音盤狂日録


11月30日(月): 

 Music BoulevardからCDが届いた。

ホセ・ファン・ダム(Br)ジャン・クロード・カサドシュス(指揮)フランス国立リル管、ワーグナー;序曲と歌唱集(FORLANE)
フランス人指揮者のワーグナーには、結構面白い演奏がある。
パレーの演奏は有名だし(一部でだけかもしれないなぁ(^^;)、前にOrfeoから出たプレートル&ウィーン響のライヴも壮絶だった。
収録曲は
「さまよえるオランダ人」から序曲と第1幕のオランダ人のモノローグ
「タンホイザー」からヴォルフラムの歌合戦と「夕星の歌」
「マイスタージンガー」から序曲とハンス・ザックスのモノローグ
「ヴァルキューレ」からヴォータンの告別と魔の炎の音楽
 
ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲ほか(Mercury)
無伴奏Vc組曲の演奏を考える上で欠かせない、シュタルケルの旧盤。彼が編み出した第6番の「プレリュード」での画期的なフィンガリングを初めて実践した録音という。
ガンバ・ソナタ第1・2番をフィルアップ(第3番は他のバロック期のソナタとのカプリングで出ている)。
 
マックス・ファン・エグモント(Br)ジョス・ファン・インマゼール(Fp)シューベルト;歌曲集「冬の旅」(CHANNEL CLASSICS)
中古音盤堂奥座敷の試聴会の参考盤として購入。
現在、議論が主にシュタイアーのフォルテピアノについて行われており、先に追加購入したヘフリガー&デーラー盤同様、伴奏をチェックしたく、購入。
フォルテピアノといっても使用楽器が問題になるが、ここでは18世紀末頃のヴァルターのレプリカを用いている。当然、シューベルトの同時代のものではないが、ライナーノートを読むと、「敢えて」の選択らしい。
こうした楽器は19世紀に入っても使われ続け、シューベルト自身も、グラーフのような新しい楽器製作者を知ってはいたが、そうであったという。

 さっそく聴いてみた。

ホセ・ファン・ダム(Br)ジャン・クロード・カサドシュス(指揮)フランス国立リル管、ワーグナー;序曲「さまよえるオランダ人」・「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(FORLANE)
横の線の絡み合いが、よく表出された演奏。音の出し方がきわめてクリアなのである。ドイツのオーケストラのワーグナーとは、全く違っている。
しかし、純フランス風というわけではない。管楽器からヴィブラートは排除されているし、音色もあまりフランスのオーケストラらしくない。なかなかよく「ハモった」響きで、好感が持てる。
ただ、音の重心が高く、リズムにも粘っこさ、腰の重さがまったくないため、魔力的な陶酔感からは縁遠くなっている。
すっきりした快演といえよう。もう少しエネルギー感(ポール・パレーのような)が欲しかったが。

11月29日(日): 

 先月も東京で大量購入したので、今月は控えておこうと思ったのだが、実際にLP、CDの顔を見ると、むげにできなくなってしまうのが音盤狂の性(さが)か…。

 
ギュンター・ヴァント(指揮)ケルン・ギュルツェニヒ管、ブルックナー;交響曲第8番(独BASF、LP)
ヴァントの同曲初録音に当たる盤。録音年代等は記載がないが、マルPは1975年なので、その頃のものと思われる。
ヴァントのブルックナー、しかも第8番とあれば見逃すわけにもいかず、購入。
この盤のことは、情報としては知っていたが、現物にお目にかかるのは初めて。BASFレーベルは活動期間が短く、ACANTA等から再発されたものもあるが、多くは廃盤のままになっており、そのためだろう。
ギュルツェニヒ管は、ケルン歌劇場のオーケストラがコンサートを行うときの名称、ヴァントはモノラル期からこの団体との関係が深く、AccordやEMIからCDも出ていた。
 
キリル・コンドラシン(指揮)モスクワ・フィルほか、ショスタコーヴィッチ;交響曲第13番「バビ・ヤール」(英EMI、LP)
ショスタコーヴィッチの15曲ある交響曲のうち、ベストはどれか、という問題がクラシック井戸端会議で議論されたことがあったが、その有力候補、13番は、まだあまり聴いたことがないので、一度、ちゃんと聴いてみようと購入。
もちろん原盤は露メロディア。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・フィル、ベートーヴェン;「ウェリントンの勝利」・序曲「シュテファン王」ほか(米OLYMPIC、LP)
レイボヴィッツの未架蔵音源を見つけたので購入。
もともとはモノラルのものを、御丁寧にもSQ4チャンネル・エンコードした盤。
好みではないが、やむを得ない。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ロンドン・フィル、オッフェンバック(ロザンタール編);「パリの歓び」(英SAGA、LP)
音源としては既に米PARLIAMENT盤で持っているが、あまりにも音質・盤質がお粗末。
英SAGA盤を見つけ、試聴してみたところ良さそうなので購入。
 
アーヴェ・テレフセン(Vn)スティグ・ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響ほか、ステンハンマル;2つのセンチメンタル・ロマンスほか(英crd、LP)
原盤は瑞CAPRICE、CDでは架蔵しているが、元来アナログの録音はLPで聴くことを原則にしており、また廉価だったので、購入。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)フィリップ・ミュラー(Vc)ジャック・ルヴィエ(P)ブラームス;P三重奏曲第1番(仏SARASTRO、LP)
カントロフは好きなヴァイオリニストで集めることにしているので購入。
珍しいことに45回転盤。ひょっとしてERATO音源かと疑ったが、ライナー等を見た範囲では、その形跡がないので、おそらく、このレーベルのオリジナルだろう。
1977年の録音、あるいはカントロフがERATOを離れてDENONに録音し出す端境期のものであろうか。
いずれにせよ、カントロフの美音を45回転盤の高音質で楽しんでみたい。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)ロラン・スークス(P)フォーレ;Vcソナタ第1・2番・エレジー(洪HUNGAROTON、LP)
先月、仏BAM盤で購入したところ、その次に行った店でオリジナルのHUNGAROTON盤をみつけ、地団駄を踏んだことは、当時の「日録」にも書いたとおり。
BAM盤の音に、少しベールがかかったような柔らさを感じることもあり、今回、HUNGAROTON盤を購入したもの。もちろん、先月と同じ店である。
 
イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)コンセール・ラムルー管ほか、モーツァルト;「戴冠式ミサ」・Fg協(独DGG、LP)
これは音源としてはCDや廉価盤で持っているが、初期のステレオLPが安めの値で出ていたので購入。
特にFg協は、フランス式の楽器(バッソン)の名手モーリス・アラールの独奏、その独特の音色を堪能したい。
ミサ曲の方は、マリア・シュターダー、エルンスト・ヘフリガーといった、この時期のDGGでお馴染みの独唱者にエリザベト・ブラッスール合唱団。
 
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)フィンランド室内管、ハイドン;交響曲第92・99番(ONDINE)
前からよく見かけていたディスクだが、ベルグルンドがヨーロッパ室内管を振ったシベリウスが良かったことから、同じ室内管編成でハイドンではどうだろうと思い、購入。
録音は1992年、オーケストラの創設が1990年。草創の意気盛んなアンサンブルを期待したいところだが、さてどうだろう?
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ウィーン国立歌劇場管、ベルリオーズ;幻想交響曲ほか(UNIVERSAL)
これは長らく捜していた盤。やっとやっと見つけたので驚喜して購入。
ウェーバー(ベルリオーズ編);舞踏への勧誘
チャイコフスキー;ワルツ(弦楽セレナードより)
シベリウス;悲しきワルツ
をカプリング。
WESTMINSTER盤LPで持ってはいるが、盤質・音質はあまり良いものではないので、良質な復刻を期待したい。
また、LPでは局所強調型になっていた録音バランスがCD化でどうなっているのか、大いに興味あり。
 
ハンス・ロスバウト(指揮)ベルリン放送響ほか、マーラー;交響曲第7番ほか(VOX)
ロスバウトの同曲には手兵南西ドイツ放送響を振ったWERGO盤(1957年)があるが、こちらが正規録音(1952年)。
ロスバウトは揃えたいので購入。
2枚組で、オットー・クレンペラー(指揮)ウィーン響、ブルックナー;交響曲第4番(1951年)をカプリング。
 
アレクサンダー・ギブソン(指揮)ロンドン祝祭管ほか、「演奏旅行」(CHESKY)
グリーグに始まって、スッペ、ウェーバーからドヴォルザーク、ワーグナーまで10曲を収めている。
おそらくリーダーズ・ダイジェスト社のホームミュージック集みたいな企画で録音された小曲を集成したものだろう。オーケストラも標記のほか「新交響楽団」とか変名ないし臨時編成っぽい。
シベリウス;フィンランディア・トゥオネラの白鳥が含まれているのに気がついたので購入。シベリウスの演奏論からギブソンは外せない。
この間、第1番のLPを入手した折りに「ギブソンのシベリウスは全部揃った」と書いたが、早とちりだったわけである。お恥ずかしい次第だ。
 
エフレム・クルツ(指揮)フィルハーモニア管ほか、「有名行進曲集」(EMI)
前にTESTAMENT盤で聴いたショスタコーヴィッチ以来気になっているクルツ、ポピュラーなマーチで、どんな芸を聴かせてくれるか、ちょっと期待して購入。
「アイーダ」の凱旋行進曲、ベルリオーズのラコッツィ行進曲、「星条旗よ永遠なれ」、ラデッキー行進曲、チャイコフスキーのスラヴ行進曲等、11曲を演奏している。
ポール・シュトラウス(指揮)リェージュ管による「威風堂々」等6曲をフィルアップ。
 
チャールズ・グローヴズ(指揮)フィルハーモニア管、「チャールズ卿の音楽宝石箱第2巻」(DENON)
前に第1巻を国内盤の中古で買い、なかなか良かったので第2巻を捜していたのだが、ようやく逆輸入盤が見つかったので購入。
ムリョ18曲を収めており、モーツァルト;ドイツ舞曲からルロイ・アンダーソン;トランペット吹きの休日まで、幅広い。
センスのいい演奏を期待したいところだ。
 
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)ジャン・ジャック・カントロフ(指揮)パリ・オーケストラ・アンサンブルほか、サン・サーンス;管弦楽曲集(EMI)
サン・サーンスの珍しい曲を集めたCDのようである。
序曲「スパルタクス」などという作品番号のついていない曲がタイトルになっているが、ヴァイオリン、ホルン、ハープを独奏にたてた演奏会用小品が中心。
フランスの若手ヴァイオリニストで期待しているオリヴィエ・シャルリエが聴けるので購入。
ラドヴァン・ヴラトコヴィッチ(Hrn)、マリエル・ノールマン(Hp)が参加。
 
アンシ・カルトゥッネン(Vc)エサ・ペッカ・サロネン(指揮)ロンドン・シンフォニエッタ、ヒンデミット;室内音楽第3番ほか(FINLANDIA)
サロネンはいろいろ買い集めているが、長く気になっていたヒンデミットを含む盤が、どうやら再プレスされたらしく、棚に並んでいたので購入。
録音は1990年、標記のヒンデミットのほかにメリカント、リンドベリ、ツィンマーマンの曲を収める。
ジャケットが「精神分析を受けるドナルド・ダック」という絵なのが面白い。
 
トッシー・スピヴァコフスキー(Vn)モーリス・アブラヴァネル(指揮)ユタ響、ストラヴィンスキー;Vn協ほか(VANGUARD)
スピヴァコフスキーも見逃せないヴァイオリニスト。シベリウスやチャイコフスキーの録音が知られているが、現代音楽を得意にしていた人である。
ロバートソンという人のVn協奏曲とのカプリングで1枚になっている盤を初めて見つけたので購入。
なお、ストラヴィンスキーは最近リマスタリング盤が出ているが、カプリングが変わってしまっている。
 
ニコラス・クレオバリー(指揮)ブリテン・シンフォニアほか、R・シュトラウス;ClとFgのための二重協ほか(EMI)
この、殊の外美しい曲は、見つければ買うことにしているので購入。
ソロはジョイ・ファラール(Cl)、ジュリー・アンドリュース(Fg)という人だが、詳細はライナーノートにも記載がない。
なおこのディスク、本来は、デヴィッド・パイアットが吹くホルン協第1・2番がメインの盤。
更に管楽器のためのセレナードop.7をフィルアップ。
 
ゲーデ・トリオ、バッハ(シトコヴェツキー編);ゴルトベルク変奏曲(TACET)
ウィーン・フィルのコンサートマスターの一人、ダニエル・ゲーデ率いる弦楽トリオによる録音、ようやく店頭に並んだので購入。
シトコヴェツキーがグレン・グールドへのオマージュとして編んだ弦楽三重奏版には自演のOrfeo盤もあったが、最近店頭では見かけなくなっている(その後、弦楽合奏盤も作っているが)。
好録音のTACETレーベル、音的にも期待したい。2枚組だが1枚程度の値段になっているのも有り難い。
 
ジャン・ジャック・カントロフ(Vn)アルト・ノラス(Vc)ほか、シューベルト;八重奏曲(LYRINX)
昨日聴いたアルト・ノラス、彼の録音はことごとく架蔵しているつもりだったが、未知の音源を見つけてしまった。
けっこうあちこちで活躍している人だけに、油断も隙もない。(^^;;;
1990年のプラド音楽祭での録音で、標記のほか、リン・ブレイクスリー(Vn)、ブルーノ・パスキエ(Va)、マルク・マーダー(Cb)、ミシェル・レシティッチ(Cl)、ラドヴァン・ヴラトコヴィッチ(Hrn)、アルモーリー・ヴァレーズ(Fg)といった演奏者。
なんでも、この年のプラドに、ノラスは長谷川陽子さんを帯同して、恩師トルトゥリエを訪ねたらしい。
ということは、もしチェロが2台必要な曲だったら、長谷川さんの演奏が聴けたかも。(^^)
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)イシュトヴァン・ラントシュ(P)ほか、リスト;室内楽曲集(HUNGAROTON)
ペレーニの未架蔵盤を求めて、HUNGAROTON盤をチェックしていたら、わずか1曲(5分半ほど)ながら、未知の録音があったので購入。
「チェロ、ピアノ、ハープとハルモニウムのためのエレジー」というもの、1970年代中葉の録音である。
有名な「忘れられたゴンドラ」のチェロ版も収録されているのだが、こっちは別なチェリストなのが残念。
 
スティーヴン・イッサーリス(Vc)ピーター・エヴァンス(P)ブラームス;Vcソナタ集(hyperion)
イッサーリスは最近、BMGで活躍中だが、斉諧生的にはhyperionから登場したときの清新な印象が忘れられない。
ところが、ブラームスの録音があるのを忘失しており、先だってAYAさんに御教示いただいた。
そのディスクを見つけたので購入。
1984年の録音である。
 
アミ・フラマー(Vn)ジャン・クロード・ペネティエ(P)フランク;Vnソナタ&ドビュッシー;Vnソナタほか(disques concord)
フラマーは未知のヴァイオリニストだが、パスキエ兄弟らと素敵なショーソン等を録音していたペネティエが組んでいるので、期待できるのではないかと思い、購入。
曲目的にも、標記のソナタとシマノフスキ;「神話」と趣味の良いところを示しており、一聴の価値を見込んだ。
 
タスミン・リトル(Vn)ピアース・レイン(P)ラヴェル;Vnソナタ&プーランク;Vnソナタ&ドビュッシー;Vnソナタほか(EMI)
リトル嬢のディスクがだんだん増えてくると、なぜだか、全部集めないといけないような気になってきた。(^^;;;
どうやら新編集の再発ものらしく、別録音のラヴェル;ツィガーヌをフィルアップ。
 
ヴェラ・ベス(Vn)アンナー・ビルスマ(Vc)ほか、ラヴェル;室内楽曲集(BAYER)
以前はビルスマの録音は全部買うつもりだったが、あまりに次々と出てくるので断念した。Telefunkenのアナログ期のものも含めれば、相当な量になってしまう。
ただ、チェロの主要なレパートリーの録音は、やはり揃えておきたい。何といっても、元々はコンセルトヘボウ管の首席奏者も勤めた名手である。
ヴァイオリンとチェロのためのソナタ、ピアノ三重奏曲のほか、ベルナール・クリュイセン(Br)による『マダガスカルの歌』・『博物誌』が収められている。
収録曲の中では、とりわけ、先日実演を聴いたときに欲求不満になったVnとVcのためのソナタに期待したい。
1986〜87年の録音、ライナーノートの写真では、どうやらエンドピンのついている(^^;チェロを使っているようだ。
 
ジャック・ファヴリエ(P)ミシェル・ポルタル(Cl)ほか、プーランク;室内楽曲集(EMI)
中古音盤堂奥座敷同人にはプーランクのファンが多く、中でも最右翼の野々村さんが推奨しておられたのが、この2枚組。
ポルタルのほかミシェル・ドボ(Fl)、モーリス・ブールグ(Ob)、アラン・シヴィル(Hrn)らによる管楽器ものもさることながら、イェフディ・メニューインのVnソナタ、ピエール・フルニエのVcソナタにも期待したい。
 
ヴァッサ・プシホダ(Vn)(Pearl)
プシホダの未架蔵盤を購入。
1922年、アコースティック録音期から1939年まで、ポリドールに録音したSPの復刻盤である。
10曲を収めているが、中ではヴィターリ;シャコンヌ、タルティーニ;悪魔のトリルなどに妖気迫る凄演を期待したい。
そのほか、パガニーニ;Vn協第1番第1楽章、サラサーテ;ツィゴイネルワイゼン等を収録。
 
ヘルマン・マックス(指揮)ライン聖歌隊ほか、モンテヴェルディ;聖母マリアの夕べの祈り(通奏低音版)(EMI)
この曲は大好きで、見つければ買っているのだが、今日は通奏低音版を購入。
斉諧生的に嬉しいのは、最後の「マニフィカト」は6声の通奏低音版の方を好むから。
昨夏にも、京都の合唱団が、この版を取り上げたので実演に出かけたものだ。
もっとも、冒頭のトッカータを始め器楽曲は収められておらず、特にソナタの代わりにフレスコバルディ;「サンタ・マリア」が挿入されているのが目を惹く。
そうしたこともあって、CD1枚に納まっている。
 
ロン・カーター(Cb)リシャール・ガリアーノ(Accord)「パナマンハッタン」(DREYFUS)
ちょっと贔屓にしているアコーディオン奏者、ガリアーノの未架蔵盤があったので購入。
新譜ではなく、1990年の録音。
この人は、なぜかデュオの録音が多い。
近くはミシェル・ポルタル(Cl)との『ブロウ・アップ』、また出会いの1枚になったディスクもジャン・シャルル・カポン(Vc)との『セーヌに浮かぶブルース』だった。

11月28日(土): 東京へ行く。
 長谷川陽子さんとアルト・ノラス師匠のデュオ・コンサートを聴くため。

   ノラス師匠は前から好きなチェリストなので、一度、ライヴで聴いてみたかった。

 そもそも長谷川さんに注目したのも、留学先にノラス師匠のところを選ばれたということからだったのだ。
 来日されることは、昨年、長谷川さんからお伺いしていたのだが、関西方面での演奏会は予定されていないとのことで諦め気味だったのだが、この演奏会が土曜日でもあり、年に1回くらい東京へ行って、ついでに買物でもしてくればよかろうと、チケットを確保したもの。
 自治体がらみのせいか、非常に安価だったこともあり、チケットはすぐに売り切れたらしい。
 武蔵野市民文化会館というのは、初めて行くところで、地図の上では三鷹駅から「文化会館通り」をまっすぐ行ったところなのだが、この道、名前に似合わず、ただの薄暗い裏道だった。(^^;
 こりゃホールも期待できないかなぁ、と思いつつ、入ってみると、クロークも何もない。ロビーも狭くて貧相、やっぱり駄目だったかと思ってドアの中へ足を踏み入れると、なんのなんの、500席程度のホールなのだが、天井が大ホール並に高く、舞台にはパイプオルガン。音響的にも優れていた。
曲目は
ヘンデル:2台のVcのためのソナタト短調op.2-8(P:植田克己)
トルトゥリエ:2台のチェロのためのデュオ
カサド:無伴奏チェロ組曲(長谷川)
ペンデレツキ:無伴奏チェロのためのディヴェルティメント(ノラス)
デ・ジャルディーニ:2台のVcのための3つの小品
ポッパー:2台のVcのための組曲op.16
1曲目のヘンデルは、先月4日にジャン・ワンとの演奏を聴いている。
長谷川さんが弾き始めた瞬間に、えもいえぬ情感が匂い立つのは先月も同様だったが、驚いたのは、ノラス師匠が応答したその音色の艶っぽさ!
これまで、新譜試聴録等でも彼の音色を「塩辛い」等々と表現してきたし、たしかにそういう音も持っている人なのだが、CDに聴くよりはるかに音色の幅が広い。
むしろ、並べて聴くと、長谷川さんの音の方が硬めの色合いである。
全曲ただ聴き惚れるのみ。一瞬も弛緩することのない、まことに充実した音楽的時空であった。
ワン氏には申し訳ないが、共演者が変わると、こうも曲が違って聴こえるものかと、つくづく驚嘆した次第。
2曲目の作曲者トルトゥリエは、ノラス師匠が師事したその人。トルトゥリエ夫人もチェリストだった関係で、2台のチェロのための作品が多い。
先日、長谷川さんが「送ってきたのを見たら、いきなりこんなんで(と左手を忙しそうに上下される)、もう、顔を見たらすぐ文句を言ってやろうと思って…」と苦笑しておられた。
もっとも、いざ始まると、平気な顔でスイスイ弾いておられる御様子と拝察した。
開曲冒頭は非常にメロディアス、少々東洋的な香りもしたが、あるいはヘブライ由来の旋律か。
2台のチェロの丁々発止のやりとり等、非常に楽しめる曲だった。
3曲目、長谷川さんの独奏のカサドは、今年集中的に取り組んでおられる曲で、先月聴いており、CDもリリースされたばかり。
弾きこんでこられただけあって、曲をさらに手の内に入れられた感じ、ただただ陶然と聴き惚れるのみであった。
休憩時間に“郷秋”@「陽子の部屋」管理人さんが「いやぁ、背中がゾクゾクしたねぇ。それに、ラッサンの時の右手のしなやかさ! 凄いなぁ」とおっしゃっていた。
斉諧生はチェロの技術的なことには通じていないのだが、きっと、そうなのだろうと思う。
第3楽章で1、2カ所、ソレとわかる傷はあったが、それ以上に音楽の説得力の強さに圧倒されてしまったのだった。
休憩をはさんでノラス師匠のペンデレツキ。
初めて聴く曲で、「ディヴェルティメント」と言いつつ、緊張感と実験的な響きに満ちた曲であったが、師匠の迫力に満場が圧倒され、緊張感は一瞬も途切れることがなかった。
第3楽章で弱音器を装着されたのだが、「ああ、あれを外して終楽章に入るのかな」と思っていたら、そこで終わってしまったので驚いた。(^^;;;
もっとも、弱音器をつけても、それはそれで見事に美しい音色に息を呑んだのである。
ジャルディーニ、ポッパーとも、やはり初めて聴く曲。
不慣れなせいか、お二人の音とやりとりを楽しませていただくにとどまった。
アンコールにはクープランの小品を2曲。
また、終演後には、お二人のサインも戴くことができた。
それにしても、「この師にしてこの弟子あり」、チェロの魅力を堪能した演奏会となった。
VICTORでもFINLANDIAでもいいから、このデュオで録音してくれないものか。
来週の土曜12月5日は、紀尾井ホールで長谷川さんのリサイタル。行ってまた、あのカサドや、きっと素晴らしいに違いないR・シュトラウスを聴きたくなってしまった…。

 吉祥寺、三鷹界隈の音盤屋を廻ってみる。

ハンス・ロスバウト(指揮)バイエルン放送響、モーツァルト;交響曲第39・41番(米Mercury、LP)
今年の夏以降、蒐集につとめているロスバウト。ハイドンに感心したので、モーツァルトの交響曲録音は、ぜひ、聴きたいところ。
ディスコグラフィには掲載されているものの、LP屋や通販業者のカタログでも見たことのない盤だったが、幸い、知人の世話で、アメリカの業者から入手することができた。
MercuryのMG10000番台というのはよくわからないシリーズで、Mercuryのオリジナルなのか、よそから音源を買ってきたものなのか…? エールリンク&ストックホルム放送響のシベリウス交響曲全集なんかもそうなのだが。
 
ルイ・フーレスティエ(指揮)チェント・ソリ管ほか、ドビュッシー;交響詩「海」・「夜想曲」(日コロンビア、LP)
往年のフランスの名指揮者のドビュッシー、アンゲルブレシュトやパレー、モントゥーらとの比較などもしてみたい。
もともと廉価盤だが、中古屋の投げ売り価格で購入。
 
ティボール・ヴァルガ(指揮&Vn)ティボール・ヴァルガ音楽祭管ほか、アルビノーニ;アダージョほか(瑞ティボール・ヴァルガ音楽祭協会、LP)
商業録音が少ないので目立たない存在だが、ヴァルガは、ゴールトベルクらと同様、見逃すことのできないヴァイオリニスト。
スイスの街シオンで開かれている彼の名を冠した音楽祭で録音されたLPが、細々と出回ってくるのを買い集めている。
これは1984年の音楽祭で録音されたもので、表記の曲のほか、レスピーギやドニゼッティ、ロッシーニの弦楽合奏曲を収めている。
恐るべきは、このレコードに「No17」とあり、1967年のNo1からの一覧表がついていること。
斉諧生架蔵品は僅かに数点、これで、残りを捜すことが義務づけられたようなもの…(^^;;;
 
エミー・ヴェルヘイ(Vn)ハンス・フォンク(指揮)オランダ放送フィル、シベリウス;Vn協&パガニーニ;Vn協第4番(蘭EMI、LP)
時々マイナーレーベルのCDに、その名前を見かけるヴァイオリニストだが、1970年代半ばと思われるシベリウスはEMIのもの。
少々物珍しさもあって、購入してみた。
 
舘野泉(P)「ロマンティック・コンサート」(日東芝、LP)
舘野さんの東芝での録音は、ぜひ集めてみたいと思っている。
これは小品13曲のアンソロジーだが、スーク;愛の歌からシンディング;春のささやきまで、東欧・北欧の比較的知られていない佳曲を収めている。
斉諧生的にはハンニカイネン(作曲家の方)、シベリウスといった北欧勢の曲が楽しみ。
1977年、荒川区民会館ホールでの録音。
 
オトテール・アンサンブル、「18世紀フランスの室内楽」(日ポリドール、LP)
国内製作盤だが、アルヒーフ・レーベルとして出されている。
メンバーは、花岡和生(Bfl)有田正広(Fl)本間正史(Ob)有田千代子(Cem)中野哲也(Gamb)といった、現在活躍中の面々。
録音は1979年4月、皆、30歳前後の頃で、ジャケット裏の写真が若い! (^^)
収録曲はドルネル、モンテクレール、F・クープランの組曲(コンセール)等。
実はCD化されており、架蔵しているのだが、アナログ録音のものは、なるべくオリジナルのLPで聴きたいので、あえて購入。
 
ハンス・ロスバウト(指揮)南西ドイツ放送響ほか、ブルックナー;交響曲第3番ほか(ARKADIA)
以下はCD。
ロスバウトのブルックナーは第7番に正規録音があり、LP期にはTurnabout、今はVOXからCD化されている。
ARKADIAレーベルに第3番・第5番があることは聞いていたが、今となっては入手困難かと諦めかけていたところ、中古屋のバーゲン棚に発見、驚喜して購入。
斉諧生は海賊盤やCD−Rには手を出さないことに決めているのだが、これはやむを得ないものとして例外扱いとする。(^^;
ロスバウトの晩年、1960年12月の録音。
なお、デニス・ブレイン(Hrn)モーツァルト;第2協奏曲(1953年5月録音)をカプリング。
 
ブライデン・トムソン(指揮)ロンドン響ほか、ヴォーン・ウィリアムズ;海の交響曲(第1番)(CHANDOS)
ブライデン・トムソン(指揮)ロンドン響ほか、ヴォーン・ウィリアムズ;交響曲第9番・P協(CHANDOS)
今は亡き名指揮者トムソンの遺産、RVW全集を中古又はバーゲンで揃えるプロジェクトが大きく進展した。
これで残すは第8番のみ。
なお、ピアノ協奏曲の独奏は、ハワード・シェリー。
しかし、次は、同じくトムソンの貴重な遺産、バックスの交響曲全集を揃えるプロジェクトが開始される…そんな予感がある。(^^;;;
 
イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管ほか、バルトーク;管弦楽のための協奏曲・交響詩「コッシュート」ほか(Philips)
必ず買うことにしているフィッシャー&ブダペシュト祝祭管のバルトーク、新譜が並んでいたので購入。
待望の「オケコン」、決定盤的名演を期待したいところだ。
初期の交響詩「コッシュート」のほか、「3つの農村の情景」という女声合唱曲(室内管弦楽伴奏)をカプリング。
 
ディミトリ・ミトロプーロス(指揮)ニューヨーク・フィルほか、「伝説の名演集」(Sony Classical)
ずいぶん前から捜していたのだが、一度も見たことのなかったCDを中古屋で発見、驚喜して購入。
数年前にフランスのSony Classicalが出したもので、
ベルリオーズとプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」(いずれも抜粋)
という有名な録音のほか、
ベートーヴェン;序曲「レオノーレ」第3番(これのみミネアポリス管)
ベルリオーズ;歌曲集「夏の夜」(エレノア・スティーバー(Sop))
サン・サーンス;交響詩「フェアトン」
チャイコフスキー;イタリア奇想曲
デュカス;「魔法使いの弟子」 といった珍しい音源を収録している。
 
ヨーゼフ・スヴェンセン(Vn)ジェフリー・ケイハン(P)シューベルト;幻想曲・Vnソナタ(BMG)
どこに行ったのかなぁ、スヴェンセンは。
日系2世か3世で、一時期、BMGから次々と新譜が出たものだが…。
これは好きなシューベルト;幻想曲の蒐集の一環として購入。
 
ポール・モーレイン(Vc)サラ・モーリー(P)、ショスタコーヴィッチ;Vcソナタ&シュニトケ;Vcソナタ&プロコフィエフ;Vcソナタ(UNITED)
スヴェンセン盤同様、好きなショスタコーヴィッチのソナタが入っているので、ちょっと聴いてみようと購入したもの。
独奏者は全く未知の人だが、ロイヤル・リヴァプール・フィルの首席奏者(当時)らしい。先ほど、オーケストラのWebpageをチェックしたところ、この人の名前はなく、チェロのトップは空席になっていた。
 
クリスチャン・テツラフ(Vn)シュテファン・リトヴィン(P)シュナーベル;Vnソナタ・無伴奏Vnソナタ(ARTE NOVA)
御贔屓のヴァイオリニスト、テツラフの買いそびれていた盤を見かけたので、買ってしまった。
作曲者はもちろん高名なピアニスト、どんな音楽なのか興味津々。

11月26日(木): 

 京都の秋音楽祭の一環、京都インターナショナル・ミュージック・セッション「メシアン」の室内楽コンサート「世の終わりのための」に行く。
 会場は、京都コンサートホール・小ホール「アンサンブルホールムラタ」、大ホールには度々入っているが、こちらは初めての見参。
 300人ほどの小さな器だが、雰囲気は悪くない。ロビーが大ホール同様少々無機質だが。
 音の方は、どうもデッド傾向で、弦楽器など全然音が伸びない。ピアノ・リサイタルを想定して建てられたそうだが、さもありなん。

曲目は
ブラームス:Cl三重奏曲
ラヴェル:VnとVcのためのソナタ
メシアン:「世の終わりのための四重奏曲」
メシアン1曲と思いこんでいたが、結構な分量の、しかし地味な(^^;前菜付きだった。
出演は
澤和樹(Vn)
毛利伯郎(Vc)
横川晴児(Cl)
ピエール・ロラン・エマール(P)
京都市響の首席Cl奏者、サルヴァドーレ・ラヘニも客席に来ていた。
仕事帰りの上に体調も思わしくなく、1・2曲目では、少々ウトウトしてしまったことは正直に申し上げておきたい。最近は、無理せず身を委ねて、後半に集中することにしているのだ。
1曲目では、もともとフランス式のクラリネットで演奏されるブラームスやモーツァルトを好まない上に、冒頭に主題を提示するチェロの音に魅力を感じられなかった。
2曲目でも、ヴァイオリン・チェロとも堅実な演奏で、音楽の作りはよくわかるものの、音色的には全く魅力に乏しく、楽しめる演奏ではなかった。
さて、初めて実演を聴くメシアン
総じてピアノとクラリネットは良かったが、チェロとヴァイオリンが物足りなかった。
特に満場(といっても六分程度の入りだったが)に息を呑ませたのは、第3楽章でのクラリネット・ソロ。
長い音符での緊張感の持続、ピアニッシモの美しさ、クレッシェンドの気迫、いずれも見事であった。
あと、少し音色的な魅力があれば、ノックアウトされるところだった。
これに匹敵する(筈)なのが、第5楽章チェロ。いや、気張っておられたのはよくわかった(前から4列目だったもので)。
ところが、音色のパレットの幅が狭くて、聴き手の陶酔を誘うには不足があり、また右手の技術も最上とはいえないようで、長い音符が持ちこたえられないのである。
また、第8楽章ヴァイオリンも同様で、弓を返すたびに幻滅させられた。
ピアノは、曲の書き方からして、ほとんど目立たないというか、派手に鍵盤を掻き回すことなどは一切ない。
しかし、終始落ち着いて音色をコントロールし、全体のアンサンブルを統御していたのは間違いない。
とりわけ第8楽章では、延々と鐘のように和音を奏しているのだが、その音色の美しさ、音彩の移ろいの見事さには圧倒された。
しかし、この曲を聴いて、そこそこ楽しめたのは初めて。耳が慣れてきたのか、あるいは演奏家の力か。
なお、当然のことながら、アンコールは無し。

 今日の演奏会を演奏会出没表に追加。


11月25日(水): 

 

フリッツ・ライナー(指揮)ピッツバーグ響、ガーシュウィン(ラッセル・ベネット編);交響的絵画「ポーギーとベス」ほか(Sony Classical)
"MASTERWORKS HERITAGE"シリーズの新譜、タイトルは"FROM GERSHWIN'S TIME"という2枚組、もちろん生誕100年記念盤。
1929年から1945年までのSP録音の復刻、1枚目は歌曲中心で、斉諧生が知っている名前はアル・ジョルスンだけ(^^;
2枚目にはガーシュウィン自身のピアノ録音(ピアノロールじゃなくてSP復刻)6曲ほどと、ホワイトマン楽団;「へ調の協奏曲」等が収録されている。
斉諧生的に一番重要なのは、2枚目の最後に録音されている標記の演奏。
もともと好きな「ポーギーとベス」のラッセル・ベネット版だが、実はこの編曲、このライナー&ピッツバーグ響が委嘱・初演(1943年2月5日)したもので、これは1945年3月27日のSP録音で、もちろん世界初。
ライナーとガーシュウィン、一見妙な取り合わせだが、ライナーは結構アメリカの現代作曲家の作品を振っている。
中でも有名なのはリーバーマン;ジャズバンドとシンフォニー・オーケストラのための協奏曲、これは録音も残っているはず。

 さっそく聴いてみた。

フリッツ・ライナー(指揮)ピッツバーグ響、ガーシュウィン(ラッセル・ベネット編);交響的絵画「ポーギーとベス」(Sony Classical)
復刻音はかなり良好、分離も良く、モノラルLPと言っても通用しそうなくらい。
演奏も極めて優れたもので、ジャジーな雰囲気とクラシカルな造型を両立させている。
最も有名な「サマータイム」では途中でテンポを落として官能的な雰囲気を表出するので吃驚。
演奏だけとれば文句なしのベスト盤! 一聴をお薦めしたい。

11月23日(祝): 

 昨日に引き続き、レイボヴィッツの聴き直し。

ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ウィーン国立歌劇場管、ベルリオーズ;幻想交響曲(米Westminster、LP)
第1楽章の序奏は、弦の絡み合いを生かした、美しい弱奏。主部に入ると、どうも迫力に欠ける。録音ないし製盤の加減かだろう、演奏の問題ではなかったろうと信じたい。
第2楽章は、ハープの音をオンマイクでくっきり拾っている。なかなか美しい。
第3楽章でも弦楽器の線の絡み合いが美しい。こういう「すべての声部を生かす」のは、作曲家出身の指揮者に強い傾向だと思う。
第4楽章は、やはり迫力に欠けるが、最後の音を、楽譜の指定(=2分音符)に反して、短く切って落とすところがレイボヴィッツらしい。
第5楽章の序奏も、遅いテンポで、不気味なまでに克明な表出。特に低弦の強調が効果的。主部のテンポは速めだが、克明さが怪奇味を生むところは序奏と同じ。
ここでも、最後の音に一工夫、シンバルの追加!

 ステンハンマル;「スヴァーリエ」の楽譜が手に入ったので、さっそくMIDIファイルに打ち込みました。
 まだ表情等がついていませんが、旋律と和声の美しさは十分味わえますので、一度、お試しください。(→MIDIファイルへのリンク)
 「愛惜佳曲書」「ステンハンマルお薦めの3曲」「作品表とディスコグラフィ」に貼り付けました。


11月22日(日): 当「音盤志」御愛読の方からメールをいただいた。
 なんと、産経新聞のWebpageに、村治佳織嬢のインタビューが掲載されているとのことであった(トップページから入れます)。お写真、auファイル付き!
 ついでに、Lycosで検索したら、御母校のWebpageにインタビューが掲載されていたのも発見できた。(^^)

 レイボヴィッツを聴き直していた。

ルネ・レイボヴィッツ(指揮)パリ・コンセール・サンフォニーク協会管、ビゼー;組曲「カルメン」より(CHESKY)
いわゆる第1組曲・第2組曲から7曲を抜粋した録音。
まずフランス風の木管の音が美しい。「アラゴネーズ」冒頭のオーボエ、「間奏曲」のフルート、陶然たる味わいである。
レイボヴィッツの棒も冴えており、小細工を弄せず、カルメンの音楽を堪能させる。
とりわけ「アラゴネーズ」で、弦のピツィカートで緊張感を高めて突入するクライマックス、リズムの間を詰めて舞台的な興奮を演出する表現力は見事なもの。
 
ルネ・レイボヴィッツ(指揮)ウィーン国立歌劇場管、シベリウス;「悲しきワルツ」ほか(米WESTMINSTER、LP)
このシベリウスは怪演というか珍演といおうか…。
冒頭、コントラバスのピツィカートが強奏されて不気味さを演出する…と思いきや、そこだけに留まらず、終始、コントラバスが前面に出るのだ!
終結近く、2倍に引き延ばされた「死のワルツ」主題がヴァイオリンに出るところでも、コントラバスがアルコで猛然と弾いているのしか聴こえない!
これはもう、ほとんど、コントラバス協奏曲である(^^;;;
残念なのは、このバランスを演奏で実現しているのではなく、単に録音でピックアップしているだけであること。
コントラバス(しかも1本のようだ)の前に、超オンマイクでセットしただけの小細工である。
ステレオ初期の一般家庭での再生条件を考慮してのことかもしれないが、それにしても、あざとすぎる。
中間主題と交錯するように「死のワルツ」主題が出るところなど、プレーヤーが壊れて回転数が落ちたのかと思うほどの思い切った減速を見せるなど、表現そのものも面白いのだが…。
併録曲の中では、ウェーバー(ベルリオーズ編);「舞踏への勧誘」の独奏チェロが、寂寥感さえ漂う見事なもの。ワルツがヴァイオリンに出るところで裏を打つホルンやチェロもいい味を出していた。
 
ヘルベルト・ケーゲル(指揮)ドレスデン・フィル、シベリウス;「悲しきワルツ」(LASERLIGHT)
レイボヴィッツに驚いたので、ケーゲルをチェックしてみた。
冒頭のコントラバスは大きめだが、すぐ控えめなバランスに転じ、むしろ、「死のワルツ」を弾くヴァイオリンの音色でものを言おうという演奏である。
暖かく、そして悲しく、これを実演で聴いたら胸一杯になって感動したに違いない、そんな音色である。
終結のヴァイオリン4本になるところの音色も、まことに哀切を極めたもの。
*音楽家*ケーゲルの実力であろう。
 
長谷川陽子(Vc)カサド;無伴奏Vc組曲(VICTOR)
先月実演にも接したカサド、録音ということもあって、少しじっくり弾いている感じ。
スペイン(というかカタロニア)の風土感いっぱいの曲の見事な再現だが、曲の限界をも明らかにしてしまったのかもしれない。
もう少し音符の数を減らしてファンタジーの発露を促す方が良かったのでは、などと考えてしまった。
なお、かなりオンマイクの録音で、長谷川さん独特の呼吸音が極めてクリアに録れている。(^^;
 
村治佳織(G)プホール;「あるタンゴ弾きへの哀歌」(VICTOR)
ピアソラを追悼した曲。
全3曲からなるが、第1曲での高音の爪弾きにこめられた悲しみ、第3曲のタンゴのダイナミズム、いずれも素晴らしい。
ますます大きくなっていく村治嬢の音楽に今後も期待したい。

11月21日(土): 

 ノルディックサウンド広島Compact Disc ConnectionからCDが、パナムジカから楽譜が届く。

ミクローシュ・ペレーニ(Vc)フランツ・リスト室内管、ハイドン;Vc協第1・2番(Laser Light)
ミクローシュ・ペレーニ(Vc)イヴァン・フィッシャー(指揮)ブダペシュト祝祭管ほか、ドヴォルザーク;Vc協&ヒンデミット;Vc協(Laser Light)
ペレーニのCDは集めにかかっていたのだが、これらのLaser Light盤は、たぶん他の会社の原盤があるはずと思って見送ってきた。
先日、バッハに感激した際、これはとても見つかるまで待っていられないと、直ちにオーダーしたもの。
届いた盤を見る限りではLaser Lightのオリジナルのようなのだが、さてどうだろう。
なお、ヒンデミットはジョルジー・レヘルの指揮。
 
アンドラーシュ・シフ(P)塩川悠子(Vn)ミクローシュ・ペレーニ(Vc)ほか、モーツァルト;P三重奏曲第1・2番ほか(TELDEC)
Compact Disc Connectionで検索して出てきた未架蔵録音をオーダーしたもの。
珍しく、ペレーニが古楽器を弾いている盤。
ザルツブルク・モーツァルト博物館所蔵の、モーツァルト旧蔵に係るフォルテピアノ・ヴァイオリン・ヴィオラを使用というのが「売り」の録音へのお付き合いなのである。
 
エヴァ・ボーリン(指揮)ルン室内合唱団、「喜びの花」(Korinell)
ノルディックサウンド広島にオーダーしていたスウェーデンのマイナーレーベルの盤。
ステンハンマル;3つの無伴奏合唱曲を収録しているので、ステンハンマル全録音蒐集プロジェクトの一環として購入したもの。
その他、アルヴェーンペッタション・ベリエルら、スウェーデンの合唱曲のオムニバスである。
ライナーを読んでみると、指揮者は何と、往年のヘルデン・テノール、セット・スヴァンホルムの娘で、父の薫陶を受け、後にはエリク・エリクソンの合唱団等でも歌っていた人らしい。
合唱団は、ルン市立音楽学校の生徒を中心とした、17〜25歳の25人のメンバーからなっている。
録音データを見て更に驚いた。プロデューサーにロベルト・フォン・バール@BISの名前があるのだ。おそらく出稼ぎだろう(^^)
 
フーゴー・ハッスロ(Br)スティグ・ヴェステルベリ(指揮)ほか、「イン・メモリアム」(Bluebell)
これもステンハンマル全録音蒐集プロジェクトの一環として購入したもの。
ブー・ベルイマンによる5つの歌(op.20)中、「星の瞳」「窓辺に」「月の光」「アダージョ」の4曲を収録、オリジナルのピアノ伴奏ではなく、ヴェステルベリ(指揮)スウェーデン放送響の管弦楽版によっている。録音は1959年、良質のモノラルである。
ハッスロ(1911〜1994)は1940年にフリッツ・ブッシュに見いだされ、1964年までストックホルム王立歌劇場でフィガロやリゴレット、ファルケ博士等を得意にしていたということである。
引退後は声楽教師として多くの後進を育てたとあり、そのためか、没後にこの盤が編まれたようだ。
主にオペラの放送録音やライヴ録音を音源としており、スウェーデン語の「おいらは鳥刺し」なんかも聴ける。(^^)
オーケストラ、指揮者も様々だが、本格デビューとなった1940年のブッシュ(指揮)「コジ・ファン・トゥッテ」のアリアも聴くことができる(ライヴ録音)。
 
ステンハンマル;「スヴァーリエ」op.22-2(Carl Gehrmans)
ステンハンマル;「春の夜」op.30-2(Carl Gehrmans)
ステンハンマル;「3つの無伴奏合唱曲」(Carl Gehrmans)
ステンハンマル;「北の国」(Carl Gehrmans)
これらは楽譜。特に最愛の「スヴァーリエ」の楽譜は前から手に入れたかったのだが、昨日、Webで見つけたパナムジカ@合唱楽譜専門店にメールで問い合わせたところ、ステンハンマルは上記4点を在庫しておられるとのことで、さっそく送っていただいた。
Webpageや、同封していただいたカタログを見ると、北欧音楽はじめ幅広く掲載、「受注後5日以内」の配送を宣言する等、心強いお店のようである。

11月20日(金): 井上道義(指揮)京都市響、メシアン;トゥランガリラ交響曲に行き損なってしまった…。

 

矢部達哉(Vn)横山幸雄(P)ルクー;Vnソナタ&ラヴェル;Vnソナタほか(Sony Classical)
このデュオは前にフランク;Vnソナタほかが出ていたが、店頭で試聴したときにどうもナヨナヨした感じがあって、買っていなかった。
先日、矢部氏の実演に接して感心したのと、全録音蒐集を目標にしているルクーが入っているのとで、今回は購入。
フォーレ、ドビュッシーの小品をフィルアップ。
 
長谷川陽子(Vc)カサド;無伴奏Vc組曲&ヒンデミット;無伴奏Vcソナタ&レーガー;無伴奏Vc組曲ほか(VICTOR)
待望の! 長谷川さんの新譜、即購入。
今回は無伴奏アルバム。カサドは先日、実演でも聴くことができたが、長谷川さんの情熱的な内面を垣間見た気がした(先週のオフなど、お目にかかると実に奥床しい方なのです)。
フィルアップにテレマンの小品が入っているが、「録音したものの、作者が所在不明で著作権がクリアできずCDに収録できなかった(大意)」という「幻の一曲」、ぜひ聴きたかった…(T_T)
ライナーが自筆なのも、ファンとしては嬉しいし、ある意味では演奏家の良心であろう。
 
村治佳織(G)「カヴァティーナ」(VICTOR)
これも待望の! 村治嬢の新譜、即購入。
今回はブローウェル、バリオスら主に南米の作曲家の作品を収録、アンコール風に映画音楽からのアレンジを2曲添えている。
なお、先日発売の『FMfan別冊 オーディオ・ベーシックvol.10』@共同通信社は、表紙と特集に村治嬢が登場、全頁大のお写真が表紙+2頁も。ファン必携といえよう!
斉諧生的には、草むらの中でギターを構えておられるお姿(14頁)がgood。
 
ペーター・ホフマン(T)「聖しこの夜」(SONY)
丸善の軒先で、中古CDのワゴン・セールをやっていた。急いでいたのだが、やはり覗かずにはいられないのが性というもの(^^;
クラシックは全くなかったのだが、クリスマスCDで1コーナーあって、眺めていると目についたのがこれ。
ヘルデン・テノールが歌うクリスマス・キャロル!
クラシック系の歌手で、この手のアルバムを出すのは、パヴァロッティ、ドミンゴあたりの超売れっ子に限られているので、少々地味目のホフマンとは意外な…。
どんな歌唱か興味津々、中古格安でもあり、ついつい買ってしまった。

 

ペーター・ホフマン(T)「聖しこの夜」(SONY)
帰宅したのは遅い時間だったが、ちょっと1曲めの「アデステ・フィデレス(神の御子は今宵しも)でも聴いてやろうと思って、プレーヤーに掛けたとたん、光彩陸離たる金管のファンファーレ!
咆哮する金管、唸る低弦、轟くティンパニ、粘りぬく歌唱!
いやもう、面白くて面白くて、最後まで聴き通してしまった。(^^;
曲によっては静かに始まるのだが、どんどん盛り上がって、最後は必ずワーグナーになってしまう!
「と盤」マニア必聴のアルバムといえよう。(爆)
編曲はアンドルー・プライス・ジャックマンという人、バックのオーケストラ、合唱、指揮は不詳。ライナーノートは出谷啓(^^;
実は、ホフマンには「ロック・クラシック」というアルバムもあり、「スカボロ・フェア」とかを収めているらしいのだが、これを塚本邦雄氏が絶讃しておられ(『世紀末花傳書』@文藝春秋社)、前から聴きたいと思っているのだが疾うに廃盤。
これを是非、探し出して聴いてみたい。(^^;;;

11月17日(火): 

 

クリストフ・プレガルディエン(T)アンドレアス・シュタイアー(Fp)シューベルト;歌曲集「美しき水車屋の娘」(DHM)
中古音盤堂奥座敷試聴会で、この2人の「冬の旅」を取り上げており、参考盤として「水車屋」も聴いてみようと購入。
シュタイアーの使用楽器が、違っている。
ウィーンのヨハン・フリッツ製作によるフォルテピアノのレプリカであることには違いがないのだが、元にした楽器が、こちらは1818年頃の、「冬の旅」は1825年頃のもの。
おそらくは作曲年代の差(1823年頃と1827年頃)を考慮しての使い分けであろう。
ただ、不思議なことに、レーベルが代わっている。「冬の旅」TELDECだが、こちらはDHM、それでいて西ドイツ放送(WDR)との共同製作であることは共通。
録音は「水車屋」が先(1991年と1996年)、また「シラーの詩による歌曲集」「ゲーテの詩による歌曲集」DHMから出ている。

11月15日(日): 今日は長谷川陽子さんの後援会「ひまわり」の関西オフ・ミーティング。斉諧生は昨年に続いて2度目の参加である。

長谷川さんと斉諧生
長谷川さんと斉諧生

 プログラム最初のミニ・コンサートでは、昨日の曲目でもあるバッハ;ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ第3番
 今日はピアノ伴奏(風呂本佳苗)のせいか、こじんまりとサロンで聴くせいか、一層のびのびと表現されていた。第1楽章の立体的な構成感、第2楽章の深い慈愛、第3楽章の喜ばしい舞曲、いずれも見事。
 目の前のチェロから音を浴びて、バッハの音楽の素晴らしさを経験できたのは、代え難い喜びであった。

 アンコールには、CDも製作しているブルース・スターク氏の小品。

 そのあとの懇談の時間に、少しお話を伺えた。
 昨日のコンサートでの音のことをお尋ねすると、ガット弦の使用も試みられたそうだが、使っているうちにどんどん伸びて「2小節弾くたびに調弦し直さないといけない」状態、安定するまで待っていてはとても間に合わないということで、演奏会は普段のスティール弦で臨まれたとか。

 ただ、重音の出し方等、なるべくバロックの奏法を意識して、演奏されていたそうだ。

 それでもガット弦を体験できたことは大きかったそうで、「本当に『裃を脱いだ』感じでバッハが演奏できました」とのこと。
 来年には、いよいよバッハ;無伴奏チェロ組曲の全曲連続演奏に挑戦される。あるいは、ガット弦をお使いになるかも…?
 
 昨年もそうだったのだが、相手の目をまっすぐ見てお話しになる御様子、誠実な受け答え等々、長谷川さんのお人柄に、感銘を新たにした。これは今日の50名以上の参加者が、一様に感じていたことと思う。
 なお、後援会「ひまわり」の公式ページもどうぞ。できれば、あなたも御入会ください。<(_ _)>

 今日も神戸の音盤屋に寄る。売れ残り? とおぼしい掘り出し物がいくつか。

ネーメ・ヤルヴィ(指揮)イェーテボリ響ほか、シベリウス;組曲「カレリア」・歌劇「塔の中の乙女」(BIS)
ヤルヴィのシベリウスのうち、買いそびれていたものがバーゲン・プライスで出ていたので購入。
このCDが出たときに、BISがシベリウス録音にかける「本気」を感じたのを思い出す。当時のBISは、今と違って、無名のマイナー・レーベルだったのだ。
 
ジャン・クロード・カサドシュス(指揮)フランス国立リル管ほか、ドビュッシー;交響詩「海」・「夜想曲」ほか(HMF)
事情を知る向きには某方面から*洗脳*されているのが見え見えの1枚(^^;;;
まぁ、「夜想曲」は好きな曲なので、一度聴いてみてもいいと思い購入。
「選ばれた乙女」をカプリング。
 
ミシェル・シュヴァルベ(Vn)ほか、メンデルスゾーン;Vn協&サンサーンス;Vn協第3番&ヴィニャフスキ;Vn協第2番ほか(Biddulph)
カラヤンの下でベルリン・フィルのコンサートマスターを勤めたシュヴァルベの協奏曲録音の初のリリース。スイス・ロマンド放送局による生放送音源。
オーケストラはいずれもスイス・ロマンド管スタニスラフ・スクロヴァチェフスキがヴィニャフスキを指揮している。
ベルリン・フィルのコンサートマスターというと、昨日書いたタシュナーもそうだが、ドイツ流儀の端正で和音の美しい、「いい音楽」を期待させる。ついつい購入。
なお、この盤のリリースは「ハットリ・ジョウジ」氏の資金サポートによる、とライナーノートにある。あるいはヴァイオリニスト・服部譲治氏か?
 
アドルフ・ブッシュ(Vn)ルドルフ・ゼルキン(P)ほか、ブラームス;Vnソナタ第1・2番&シューマン;Vnソナタ第1番ほか(Pearl)
ヴァイオリン演奏の規範として、ブッシュの録音を欠かすことはできない―シゲティ以上に―。
ブラームス(1931〜32年録音)は既にEMIのReferenceで持っているが、更に良好な復刻を期待し、またシューマン(1937年録音)はCDでは初めてなので、購入。
なお、1921〜22年録音のブラームス:ハンガリー舞曲第2・5・20番をフィルアップ。
 
タスミン・リトル(Vn)ピアース・レイン(P)、「ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン」(EMI)
リトル嬢の小品集を見つけたので購入。
クライスラー(ウィーン奇想曲、プニャーニのアレグロ)、ブラームス(ハンガリ−舞曲第1・5番)、シューベルト(アヴェ・マリア)、ラヴェル(ツィガーヌ)等々、お決まりのアンコール・ピースが並んでいる。
その中に、ディーリアス;セレナード(「ハッサン」より)が混じっているのが彼女らしさか。
 
アンドレ・クリュイタンス(指揮)フランス国立放送管ほか、ドビュッシー;歌劇「ペレアスとメリザンド」(TESTAMENT)
クリュイタンスによるドビュッシーの名作の録音、しかもキャストが
ペレアス;ジャック・ジャンセン
メリザンド;ヴィクトリア・デ・ロスアンヘレス
ゴロー;ジェラール・スゼー
とあって、出たときから気になっていたのだが、3枚組のお値段に買いそびれていた。
今日、ほとんど2枚組同様の格安に出会ったので、懸案を解消すべく購入。
もっとも、これも事情を知る向きには某方面から*洗脳*されているのが見え見えの1組(^^;;;
 
アレクサンダー・ギブソン(指揮)スコットランド国立管、シベリウス;交響曲第1番(英EMI、LP)
1970年代初め、EMI系の廉価盤レーベルCFPにギブソンが録音したシベリウスの交響曲3枚の一。
実は昨日見つけていたのだが、既に架蔵しているものと思って見送った。ところが帰宅して確認すると、同シリーズでは第2番・第5番しか架蔵していないではないか!
慌てて、再度、行って購入したもの。
これで、ギブソンのシベリウス;交響曲録音は、音源としては全部揃ったはず。
メディアの問題(CDかLPか、オリジナルか再発か等)は別だが…。

 昨日の演奏会を演奏会出没表に追加。


11月14日(土): 今日は長谷川陽子さんの演奏会に神戸の先の方まで出かけておりました。JRだと「明石」で下車してバスで神戸市の西端まで戻る形なのですが、ああ、遠かった…(^^;

 神戸学院大学が主催する「グリーン・フェスティバル」というシリーズがあり、けっこうメジャーな演奏家を招いて、学校関係者+一般を対象に無料! で公開されている(事前申込制)。
 長谷川さんは早くから出演して、最近では「三大Bチェロ組曲・ソナタ連続演奏」というプロジェクトを始めておられる。今日がその第4回に当たるそうな。
 ただし、斉諧生は今日が初めて。

曲目はバッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ全曲
共演は中野振一郎
ちょっと短いなと思っていたら、中野氏によるイタリア協奏曲が付け加えられていた。
大学関係者の前説のあと、青いドレスの長谷川さんが登場…
ガンバ・ソナタ第1番が始まった瞬間、あれっ? と感じた。
音が軽いのである。いつもの長谷川さんの音ではないような気さえする。
しかも音程がやや不安定、これは彼女らしからぬ現象。
慣れないガット弦を使っているのでは? あるいはチェンバロとの共演ということで、いつもと違う音程の取り方を強いられて苦戦しておられるのでは? 等と気を揉む。
音楽としては、緩徐楽章では深々とした呼吸を、急速楽章では優雅な舞曲を奏でておられ、それはよいのだが、肝心な「音」に違和感が残る。
第3楽章のチェロの持続音の上にチェンバロが華やかな音型を奏するところ、長谷川さんの右手の表現力に感心。
ソナタ第2番でも、深沈とした緩徐楽章とスケールの大きな舞曲という音楽はよいのだが、どうも隔靴掻痒の感が拭えない。
第3楽章では音が上擦って、中野氏が心配そうに手元をのぞき込む場面まで。
休憩後、なんとインタビュー・コーナーが始まった。
ここの恒例だそうだが、演奏者側にとっては集中力を削がれる鬼門では? しかし重大情報あり。
大意、「チェンバロ、それも中野さんとの共演は私からのリクエスト。弓をどうするか、弦をどうするか考えていたが、バロックの奏法は随分違うので、即席というのは私の性格では無理。モダン楽器のチェロと古楽器のチェンバロとの組合せで新しい演奏ができればよいと思っている。」
ということは、楽器はいつもどおり、ということか。
弓の圧力を極力軽くし、チェンバロとのバランスを取ろうとしているのか、あるいは古楽器派のアプローチを取り入れて、舞曲のリズムを活かそうとしておられるのか。
中野氏は「ソロの部分と伴奏の部分があり、伴奏の部分では影に回ってくれるのでやりやすい」と言い、また長谷川さん自身も「バッハは素晴らしい作曲家で一番好きだけども、神棚には飾りたくない。酔っぱらって喧嘩して後で謝ってまわるとか、お茶目なところ、人間的なところがあって、好き。」と語られていた。
中野氏の独奏を挟んで、ソナタ第3番
曲想もあって、すこし重い音も出ていたが、基本は同様、うーん、欲求不満だなぁ…。
長谷川さんには、モダン楽器の性能を生かして、御自分の表現力を目一杯発揮していただきたいと思うのだが…
いや、彼女自身がああいう方向を目指しておられるのなら、それについていくのがファン(^^;の使命か。
ただ、今日のような1,000人以上と思われる大ホールでは多少疑問が残るアプローチであり、技術的にも不安定な面があったのは残念と言わざるをえない。
アンコールはクープラン;演奏会用小品から「シシリアーノ」と「トランペット」
1つめで作曲者を「プーランク」とアナウンスされたのは、ギャグ狙いだったのかな(^^;;;

 行きに梅田、帰りに元町の音盤屋に寄る。普段行かないところだけに、いろいろ拾いものが出てきてしまった。

レイフ・セーゲルスタム(指揮)デンマーク国立放送響ほか、シベリウス;「クッレルヴォ」(CHANDOS)
セーゲルスタムのシベリウス、最近ではONDINEから出ているが、その前にCHANDOSに交響曲全集と主な管弦楽曲等を録音していた。
番号付きの交響曲は全部架蔵しており、残っていた「クッレルヴォ」を中古格安で見つけたので購入。
それにしても、あの髭! なんとかならないものか。(^^;
 
ウリ・マイヤー(指揮)イスラエル・シンフォニエッタ、ショスタコーヴィッチ;室内交響曲op.83a・110a(ARABESQUE)
マイヤーは関西フィルの常任指揮者として知られているが、こういう団体の芸術監督も勤めているそうだ。
曲はもちろん弦楽四重奏曲第4番・第8番のバルシャイ編曲、特に後者は集めているものなので、迷わず購入。
 
トーマス・ビーチャム(指揮)ロイヤル・フィルほか、ディーリアス;管弦楽曲集(DUTTON)
ビーチャムのディーリアス録音は数多いが、これは1946〜52年にHMV(EMI)に録音したものの復刻。
「ブリッグの定期市」「ダンス・ラプソディ」「春初めての郭公を聴いて」「河の上の夏の夜」といった、ディーリアン鍾愛の曲をはじめ、全10曲を収録。
この時期のロイヤル・フィルならホルンにデニス・ブレインが参加していたはず。復刻技術に信頼の置けるDUTTONだけに、期待して購入。
 
ゲルハルト・タシュナー(Vn)ヘルマン・アーベントロート(指揮)ほか、ブルッフ;Vn協第1番ほか(ARCHIPHON)
活動停止という噂も流れたARCHIPHONだったが、何の何の。これ以外にクランペラーのSP復刻も並んでいた。
タシュナーは1922年ポーランド生れ、フバイとフーベルマンに学び、1941年、19歳でベルリン・フィルのコンサートマスターに就任。1950年以降はベルリン高等音楽院の教授を勤め、1976年に死去。
前にEMIから1950年代前半の放送用録音がCD化されていたが、これは1944年12月録音のブルッフと、ハチャトゥリアン;Vn協(1947年録音、アルトゥール・ローター(指揮)ベルリン放送響)、ツィゴイネルワイゼン(1944年3月、ミヒャエル・ラウハイゼン(P))。
ハチャトゥリアンの録音は、ひょっとしたら、ベルリン占領中のソ連軍と関係があったのかもしれない。
ブルッフはEMI盤でも良かったが、こちらは指揮がアーベントロートということで更に期待が高まる。買わざるべからず。
 
スティーヴン・イッサーリス(Vc)ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)ヨーロッパ室内管、チャイコフスキー;ロココの主題による変奏曲ほか(Virgin)
御贔屓のチェリストの1人イッサーリスの、あまり見かけない盤を見つけたので購入。
ガーディナーがCOEを振っているのも珍しい。
「ロココ〜」はフィッツェンハーゲンによる改訂版が通用しているが、イッサーリスは原典版に拠っている。
その他、チャイコフスキーでは「アンダンテ・カンタービレ」他2曲、グラズノフ、リムスキー・コルサコフ、キュイの小品を収録。
 
ペッカ・クーシスト(Vn)ライヤ・ケルッポ(P)ラヴェル;Vnソナタ&バッハ;無伴奏Vnパルティータ第3番ほか(ONDINE)
1995年にシベリウス・ヴァイオリン国際コンテストで優勝したクーシスト(弟)のリサイタル盤。新譜で出回ったとき迷っているうちに無くなってしまい、臍を噛んでいたのを見つけたので、購入。
上記の他、シュニトケ;Vnソナタ第1番シベリウスの小品3曲他を収録。
 
フランシス・プーランク(P)ジャン・ピエール・ランパル(Fl)ほか、プーランク;Flソナタ・Ob・FgとPの三重奏曲ほか(Ades)
ここからプーランクの室内楽曲盤3連発。
これは自演盤だが、Flソナタは初演者ランパルとの共演で貴重。
また、モーリス・アラールのFg、リュシアン・テーヴェのHrnは、それぞれフランス式の楽器の最後(?)の名手、独特の音色美を期待して購入。(Obはピエール・ピエルロ)
本来はピエール・ベルナック(Br)ルイ・フレモー(指揮)「仮面舞踏会」がメインの収録作品。
 
ジュリアス・ベーカー(Fl)三浦洋一(P)、プーランク;Flソナタほか(KING)
ベーカー来日時(1965年)の日本録音・製作盤。
これは浮月斎大人から同曲のベスト盤として御推奨いただいたので探していたもの。注文するのをついつい忘れていたところ、ようやく見つけたので購入。
その他、グリフェス、ディニク、ショパン、デュティユ、日本民謡を収録。
 
ジェラール・プーレ(Vn)パスカル・モラゲス(Cl)パスカル・ドワイヨン(P)ほか、プーランク;Vnソナタ・Clソナタほか(Praga)
レーベルはPragaだが、プラハでのライヴ録音ではなく、パリでのスタジオ録音(1996年)。
フランス系ヴァイオリニストとして贔屓にしているプーレ、若手随一と評判のモラゲスの録音なので買ってみた。
プラハの団体による六重奏曲、Obソナタ等をカプリング。
 
エルンスト・ヘフリガー(Ten)イェルク・エヴァルト・デーラー(Fp)シューベルト;歌曲集「冬の旅」(Claves)
中古音盤堂奥座敷試聴会向けに、比較盤を追加購入。
課題盤のプレガルディエン盤同様、フォルテピアノを伴奏に起用している点に着目。
ヘフリガー枯淡の境地にも期待。
 
ブリギッテ・ファスベンダー(M-S)アリベルト・ライマン(P)シューベルト;歌曲集「冬の旅」(EMI)
これは前に"La Voce"の御主人にお薦めいただいた演奏。
この曲集を女声で録音するのは珍しいが、あえて挑戦した意欲に期待。
ファスベンダーはオペラでもズボン役が多かったからなぁ…(^^)
なお、ピアノのライマンは作曲家としても知られる人、ルーチン・ワークでない解釈を期待したい。(そういえば高橋悠治が弾いた岡村喬生盤というのもありました)
 
アレクサンダー・ギブソン(指揮)スコットランド国立管、シベリウス;交響曲第3・7番(英SAGA、LP)
こういう録音があるということを日本シベリウス協会の会報第16号の特集「ギブソン追悼」で知ってから、ずっと探していた盤に巡り会えたので、購入。
1960年代半ば、ギブソンと手兵SNOとの初めてのシベリウス録音に当たる。今回購入したのは、おそらく1970年代のプレス、そのためか格安。
それにしても凄いカプリング。ファンは随喜だが、セールスはどうだったのだろう?
 
ポール・トルトゥリエ(Vc)マリア・デ・ラ・パウ(P)シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ&ベートーヴェン;Vcソナタ第3番(英EMI、LP)
トルトゥリエ晩年のデジタル再録音。アルペジオーネはペレーニ&シフ盤が出るまでのベストだった。
これまで国内廉価盤CDしか架蔵しておらず、英盤LPを見つけたので購入。斉諧生は「アナログ録音はLPで、デジタル録音はCDで」を原則にしているが、これは例外。(^^;
ピアニストは実娘、若きトルトゥリエがプラド音楽祭に参加していた頃に生まれ、カザルスが名付け親になったとか。
 
パレナン四重奏団、ドビュッシー;弦楽四重奏曲&ラヴェル;弦楽四重奏曲(英EMI、LP)
隠れもない天下の名盤だが、実は聴いたことがない。CDを探していたが店頭には見当たらなくなっており、LPを見つけたところで購入。
特にドビュッシーについては、中古音盤堂奥座敷同人では野々村さんが夙に推奨され、浮月斎大人もAutumn Twilight Flightと題して取り上げておられた。
カプリングのラヴェルも、先だって豊嶋泰嗣ほかによる実演に接して以来、興味を持った曲なので、期待したいところ。
 
舘野泉(P)シベリウス;ピアノ名曲大系(日東芝、LP)
1978年録音の名盤。これが手に入るとは思わなかった。狂喜して購入。
op.5の「6つの即興曲」からop.114の「5つのスケッチ」(遺作)まで16曲をLP4枚に収めたもの。BISからタヴァッシルェナの全集が出るまでは、もっとも大規模なアンソロジーだったのでは?

11月13日(金): 

 

トーマス・ツェートマイヤー(Vn)フランス・ブリュッヘン(指揮)18世紀オーケストラ、ベートーヴェン;Vn協ほか(Philips)
ブリュッヘンと18世紀管の新譜ゆえ、直ちに購入。
Glossaへ移籍したものと思っていたら、Philipsとの関係も続いていたらしい。
しかし、意外な顔合せ。
前に『レコード芸術』誌のインタビューで、この曲を取り上げることは喋っていて、そこでは独奏者の人選に困っているようなことを言っていたので、古楽器系ヴァイオリニストの名前をあれこれ思い浮かべていたのだが…。
まぁ、ツェートマイヤーの音からすると、相性は悪くないかもしれない。
なお、ライナーノートを見ても、ツェートマイヤーの使用楽器についての記載はなく、どうやっているのか興味あるところ。
2曲の「ロマンス」をフィルアップ。
 
ヴァッサ・プシホダ(Vn)パウル・ファン・ケンペン(指揮)ミヒャエル・ラウハイゼン(P)ほか、ドヴォルザーク;Vn協・Vnソナチネ(DGG)
珍しく国内盤。
1943年録音のSPからの復刻で、協奏曲は前に別会社から出たものを買っているが、ソナチネは初めてなので購入。ともにプシホダの十八番である。
音的には、協奏曲は録音年を考えるともう少し鮮明な音にならないかとも思うが、SP復刻としてはまずまず水準に達している。ソナチネはずっと鮮明で、問題ない。
 
ミロシュ・サードロ(Vc)カレル・アンチェル(指揮)チェコ・フィルほか、ショスタコーヴィッチ;Vc協第1番ほか(Supraphon)
これも国内盤。
サードロは、あまり聴いたことがないのだが、ショスタコーヴィッチの1番は好きな曲なので買ってみた。
付けがアンチェルというのも興味をそそる。
なお、ノイマン(指揮)オネゲル;Vc協をカプリング。
 
天満敦子(Vn)小森谷裕子(P)「旅人の詩」(コンサート・イマジン)
この人は買うことにしているので、まず購入。
新譜ながら1,500円と廉価だが、収録時間は35分ほど。
しかし、危ないなぁ…「天満敦子、小林亜星を弾く」とは。
亜星氏のオリジナル歌謡曲や民謡の編曲を4曲と、例の「望郷のバラード」のポルムベスクの曲を氏がアレンジしたもの2曲を収録。
低弦で粘っこく歌い上げるのは得意技だし、「北の宿から」まで入っていればセールスも一定期待できるだろうけど…。うーん。
この人には、そういうところで安住せず、もっとメカニカルな技術を磨いて、例えばハチャトゥリアンとかショスタコーヴィッチを(も)世界に通用する水準で演奏してもらいたい。表現力は抜群なのだから…
なお、発売元はマネージメント会社。

11月12日(木): 玉木正之『音楽は嫌い、歌が好き』@小学館文庫を読む。
 玉木氏は前に毎日新聞社から同名書を出しており、その文庫化と思ったら、なんと、新編集で単行本未収録の記事を多数掲載とのこと。
 氏は斉諧生の高校の先輩に当たり(8年くらい上の期なので直接には知らない)、スポーツ評論も含めて、ずっと読んでいるので購入。
 しかし、違う本に同じ題名を付けるのはどうかと思う。まぁ、損をするのは著者の方だろうが…
 しかも、

朝比奈隆は、京都大学経済学部卒という学歴の持ち主である。(245頁)

などという単純かつ致命的な誤りまで見られる(正しくは、法学部卒業→阪急電鉄に就職→文学部へ学士入学)。
 僭越ながら少々苦言を呈したい。

 

ハンス・ホッター(Br)ジェラルド・ムーア(P)シューベルト;「冬の旅」より(日EMI、LP)
第16曲「最後の望み」のみ聴く。サロ様王国のBBSサロ様城で、ある方からお薦めをいただいたため。
もう「参りました」と言わざるをえない、壮絶な歌唱。
前半は、遅めのテンポで、軽い―虚無的な―声でまったく歌わず、最後の"wein'(泣く)"で乾坤一擲の感情移入。
いわば、きわめて表現主義的な歌唱といえよう。そういえば前半は、シューベルトの旋律が半音階的なこともあり、あたかもシュプレッヒ・シュティンメのごとし。

11月11日(水): 

 

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)ザールブリュッケン放送響、ブルックナー;交響曲第1番(ARTE NOVA)
あるいは*次*の「最後の巨匠」とも噂されるスクロヴァチェフスキ、彼のブルックナーは聴き逃せない。
この曲には版の問題があり、そのことはライナーノートでも書かれているにもかかわらず、この演奏がいずれに拠っているか記載がないのは不親切だ。
 
アンナー・ビルスマ(Vc)ジョス・ファン・インマゼール(Fp)ほか、シューベルト;アルペジオーネ・ソナタ、P五重奏曲「鱒」ほか(Sony Classical)
ビルスマには1970年代初めの録音があり、以前、ここでも取り上げたことがある。ガット弦の美音と、センスと表現力の豊かさに、感心したものだ。
そのビルスマの再録音、付けは今をときめくインマゼールとあらば、聴かざるべからず。
鈴木秀美盤(BMG)同様、5弦のチェロ・ピッコロを使用しての演奏である。
ヴェラ・ベス(Vn)ユルゲン・クスマウル(Va)マルジ・ダニロウ(Cb)との「鱒」P三重奏のための「ノットゥルノ」をカプリング。
国内盤は既に出ているが、輸入盤が入るまで待って購入。

11月9日(月): 『ショルティ自伝』(草思社)を読了。なかなか面白かった。
 とにかくデータ量が豊富。ちょっと拾っただけでも、

戦後まもなくの頃、ブダペシュトの国立歌劇場で首席指揮者をしていたクレンペラーをホテルに訪ねたら、半裸で寝そべっていて、身体中、口紅の跡だらけだった。
1972年にウィーン・フィルと『魔笛』を録音していたら、第1ヴァイオリン奏者が「こんなことは、もうごめんだ!」と席を蹴って出ていった。
マリア・カラスにコヴェント・ガーデンでルルを歌わないか、持ちかけたら、「ベルクよりベッリーニをやらない?」でおしまいだった。
1976年、パリ・オペラ座のツアーをメトで振っていたとき、指揮棒で頭を突いてしまい、レシタティーヴォ中に応急措置、後で縫うほどの大怪我をした。
その時の曲目は、なぜか「フィガロの結婚」だったとか。

 等々。
 翻訳は、まずまずこなれた日本語だが、人名のカナ表記が通用のものと違うのに戸惑う。「ヤッシ・ビョルリンク」、「ヒルデ・ゲーテン」、「ブリン・テルフェル」といった手合いが散見される。索引がないのも、もったいない。いずれも編集者の問題であろうか。

 

ゲオルク・ショルティ(指揮)ブダペシュト祝祭管ほか、バルトーク;カンタータ・プロファーナ&ヴェイネル;セレナード&コダーイ;ハンガリー詩篇(DECCA)
上記『自伝』を読むと、自ら晩年―シカゴ響辞任後―の進境に著しいものを感じていたようで、ちょっと興味を覚える。例えば、
「魔笛」はピアノで弾いたし、ザルツブルクでコレペティトゥーアをしていた時代から接してはいたが、その驚くべき偉大さを把握したのはかなり最近のことだ。いまになってやっと、私は作品のもつ魔力と、三つの世界(僧侶、人間、超自然の世界)が真に理解できたように思う。長いあいだ私は音符を指揮してはいても、音符を超えた哲学的内容を指揮してはいなかった。
といった調子なのだ。
そこで、好きなオーケストラの一つブダペシュト祝祭管を指揮し、作品的にも興味深い、この1枚を買ってみたわけである。
ショルティがブダペシュトのリスト音楽院で師事した3人の作曲家の作品を、同地のオーケストラ・合唱団で録音したもの。1997年6月、急逝する2月ちょっと前の演奏に当たり、「ショルティ最後の録音」とのタイトルで出た。
この中ではヴェイネルが珍しい。
『自伝』では、「私が音楽家としてなし遂げたものはすべて、だれにもましてレオ・ヴェイネルのおかげだと言っても過言ではない。」と、彼の厳しく、かつ充実した室内楽の指導を回想している。
バルトークやコダーイの作品は、当時のハンガリー楽壇では異端視されていたものの、ショルティをはじめ、若い音楽学生達には絶大な人気があったとか。
もっとも教師=生徒の関係としては、
バルトークには、ピアノの主任教授の病気休暇中、6週間レッスンして貰っただけで、「内容はほとんど忘れてしまった」、
コダーイには作曲を見て貰ったが、「いつもかなりいい点はくれたが、なにひとつ言ってくれなかった」
とか(^^;
ショルティのCDを買うのは久しぶり、あるいは当「斉諧生音盤志」始まって以来かも。
 
エドウィン・フィッシャー(P&指揮)フィルハーモニア管、ベートーヴェン;P協第3・4番(TESTAMENT)
フィッシャーのベートーヴェンとなると、ちょっと聴き逃すことはできないので購入。
また、50年代前半のフィルハーモニア管の録音というところにも興味津々。
 
ユーリ・バシュメト(Va)アンドレ・プレヴィン(指揮)ロンドン響ほか、ウォルトン;Va協ほか(BMG)
しばらく新譜を見なかった(と思う)バシュメト、ウォルトンという、やや珍しい曲目で復帰してきた。
この人のヴィオラは、ショスタコーヴィッチ;Vaソナタシューベルト;アルペジオーネ・ソナタが素晴らしく、なるべく買うようにしているので、購入。
ブルッフ;VnとVaのための協奏曲・Vaと管弦楽のためのロマンス・コル・ニドレをカプリング。
ブルッフの付けはネーメ・ヤルヴィ、Vnにはヴィクトル・トレチャコフが参加しているのも興味を惹かれる。
 
チョン・キョンファ(Vn)ペーター・フランクル(P)ブラームス;Vnソナタ全集(EMI)
待望の1枚、ただちに購入。
もっとも国内盤は昨年4月に発売済みであった。輸入盤を待っているうちに、今になってしまったもの。
自己批判が厳しく、録音したもののリリースになかなかOKを出さないと伝えられる彼女だが、そのことは国内盤と輸入盤の時間差の説明にはならないだろう。少々、不可思議である。
 
カール・ベーム(指揮)ウィーン国立歌劇場管ほか、モーツァルト;歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(BMG)
1955年11月6日、空襲で破壊されたウィーン国立歌劇場の再開2日目の上演、オーストリア放送によるライヴ録音である。(初日は「フィデリオ」。)
この再開時の一連の上演は伝説的名演とされており、ぜひ聴いてみたいと購入。
序曲だけはLPで出ていたらしいが、チャリティの記念盤か何かで稀覯のものだった。
キャストは、
ドン・ジョヴァンニ  ;ジョージ・ロンドン
騎士長        ;ルートヴィヒ・ウェーバー
ドンナ・アンナ    ;リーザ・デラ・カーザ
ドン・オッターヴィオ ;アントン・デルモータ
ドンナ・エルヴィラ  ;セーナ・ユリナッチ
レポレロ       ;エーリヒ・クンツ
ツェルリーネ     ;イルムガルト・ゼーフリート
マゼット       ;ヴァルター・ベリー
と、戦後ウィーンの名歌手・名花揃い。
指揮者、オーケストラとも絶頂の頃、特に「ベームのライヴは凄い」と言われていた時期だけに、大いに期待したい。
音的には中波ラジオ程度だが、歪みや雑音、脱落等はないので聴きやすい。
 
ビル・エヴァンス(P)スコット・ラファロ(Bs)ポール・モチアン(Drms)「ワルツ・フォー・デビイ」(RIVERSIDE)
ジャズの世界では天下の名盤、いまごろ買うのも恥ずかしいくらいだが、タワーのポイントが貯まったので、「xrcd盤」を購入(というか交換)。
御承知でない方には、サダナリ・デラックス中、世界一わかりやすいジャズ入門「さあ、最初の1枚は?」を御覧になることをお薦めしておきたい。
また、御存知の方には、このWebpageを。パロディじゃないですよ。
 

11月8日(日): 

 中古音盤堂奥座敷試聴会向けに、シューベルト;歌曲集「冬の旅」を、いろいろ聴く。
 実は、この曲をまともに聴くのは初めてなのだが、テクストが一定していないのには驚いた。第4曲「凍結」最終節"erstorben"を"erfroren"と(プレガルディエンのみ)、第20曲「道標」第3節"Wegen"を"Strassen"と(ヒュッシュ以外全部)、第23曲「幻の太陽」第7行"ach"を"ja"と(プレガルディエン以外全部)歌っている。
 ミュラーの原作とシューベルトの楽譜の違い等の事情があるようだが…

クリストフ・プレガルディエン(T)アンドレアス・シュタイアー(Fp)シューベルト;「冬の旅」(TELDEC)
これは課題盤なので、いずれ上記で公開されるログを御覧ください。
 
ゲルハルト・ヒュッシュ(Br)ハンス・ウド・ミュラー(P)シューベルト;歌曲集「冬の旅」(Preiser)
ハンス・ホッター(Br)ジェラルド・ムーア(P)シューベルト;「冬の旅」(日EMI、LP)
ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウ(Br)ジェラルド・ムーア(P)シューベルト;「冬の旅」(EMI)
ペーター・シュライアー(Ten)スヴィアトスラフ・リヒテル(P)シューベルト;歌曲集「冬の旅」(Philips)
ヒュッシュ盤は、1933年の録音ながら、そのような古さをほとんど感じさせない。発音は極めて明晰、歌い崩しのないスタイリッシュな歌唱である。1950年代のものといっても通用すると思う。
僅かに発声の一部と音のずり上げに、古い演奏様式を感じさせるのみである。
大袈裟な表情を排し、淡々と運びながらも、深沈たる哀感に聴く者を包み込む、名演である。歌というより語りに接近した趣。
ハンス・ウド・ミュラーのピアノも、過不足無い出来映え。1905年生まれ、指揮者としても活動していた人で、1943年のベルリン空襲で戦災死したそうだが、生きておればと惜しまれよう。
フィッシャー・ディースカウ盤は、彼の最初の録音に当たる1955年のもの。
ピアノの音にはさすがに録音の古さを感じるが、声に関しては最新録音と比べても遜色がない。
その優秀録音に載せて、フィッシャー・ディースカウの美声が鳴り渡る。ヒュッシュよりも歌に傾斜しているように思う。
歌唱のスタイルは、もう完成されたもの、大袈裟に言えば、単語一つひとつに*濃い*表情が付与されている。
圧倒的といえば圧倒的、一世を風靡したのも頷けるが、細部の表情に目が眩んで、シューベルトの音楽の情趣が吹き飛ぶ感がある
ムーアのピアノは、もちろん上手なもの。
シュライヤー盤は、1985年2月17日のドレスデン・ゼンパー歌劇場でのライヴ録音。
これはドレスデン大空襲で破壊されたゼンパー歌劇場が、ようやく再建されたオープニング・シリーズの演奏会。
2月13日の「魔弾の射手」がこけら落とし、14日は「薔薇の騎士」、15・16日は新作オペラやバレエ。
で、17日がこのリサイタル、というから、ある種、記念碑的な録音である。シュライヤーも「冬の旅」は、これが初録音。
声が少々心配だったが、何の何の、美声に更に磨きがかかったような、透明感がある。もう、声の中に哀しみを湛えた美が存在している感じ。
ただ、フィッシャー・ディースカウほどではないが、ポイントポイントでは単語に対する濃厚な味付けを示す。例えば、第15曲「からす」での"Kraehe"(からす)など、喉を絞るような、いかにもカラスという声を出している。(^^;
同じ歌唱観を共有する世代だと思う。
リヒテルのピアノは、雄弁かつ美しいもの、第21曲「旅宿」の前奏・間奏でのコラール風の響きの美しいこと!
第24曲「辻音楽師」の右手の音型のみ、思い入れが強すぎて、ライヤーの無表情ゆえの哀しみが出なかったか。
第8曲の速いテンポと第9曲の遅いテンポ、歌いづらそうに聴こえるので、あるいはリヒテルのテンポかも。
ホッター盤第20曲以降のみの試聴。
ヒュッシュ盤と揆を一にする、淡々かつ深々とした歌唱だが、低い音域で発音がやや不明瞭になるのがマイナス。
第24曲「辻音楽師」の最後をピアノのまま歌い収めているところは評価したい。ここは「若者」の呼びかけにも「辻音楽師」は応えず(あるいは「若者」の傍白にすぎないのかもしれない)、荒涼たる孤独の中に終結すると聴くからである。
 
さて、「冬の旅」に関して、I教授の家《冬の旅》再発見という談話が掲載されている。
ヒュッシュ盤に関して、
昔は絶対とされたSPの復刻です。受講生の中には戦後のヒュッシュの来日講演(日比谷公会堂)を聴いた方もいらっしゃいましたが、改めてお聴きになり、「どうも雑で、これを感動していたのか不思議だ」とおっしゃる。私も、この曲(注、第20曲「道標」)を聴く限り、そう思います。時代の差、というか−−。
と書かれているが、これには少し異論がある。
上記のように、僅かに音のずり上げがあるものの、これは当時の演奏様式の問題で、決してヒュッシュが雑なのではない。こういう歌い方は1950年代まで続いており、フィッシャー・ディースカウでも第9曲「鬼火」の終結では派手にずり上げ・ずり下げをやっている。
それ以外ではヒュッシュの歌唱は極めて端正な、真面目すぎるくらいの歌いぶりである。
「感動していたのか不思議だ」「私もそう思います」となるのも腑に落ちないが、まぁ、これは個人の感性の問題であるとしても、「雑」かそうでないかは、ほとんど事実の問題であり、この点は強く疑問を呈しておきたい。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲第1〜4番(洪HUNGAROTON)
第3番から聴き始めたのだが、プレリュードの第1音の強靱さ、輝かしさにノック・アウトされてしまった。何と素晴らしい音!
先週も第5・6番で書いたが、彼のチェロは、リズム、音程、造型といった音楽の骨格が極めて堅固な上、情感の豊かさにも不足しない。
その甘さを廃した塩辛い音色は、とりわけニ短調の第2番に適合しており、中でも寒風吹き荒ぶ感のあるクーラントが圧倒的であった。

11月6日(金): 前川誠郎『西からの音』@彩流社を読む。
 著者はデューラーの研究で知られる美術史家、音楽史を美術史の用語で語ってみると…
 開巻、まず「バロック音楽」は「バロック様式の美術と同時代の音楽」と時代をあらわす概念なのに、「古典派音楽」「ロマン派音楽」は様式をあらわす概念なので訳が分からない、と一発。

 美術史上はクラシックの発展的解消段階をバロックと捉え、バロックからクラシックという逆行現象はあり得ない(のだそうだ)。

 むしろ、リスト、ベルリオーズ、ワーグナーからブルックナー、マーラー、R・シュトラウスに至る後期ロマン派こそ、古典派音楽のバロック的形態と見るべきもの、と言う。
 で、それ以前のロマン派(シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン)を、後期古典派音楽として位置付ける。音楽の構造・書法において変化がなかったから、というわけだ。
 美術史家らしく、ベートーヴェンをミケランジェロになぞらえる。古典派の完成者であり、その晩年の境地にバロック的展開への要素を孕んでいる点において。

 

レイニエ・ワケルカンプ(指揮)ブラバント室内合唱団ほか、デュリュフレ;レクイエムほか(ERASMUS)
これは浮月斎大人から拝領。
ライナーノートによるとアマチュア合唱団だそうだが、レクイエムは愛惜佳曲書掲載の曲、ひたむきさが敬虔を生む歌唱を期待したい。
オルガン伴奏による録音、「グレゴリオ聖歌の主題による4つのモテット」「我らが父なる神」をカプリング。
指揮者の氏名表記には自信なし。原綴は"Reinier Wakelkamp"。

11月5日(木): 『ショルティ自伝』(草思社)を購入、帰りの電車の中で読み始める。
 なかなか面白そうだ。また読了後にレポートします。

 

アンドレ・クリュイタンス(指揮)ベルリン・フィル、ベートーヴェン;交響曲全集(Royal Classics)
とにかく安い全集、@600円であった(もっと安い店もある)。
昔から高名な全集だが、なぜか縁がなく、一部を除いて聴いたことがなかった。
最近、中古音盤堂奥座敷でお薦めいただいていることから、買ってみたもの。
問題は、聴けるかどうか、だ。
 
鈴木雅明(指揮)バッハ・コレギウム・ジャパン、バッハ;クリスマス・オラトリオ(BISf)
BCJのバッハは揃えることにしているので、即、購入。

 

ルドルフ・バルシャイ(指揮)ユンゲ・ドイチェ・フィル+モスクワ・フィル、ショスタコーヴィッチ;交響曲第7番(BIS)
バルシャイのライヴ録音、1991年ライプツィヒ・ゲヴァントハウスにて。
先日の京都市響と比較すると、こちらの方が感興豊か、オーケストラの音にも余裕というか、共感・確信が感じられる。
ユース・オーケストラとの臨時の合同演奏の方が練れているのだから、チト恥ずかしい、われらが京響。

11月3日(祝): タマラ・カルサーヴィナ『劇場通り』(新書館)を読了。実に楽しかった。
 ディアギレフの人物像に関する記述もさることながら、バレエ学校を卒業するまでの少女時代の部分が、何ともいい味わい。
 少女の優しく繊細な感性が、例えば上質の少女マンガを読むときのように、ときに暖かく、ときに鋭く、読み手の胸に届くのである。
 革命直前の帝政ロシア時代の、あるいは19世紀ヨーロッパ文明のポートレートとしての価値ある著作だと思う。

 「京都の秋音楽祭'98」の一環として開催された京都市交響楽団特別演奏会(指揮:ルドルフ・バルシャイ)@京都コンサート・ホールを聴く。

今日の曲目は
ムソルグスキー;前奏曲「モスクワ河の夜明け」(歌劇「ホヴァンシチナ」より)
ショスタコーヴィッチ;交響曲第7番「レニングラード」
というもの。
1曲目は、まぁ遅刻者救済用という感じだが(^^;、管楽器のソロが美しく、素直に楽しめた。
メインのショスタコーヴィッチだが、バーンスタイン盤(下記参照)とは異なり、やや速めのテンポで淡々と、カッチリと音楽を描いていくタイプの演奏。
これは意外だった。バルシャイのショスタコーヴィッチというと、弦楽四重奏曲第8番の編曲が思い浮かぶのだが、そういう個人的な思い入れを強調した演奏を予想していたのだ。
バルシャイの指揮ぶりも実に几帳面、かつ端正なもの。
木管楽器等のソロも、かなりあっさり、あっけらかんとした吹奏。
第1楽章のヴァイオリン・ソロは、少々破綻気味だったが…
立派な演奏で、京響も全体としては、かなり高いレベルを達成していたが、ショスタコーヴィッチの演奏に期待したい、あの、胸をかきむしられるような感銘を得ることはできなかった。
腕時計に目をやる人をチラホラ見かけたのは事実である。(^^;
なお、金管を分割して、木管の左右に座らせていたのが目立っていた。

 上記演奏会に城多@千駄木音盤要塞司令官閣下、AYA@サロ様王国女王陛下が来臨され、終演後、京都の音盤屋を御案内申し上げる栄誉を賜った。

ヤシャ・ホーレンシュタイン(指揮)ストックホルム・フィル、マーラー;交響曲第6番(UNICORN)
ホーレンシュタインのマーラーのうち、買いそびれていた第6番を購入。
彼はマーラー(とブルックナー)を得意とし、モノラルで第1・9番(V0X)、ステレオで第1・3番(UNIKORN)、第4番(EMI)がある。
VOX盤は未聴だが、ステレオのうち第3番は特に素晴らしく、第4番も好演だった。
 
アンタル・ドラティ(指揮)ロンドン響ほか、バルトーク;管弦楽のための協奏曲(Mercury)
ドラティのバルトーク録音は聴き逃せない。
買いそびれていた1枚が中古格安で見つけたので、購入。
 
ナサニエル・ローゼン(Vc)パヴリーナ・ドコヴスカ(P)ラフマニノフ;Vcソナタ&プロコフィエフ;Vcソナタ(ELAN)
ローゼンは、ピアティゴルスキーに学び、チャイコフスキー・コンクールで優勝した経歴の持ち主。斉諧生的には、カザルスが指揮したマールボロ音楽祭管に参加していたことで記憶している。(^^;
前から少しづつ買い集めているのだが、これはBALKANTON原盤のブルガリア・ソフィア録音、中古格安にて購入。

 

レナード・バーンスタイン(指揮)シカゴ響、ショスタコーヴィッチ;交響曲第7番(DGG)
今日の演奏会の「予習」として。第7番のライヴは初めてだし、ディスクでも長らく聴いていないのだ。
なるほど、素晴らしい演奏だった。
バーンスタインのDGG録音には、えてして彼の体臭を感じることが多いのだが、これにはまったく抵抗がなかった。
一つには、バーンスタインの音楽がショスタコーヴィッチのそれとマッチしたからであろう。
それ以上に大きいのは、シカゴ響の技量が、バーンスタインの思い入れの「濃さ」を、一切の破綻なく表現しえたからであろう。
第1楽章で「チチンプイプイ」の主題が盛り上がったあとの金管の圧倒的な響きや、第3楽章の弦合奏のカロリー十分の響き等、普通のオーケストラなら、バーンスタインに煽られて、音が割れたり濁ったりするところだが、さすがシカゴ響で、そういうことは全くない。
ショスタコーヴィッチのスペシャリスト工藤さんがベスト盤として推奨されるとおりであった。
 
クリスティアン・テツラフ(Vn)バッハ;無伴奏Vnパルティータ第2番(Virgin)
古楽器派の奏法を少し意識して、弓の圧力を軽めにかけているが、音程はしっかりしており、細かい音符もちゃんと鳴っている。
基本テンポがやや速めで、「スピード感があってよろしい」とするか、「弾き急ぎ気味で落ち着かない」とするか、意見が分かれるかもしれないが、斉諧生はプラスに評価したい。
腕にまかせて弾き飛ばしているのではなく、若い心がバッハの精神をひたむきに追究しているのが伝わってくる好演だ。

11月1日(日): 本日夜、20,000アクセスに達しました。
 公開が昨年8月上旬、10,000アクセスが5月末でしたから、ちょっとペースが上がったことになります。
 皆様の御愛顧に感謝申し上げるとともに、今後も精進いたしますので、よろしくお願い申し上げます。<(_ _)>

 あれもこれもと思うのだが、実際に聴けるのは、ごくわずか。(T_T)

イーゴリ・マルケヴィッチ(指揮)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ムソルグスキー;展覧会の絵・禿山の一夜(東独ETERNA、LP)
一聴して録音の良さに驚く。たぶんマルチ・マイクで拾っているのだろうとは思うが。
冒頭のトランペットの音色の渋さは中欧のもの。それに続く弦のフレージングが、面白い。流れることを拒否して、念を押すような趣。
マルケヴィッチの指揮は、全体に中庸やや遅めのテンポでじっくり弾かせ、克明さから迫力を生み出すことを狙っているようだ。
また、フレージングやアゴーギグに独特のものがあり、とりわけ各曲の終結に味がある。
例えば、普通なら畳みかけるように締めくくるところを、あえてブレーキを踏む(「小人」「ゴルトベルクとシュミイレ」等)、あるいはフェルマータをかなり引き延ばす(「古城」等)。
残念ながら、オーケストラの力量がラヴェルの、マルケヴィッチの要求についていかない。「キエフの大門」の金管など、ずいぶん苦しそうである。
これがベルリン・フィルあたりなら、もの凄い迫力が生まれたであろうが…
その点、「禿げ山の一夜」は、弱点が出ない範囲に収まった感じで、マルケヴィッチの克明な表現が迫力を生んでいる。
鐘が鳴ってからの、かなり遅めのテンポが美しく、中でもフルート・ソロは格別。終結和音の引き延ばされたフェルマータも味わい深い。
 
ジョン・バルビローリ(指揮)ハレ管、バターワース;狂詩曲「シュロップシャーの若者」(米Mercury、LP)
第2面に収録されているのだが、針を下ろして驚いた。ジャケット・レーベルの表記は1曲目がバターワース、2曲目がバックスなのだが、実際には逆だったのだ。
バルビローリは、鳴らすところはしっかり鳴らし、切々たるフレーズは切々と歌う。
ハレ管がもう一つ上手くなく、足を引っ張っているのは残念。
 
ポール・パレー(指揮)デトロイト響、「マーチ万歳!」(米Mercury、LP)
音的には素晴らしいが、やや高域が薄く硬い感じがするのは後期プレスのせいか。(このあたりに拘り出すと…怖ろしい未来が…)
どうということもない曲ばかりだが、オーケストラは、気合いの入った、充実した鳴りっぷり。
 
ミクロシュ・ペレーニ(Vc)バッハ;無伴奏Vc組曲第5・6番(洪HUNGAROTON)
やはり素晴らしかった。本日最大の収穫。
第5番の最初の音には、言葉を失う。
ただ強く大きく鳴らすのではない。その響きにはどこか空虚を蔵し、ディミュニエンドが虚無感をいや増す。まさしく玄玄たる(くろ)い音。
プレリュードには瞑(くら)い情熱が滾っている。
アルマンド以下も完璧。他の名演の数々を、いや数々の名曲を忘れて、この音楽にすべてがあると思った。
ペレーニのチェロは音程、リズムが極めてしっかりしており、音楽が実に堅固、曖昧さがない。チェロ独特の発音の重さ・遅さを一切感じさせないのは驚異的だ。
といって、機械的な・冷たい演奏なのではない。第6番のアルマンドの情感に満ちた懐かしさ!
この名演が知られないのは不審。甘さの一切ない、塩辛い音色が近寄り難いのであろうか…。
 
ヤン・ルングレン(P)ほか、「コンクルージョン」(FOUR LEAF CLOVER)
ヤン・ルングレン(P)ほか、「クッキング!」(FRESH SOUND)
下記の更新作業をしながらルングレンを聴く。
ほんとうに上機嫌で、楽しくて、美しい音楽。
聴く人を幸せにするピアノだ。

 ようやく先週の買い物ツァーのが完成した(10月24日の項へ↓ジャンプ)。
 また、それをもとに、アンゲルブレシュトレイボヴィッツパレーのディスコグラフィに、データとジャケット写真を追加。


平成10年5月5日(祝): 「作曲世家」に近代スウェーデンの作曲家ステンハンマルを掲載。

平成10年2月8日(日): 「逸匠列伝」にルネ・レイボヴィッツを掲載。

平成9年11月24日(休): 「名匠列伝」に、アンゲルブレシュトを追加。

平成9年9月15日(祝): 「畸匠列伝」に、マルケヴィッチを掲載。

平成9年8月24日(日): 「名匠列伝」にカザルスを追加。

平成9年8月8日(金): 『斉諧生音盤志』を公開。


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