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2004年09月12日

オリヴィエ・シャルリエのサン・サーンス

奈良フィルハーモニー管(公式Webpage)の第15回定期演奏会を聴く。
会場は奈良県文化会館・国際ホール。
 
創立20周年記念演奏会ということで、指揮者に秋山和慶を招聘、オール・フランス・プログラム。
ラヴェル;組曲「マ・メール・ロワ」
サン・サーンス;Vn協第3番
ビゼー;交響曲第1番
 
サン・サーンスの独奏者はオリヴィエ・シャルリエ、この人を聴きたくて奈良まで出かけたのである。
シャルリエにノックアウトされたのは2002年1月奥田一夫(Cb)とのデュオ・リサイタルでのフランク;Vnソナタ(ピアノは児嶋一江)だった。
今日は1階中央の前から2列目に席を取り、オーケストラよりもヴァイオリンを聴く態勢。
 
とにかく独奏に関しては、全く間然とするところない素晴らしい演奏。
フランス風の美音と、洗練された節回し。完璧と思えるボウイング、音がよれたりぶれたりすることがない。
攻めるところは敢然と攻め、引くところはすっきりと引き、ヴァイオリンを聴く醍醐味を満喫できた。
第2楽章終結のフラジョレットの連続でも、まったく危なげないばかりか、本当に美しい音がする。
 
CD録音も少なくはない人だが、もっと知られてよいのではなかろうか。
もしかしたら、音そのものの強烈な魅力という点で一歩を譲る(美音ではあるのだけれど)のがマイナスなのかもしれない。
 
拍手に答えてアンコールにジャン・マルティノン;ソナチネ
作曲者は有名な指揮者と同一人物だろう。作品番号等は不詳。
シンコペーションを多用した無窮動風の急速な音楽で、胸がすいた。
更にもう1曲、弦楽合奏を従えて、文部省唱歌;紅葉(編曲者不詳)。
つまり"秋の夕日に照る山紅葉~"、編曲者不詳。
これも暗譜で弾いていたのには感心させられた。
 
ラヴェルビゼーに関しては、さすがに秋山氏というべきか、骨格のしっかりした音楽で、ラヴェルのふんわりした味わいや、ビゼーのキビキビした推進力が、ちゃんと音になっていた。
ただ、オーケストラ側、特に管楽器の表現力が乏しく、良くいえば淡彩の音楽、敢えていえば作品の魅力を描き出せていなかったのは残念。
 
例えばビゼーの第1楽章でObの大きなソロがあるのだが、ちゃんと吹いてはいるのだが音が小さく抑揚を欠く。
指揮者が左手の掌を上に示して「もっと膨らませて!」と指示しているのだが、余裕がないのか、反応できない。
第2楽章で美しい主題を提示する、もっと長いソロでも似たような状態であった。
 
あるいは、サン・サーンス第3楽章のクライマックスでTrbが吹くワーグナーばりのコラールが、力も覇気もない吹奏。
独奏者が困ったような顔をして金管の方を眺めていたのが印象に残っている。
 
更にいえばビゼーの第1楽章で、Hrnの首席奏者がプロとは思えないような大トチリを連発し、2回目にはそのあおりで木管が止まりかけるという大事故に発展していた。
 
このあたりは、もっとプロらしくしていただきたいところだ。
 
アンコールはビゼー;『アルルの女』より「ファランドール」
前記のような状態にいささか興醒めていたので、音楽は盛り上がっていたが、どうにも空虚に響く心地を禁じ得なかった。

投稿者 seikaisei : 2004年09月12日 22:35

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