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2005年03月13日

ヴロンスキーの「アイネ・クライネ」

ペトル・ヴロンスキー(指揮) チェコ室内フィル
モーツァルト;セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(GZ)
先月9日に購入して以来、ずっと気になっていたヴロンスキーの「アイネ・クライネ」を、じっくり聴いてみる。
対照盤はシャーンドル・ヴェーグ(指揮) カメラータ・アカデミカ・ザルツブルクのスタジオ録音(1986年10月、CAPRICCIO)とライヴ録音(1990年7月、Philips)。
 
決定盤との令名高いヴェーグのスタジオ録音盤を聴き直すのは久しぶり。
第1楽章が比較的速め、テンポの動きが少なく、きっぱりしたアーティキュレーションで、かなり硬派・辛口の演奏という印象を受ける。残響を比較的多めに取り入れた録音とも相俟って、堂々たる響き、剛毅な音楽。
同じ指揮者・団体ながらライヴ盤ではテンポの振幅も少なくなく(第1楽章10小節や第2楽章12小節でのリタルダンドなど)、ややデッド・オンマイクの録音で演奏者が近く感じることもあり、インティメイトな音楽として受け止めたくなる。
 
ヴロンスキー盤は、どちらかというとヴェーグの91年盤寄りのスタイルか。
聴感上、編成はかなり小さいものと思われる。各パート2人か多くて4人程度ではないか。
そのため、音色の変化やヴィブラートのかかり具合まで、手に取るようで、演奏の繊細さを如実に聴くことができる。
例えば第1楽章では、54小節冒頭で第1Vnが弾く付点四分音符にかけられた深いヴィブラートや、127小節の音色の曇らせ方など、琴線のふるえに手で触れるような心地と言えようか。
中でも強い印象を受けたのは、第2楽章38小節以下のターン音型で、第1音をごく僅か長く弾く奏法。
指揮者の指示なのか楽員の音楽性なのかチェコに伝わる演奏伝統なのか、つまびらかにはしないが、これによってターンが単なる装飾音ではなく、音楽的感情の表出に高められたのである。
あまり知名度の高い演奏者たちではないが、実に素晴らしいモーツァルト。
ぜひ他の作品、例えばドヴォルザークの弦楽セレナードあたりを聴いてみたいもの。チェコのマイナーレーベルあたりに録音があればよいのだが。

投稿者 seikaisei : 2005年03月13日 21:08

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