphon盤にも収録されていた。
 
エミール・ナウモフ(P)バッハ;ピアノ編曲集(SAPHIR)
先月、フォーレ;レクイエムのピアノ独奏版を買ったナウモフ、今度はバッハの編曲集をリリース。
フォーレもチラッと聴いた感じでは良さそうだったし、これも店頭試聴機ではいい感じ、またバッハのアレンジ物にはもともと興味ありというわけで購入。
有名どころで
「主よ、人の望みの喜びよ」BWV147(ヘス編)
「いざ来ませ、異邦人の救い主」BWV599(ブゾーニ編)
プレリュード ロ短調BWV544(シロティ編)
自編の
パッサカリア ハ短調BWV582
プレリュード ホ短調BWV533
「思いみよ、わが魂よ」(ヨハネ受難曲)
「愛の御心から救い主は死のうとされます」(マタイ受難曲)
等、計13曲を演奏している。

1月3日(月): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、6日目。

今日は、いよいよ最後に残った第5番ハ短調BWV1011である。
調性から知れるように6曲の中で最も激情的な音楽であり、サラバンドは、カザルスが、キリストが十字架を背負わされて磔刑場へ歩まされた受難の描写のように感じる、と述懐した曲である。
 
(記事本文を別ページに独立させましたので、そちらを御覧ください。
 →ここを押して)

1月2日(日): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、5日目。

今日は、第4番変ホ長調BWV1010である。
全6曲の中で、斉諧生にとって一番苦手というか、把握しづらい曲である。下手をすると、分散和音や音階のエチュードのようになってしまう。
 
(記事本文を別ページに独立させましたので、そちらを御覧ください。
 →ここを押して)

1月1日(祝): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、4日目。

今日は、年の初めに因んで最初の曲、第1番ト長調BWV1007である。
元来、平明な曲ゆえ、演奏の差は、それほど感じなかった。コメントも少し短めに。
 
(記事本文を別ページに独立させましたので、そちらを御覧ください。
 →ここを押して)

 辰年に当たり、トップページに山本紅雲描く「兜」を掲載。


1月3日(月): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、6日目。

今日は、いよいよ最後に残った第5番ハ短調BWV1011である。
調性から知れるように6曲の中で最も激情的な音楽であり、サラバンドは、カザルスが、キリストが十字架を背負わされて磔刑場へ歩まされた受難の描写のように感じる、と述懐した曲である。
以下、例によって演奏者の生年順に。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
彼はD・ブルームとの共著『ポール・トルトゥリエ チェリストの自画像』(倉田澄子訳、音楽之友社)でこの曲集について語っているが、第5番を「ゴヤの絵のような色彩を持つ」と評し、プレリュードを「預言者が、憤りと怒りを表す神について語っている」と表現している。
冒頭〜前半部では、必要十分な強さと、一杯に漲る悲愴感に打たれる。予想に反して柔らかめに始まる後半でも、表現に不足はなく、終結では圧倒的な低音で聴く者を震撼させる。
「最も大きな苦悩の音楽」というアルマンドは毛ほどの弛みもなく、感情を伝えてやまない。この演奏を聴いて、素晴らしい音楽だと思わない人、心打たれない人は、いないのではないか。
速めのテンポで嵐が吹きすさぶクーラント、良く流れる音楽を涙で一杯にしたサラバンド、力感十分のガヴォットジーグ、いずれも見事というほかはない。
総合的に10種中ベストの演奏と評価したい。
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
堂々たる立派な演奏。人によってはトルトゥリエを措いてベストに選ぶだろう。
プレリュード前半は、まさに「悲劇的」の標題がふさわしく、終結に向けて構築される立体的な響きは見事。
アルマンドの感情は立派、クーラントも雄渾だが、立ち止まるようなフレージングは、斉諧生の感覚には合わなかった。
実にしみじみした足取りで感動的な歌を奏でるサラバンドと、一転して決然と弾きだすガヴォットの雄大さは素晴らしい。
かみしめるようなフレージングとゆったりしたテンポのジーグでは、後半の反復のクライマックス(52〜59小節)が、装飾を伴って感動的。
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
力こぶをつくらず、ハ短調の響きに自ずから語らせた趣
プレリュード冒頭、威圧感は無いが、音楽自体の色調ははっきりしており、何とも寂々とした空気が漂う。速いテンポでよく流れる後半では、声部間の音色の描き分けが印象的。
クーラントジーグでも、速いテンポとリズムの強調が、胸にぴったり来る。
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
悲しみ・苦しみよりも、演奏者の気魄・精神力に打たれる。中でもアルマンドは絶唱といえよう。
サラバンドも大きな歌だが、他の組曲の同楽章に比べると不満が残る。クーラントガヴォットでは綻びが散見されて、痛々しい。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
過不足ない好演である。
プレリュード前半は無理をせずに美しい音で再現、歯切れ良い後半とのバランスが良い。悲劇味には少し欠けるが。
アルマンドも同様の好演、リズムのキレが良く立派なクーラントジーグが気に入った。
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
この曲では「崩し」も過度にわたらず、抵抗なく聴けた。今回の録音では最も完成度が高い演奏ではないか。
プレリュード前半は、弱音で語るモノローグ。後半はやけに軽く始まるが、メリハリをつけながら、大きく歌う熱演。
アルマンドのしみじみした歌には、この全曲盤の中で、最も素直に感心できた。
クーラントは飛ぶような軽い音、リズムもスウィングしている。
サラバンドでは、ヴィブラートを非常に大きく使って、たっぷり歌った。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
この曲でも強烈な表現を見せるが、ちょっとついていきにくいものがあった。
プレリュードアルマンドでは鋭角的なフレージングでアグレッシヴに表現していくが、それでどういう音楽になるかというと、疑問が残る。
リズムを強調し、スル・ポンティチェロに近い音色を多用したガヴォットジーグは面白いといえば面白いが。
仰天したのはサラバンド
元来けっこう大胆な和声の曲なのだが、ベルガーは横の線を拒否して「点描」的に音を置いていく。すると、そこに現れる音楽は、ちょっとウェーベルンかなにかのようになるという…。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
彼にしては寂の効いた音色が一貫する演奏で、気に入った。
この新録音は映像とのコラボレーションという企画だが、第5番は坂東玉三郎の舞踊との協演、タイトルは"Struggle for Hope"
それかあらぬか、ピアニッシモで出るプレリュード前半は、人間の「絶望」を感じさせる。
後半もピアノで出て、次第にクレッシェンド、終結220小節の頭の音のアタックは肺腑を抉る。
アルマンドは誠に寂しい歌、ふと「冬の旅」を連想した。
力感あるクーラントも色は黒い。11小節の厄介な譜面は、見事に処理されており、感嘆するほかない。
少し速めのサラバンドでは、しみじみした歌が、貰い泣きを誘わんばかり。
ガヴォットは雄大さはないが力強く、リズムより歌に傾斜したジーグは、それはそれで美しい。
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
長谷川さん自身、「六曲中最も愛してやまない組曲」と言い、それゆえに自らの理想も高く演奏も難しい、と語っておられた。
11月の実演(武蔵野市民文化会館)での至高の名演に比べると、CDの演奏には残念ながら不満が残る。録音が半年ほど前になる時間の問題か、実演と録音の落差の問題か。
もっとも、プレリュードの前半は10種の中で最も素晴らしい(序奏的な部分)。
冒頭の和音の畏るべき深さ、筆舌に尽くしがたい玄妙さは、他の9人から聴くことができない。その後の音楽も、黒い悲しみに覆われ、人間の根源的な苦しみのような深淵を描く。
後半(フーガ的な部分)が、それに見合う大きさを獲得していないのは痛恨である。前半の感情を受け継いでいるのだろうが、少しべったりしてしまった。
弓を軽く使い、ヴィブラートを抑え、拍節感を曖昧にして、胸が締め付けられるような「白い哀しみ」を感じさせたサラバンドも、実演の記憶を呼びおこしてくれるが、それ以上ではない。最後の音の消え去り方は感動的だが。
もう一段の飛翔がほしいアルマンドや、更に迫力があるはずのクーラント等々、彼女ならばもっともっと…と思う。
今年5月に大阪で、この曲集の連続演奏会が予定されており、そこで更に深化した音楽が聴けることを期待している。
 
ピーター・ウィスペルウェイ(Channel Classics)(生年不詳)
1998年1月の録音。
古楽器を用い、その奏法に拠っているが、やろうとしている音楽は非常にモダンの奏者に近いように思う。乱暴に言うなら、折衷的で、彼が目指しているものが見えない演奏。
サラバンドで、旋律が下降した底の音を、別声部、あたかもオルガンのペダル音のように扱ったフレージングは彼独自のものだろうが、極めて疑問。

1月2日(日): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、5日目。

今日は、第4番変ホ長調BWV1010である。
全6曲の中で、斉諧生にとって一番苦手というか、把握しづらい曲である。下手をすると、分散和音や音階のエチュードのようになってしまう。
以下、例によって演奏者の生年順に。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
「こうでなければ!」と頷かせる、素晴らしい説得力の名演。
強弱の起伏やエコー効果に走らず、ゆっくりしたテンポで大股に歩むプレリュードが最高。この堂々たる進行の中に立ち現れる和声の動き、転調の妙にこそ、この音楽の「意味」があるのだと納得させられる。
つづくアルマンドも同様の名演。
クーラントでは13〜17小節、31〜40小節のレガートの美が光る。
サラバンドの息の長い歌は感動的。
雄渾なブーレジーグも素晴らしい。
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
変ホ長調という調性のせいか、いつもより鳴りが悪いような感じを受ける。プレリュードの流れも良くない。分散和音の底の音に向けてリタルダンドとテヌートがかかって、念を押すようなフレージングが耳に付く。
クーラントに微笑みを感じるような気がするが、旋律線がポキポキ折れるようなサラバンドには首を捻ってしまう。
ブーレは勢いがあって良いが、ジーグに力強さが見られないのは残念。無窮動ふうの楽曲把握をしているのかも。
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
プレリュードに現れる、とんでもなく長いスラーを、そのとおりに弾いているので有名な録音だが、その音楽的効果が、今ひとつ理解できない。49〜61小節を中間部的に扱っているような気もする。
クーラントで十六分音符のフレーズで走る呼吸に乗りづらく、舞曲のリズムを維持したサラバンドは、それ以上の意味に乏しい。
ブーレの疾走感は素晴らしく、快哉を叫びたい。
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
ひょっとしたら演奏者の体調がよほど悪かったのではないか…と思ったりもする。今日までの中で、一番危なっかしい。心なしか、呻き声(?)も耳につく。
もちろん、音楽の骨格は崩れていないし、表現意欲にも欠けていないが、ところどころ、音程や運弓のコントロールを失する瞬間が出現する。
サラバンドの歌は感動的だが、和音の下の音の音程・音色が不安定で、感興を損なうのがもったいない。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
この人も、この曲では音の鳴りが、あまり良くない感じがする。プレリュードは、どうもピンとこない。
それ以外の楽章では、スタッカートとスラーが、実にセンス良く使い分けられ、聴いていて楽しい。ブーレIIの5小節での装飾音も美しさの限りだ。
 
ダヴィド・ゲリンガス(Canyon)(1946年生)
音のキレが抜群に良く、とても上手い人だと思う。音色的には斉諧生の好みではないのだが…。
とりわけ、活気に溢れたアルマンドや、快調の上にも快調なブーレジーグが気に入った。
サラバンドも、たっぷりとした歌で聴かせる。
速いテンポのプレリュードが、ちょっとエチュードっぽく響くのと、クーラントが落ち着かなくなったのは残念。
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
分散和音の頭(上)の音にテヌートを十分にかけて、歌を志向したプレリュードは、これはこれで一つの行き方だろう。例のスラーでも、テヌートを挟んで歌い抜く。
思い入れたっぷりのサラバンドも、まずまず。
それ以外の楽章は疑問を残す。
アルマンドの3小節に置かれる妙な「間」や、18小節で付けるリタルダンドは、どうしても納得できない。クーラント冒頭のパウゼには絶句してしまった。
やたらにブレーキがかかるブーレにはイライラさせられるし、ジーグは凡庸。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
音価を端折ったデタシェで走り抜くプレリュードに舌を巻く。それとの対比でスラーの部分が見事な効果を挙げるのだ。
スタッカートとアクセントの効果が面白いアルマンド、音色の変化の工夫で聴かせるジーグも素晴らしい。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
弱音主体の演奏になっており、美しいといえば美しいが、やはり少し特殊なアプローチだと思う。
プレリュードでは分散和音の底の音の響きが貧弱。逆に、上の音にテヌートとヴィブラートをかける効果が目覚ましく、どことなく不安定な気分を醸し出す。44小節以下のピアニッシモも同様。
サラバンドも抑えた音で息長く歌い、切なさに満ちた緊張…といったような聴感である。
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
他の9種の演奏に増して、考え抜かれたフレージングや表情の工夫を感じる。
エチュード的な音の動きを聴かされることもあるアルマンドクーラントでは、真に音楽的なフレージングを聴くことが出来、実に楽しい。
ブーレジーグでも美しい成果を挙げている。特に後者の33小節の頭の音に付けられたディミヌエンドとテヌートは、神秘的なものさえ感じさせる。同じく42小節でクレッシェンドして豪快に締めくくるのも快感。
サラバンドも、トルトゥリエに肩を並べる、素晴らしい歌。
強弱の起伏が少し煩わしいプレリュードが残念だが、例のスラーの処理は、途中に素敵なテヌートを挟んで、誠に美しい。

1月1日(祝): 

 年末年始の特別企画、バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べ、4日目。

今日は、年の初めに因んで最初の曲、第1番ト長調BWV1007である。
元来、平明な曲ゆえ、演奏の差は、それほど感じなかった。コメントも少し短めに。
以下、例によって演奏者の生年順に。
 
ポール・トルトゥリエ(EMI)(1914年生)
ほぼ理想的な演奏
トルトゥリエの、寂の効いた音が朗々と響くのを聴いているだけで、満足した気分になってしまう。
寄せては返す大波のようなプレリュード、堂々たる確信に満ちたアルマンド等々、素晴らしいの一言に尽きる。
ちょっと無造作な音が散見されるのが惜しいが、あるいは名人の筆のかすれか。
 
ヤーノシュ・シュタルケル(BMG)(1924年生)
これまた堂々たる演奏だが、少し念を押すような、重いフレージングになるのが、斉諧生の好みに外れる。
もっともその分、サラバンドは深い音楽になっている。
えらく元気がいいメヌエットではアクセントの付け方が面白い。
 
アンナー・ビルスマ(Sony Classical)(1934年生)
ゆったりしたテンポが美しいプレリュードでは、↑の巨匠2人が使うエコー効果を排しているのが耳を惹く。終結39小節以下でテンポを落とすのも実に美しい。
アルマンドでは音価の自然な伸縮が心地よく、以下、バッハの音楽の自然な美しさを明らかにしていく楽章が続く。
最後のジーグは猛スピードで快調。
 
ラルス・ブロムベリ(Tonart)(1935年生)
トルトゥリエに似て、精神の張り、輝きを感じさせる演奏。
プレリュード22小節のニ音の強烈な光!
サラバンドの息の長い、深い歌、メヌエットIの愛おしむようなフレージングと、更にテンポを落とすメヌエットIIの味わいも良い。
 
ラルフ・カーシュバウム(Virgin)(1946年生)
音色の素直な美しさ、音程の良さでは随一。
素直に弾けばベストの演奏になったろうと思うのだが、平明な曲調を持て余したのか、少し表情付けが煩わしい。
プレリュードの主題の強弱、クーラントのスタッカートとスラーの対比の強調など。
取りたいのはメヌエットIで、アクセントを効かせて力強い美を築きあげる。
 
ヤープ・テア・リンデン(HMF)(1947年生)
1996年10月録音。
バロック・チェロによる演奏。やや重心の低い音色が心地よい。(注、↑のビルスマは、バロック・チェロではなく、通常のストラディヴァリウスにガット弦を張り、モダンの弓で演奏したもの。)
とりわけプレリュードでは、ゆったりしたテンポと相まって、何とも快い響きである。
格別の個性はないが、ガット弦の音色が美しく、聴き映えがする。特に和音の響きの美しいこと!
 
ミシャ・マイスキー(DGG)(1948年生)
昨日までの様子からある程度予想できるので、今さら驚きはしないが、やはり、かなり音楽を揺らした演奏。斉諧生的には「過度」と感じる。
とりわけプレリュード15〜16小節での極端な減速は噴飯物、メヌエットII後半で頻出するリタルダンドも煩わしい。
取るとすればサラバンドか。前半・後半とも繰り返しでは、蒼白くなるまで音を弱め、思い入れたっぷり。
 
ユリウス・ベルガー(WERGO)(1954年生)
聴いて面白く、刺激に富む点では、随一。
プレリュードのテンポはかなり速め、強弱の波を大きくつけて、音楽に表情を付す。
ガット弦を用いた開放弦の響きが美しく、最後の小節で大きくテンポを落として、ゆっくり和音を開いていくのも、溜息の出る素晴らしさ。
目の眩むような速さで駆け抜けるクーラントは実に小気味いい。
サラバンドが、余り歌わないのは残念。
メヌエットが無類に面白い。
Iでは、遅めのテンポをとり、アクセントを効かせながら、独特のフレージング。そして、あっと驚いたのは、普通の演奏とは逆に、IIの方が速くなること。実に新鮮で、これがまた美しい。
ジーグはリズミックに、跳ねたり抑えたり千変万化、鮮やかに弾ききる。
 
ヨーヨー・マ(Sony Classical)(1955年生)
優しさと慰めの音楽として完璧な演奏。
プレリュードの優しい語りかけ、最後の和音でのト音の美しさ。
アルマンドの優美さ、サラバンドの慰め、メヌエットの静かな・ひそやかな気分。
クーラントでのスタッカートとスラーを交替させる呼吸も絶妙、やはり天才!
 
長谷川陽子(VICTOR)(1970年生)
美しい音で丁寧に弾いていく中から、バッハの慈愛と美しさが自ずと立ち現れる、そういう趣がある。
もちろん、何も考えずに弾いているわけではない。
↑の名人上手連中でも流れがギクシャクしてしまうアルマンド19小節を、実にスマートに美しく処理しているのに感嘆。
また、ジーグのフレージングをシンコペーションふうにするのは、彼女独自の工夫だろうか。面白かった。

 辰年に当たり、トップページに山本紅雲描く「兜」を掲載。



平成12年1月8日(土): バッハ;無伴奏Vc組曲聴き比べを掲載。

平成11年10月24日(日): ラハティ交響楽団シベリウス・チクルス特集を掲載。

平成11年8月28日(土): 「逸匠列伝」にカール・フォン・ガラグリを掲載。

平成11年5月9日(日): 「作曲世家」にリリー・ブーランジェを追加。

平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」にステンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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