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5月3日(祝): ウィーン旅行第2日。
 
 昨日、同行者から「ウィーンに来たからにはオペラも観たい」とのリクエストがあり、急遽、出発前日(7日夜)に観劇することに決定。
 チケット入手のため、シュターツオーパー横の国立劇場切符売場へ行く。筋向かいのブロックの中庭側にあり、気を付けていたのだが、やはりわかりづらかった。
 7日のシュターツオーパーはグノー;「ロメオとジュリエット」、この作曲家にそういう作品があるとは知らなかった。それでも立ち見以外は売り切れというので、フォルクスオーパーのブリテン;「真夏の夜の夢」に変更。曲目としてはこちらの方が魅力的である。建物としてのシュターツオーパーは、別途、内部見学ツアーを狙うことにする。
 ところが窓口でうっかり「月曜日の〜」と言ってしまい、6日のチケットが差し出された。「真夏の夜の夢」とも言っていたのだが、錆び付いた発音では通じなかったようだ。
 慌てて変更してもらうが、月曜日は人気演目「こうもり」のため3階席しか空いておらず、けっこう空席があったブリテンでも、そのまま3階席になってしまった。同行者にはチト申し訳なし。
 

(国立劇場切符売場) (カラヤン・センターその1) (カラヤン・センターその2)

 リンク通りを渡って、ヘルベルト・フォン・カラヤン・センターへ。
 売店に置いてあるCDは、カラヤン指揮のもの、メジャーレーベルの新譜、子供向けのもの等、食指の動かぬものばかりだが、書籍を数点購入。
 

Bernhard Paumgartner
"Erinnerungen"(Gesellshaft für Salzburger Landeskunde)
長くザルツブルク音楽祭を支えたモーツァルテウム音楽院長、パウムガルトナーの回想録。彼の生気溢れるモーツァルト演奏は斉諧生の好むところであり、興味を惹かれて購入。
200頁に満たぬ小冊だが、十数頁の写真と附録のCDは魅力的。
 
Harrietta Krips
"Josef Krips Erinnerungen"(Böhlau)
クリップス夫人による浩瀚な回想録。この指揮者も、モーツァルト演奏をはじめ好きな人なので、購入。600頁近いものだが、さほど高価ではない。
写真多数、CD1枚付き。後者は、指揮者が1973年11月26日に楽友協会ブラームス・ザールで行った講演「ウィーンでのオペラ指揮50年」の録音である。
 
Dieter Härtwig
"Die Dresdner Philharmonie"(Altis)
ドレスデン・フィルの歴史に関する本。
以前、似たような古書を国内で入手したことがあり、同じものかどうか迷いつつ購入。帰ってから調べてみると、はたして同じ著者。
ただし、前のは1985年発行、今回のは1992年発行で、内容も大幅に改訂されているようだ。
ヘルベルト・ケーゲルにも1章が割かれており、図版も充実されている。
 
Bernhard Leitner
"Musikerkarikaturen"(Atlantis Musikbuch)
指揮者・演奏家のカリカチュア集。
クナッパーツブッシュシューリヒトモントゥーなど好きな人が多く取り上げられており、絵柄も面白いので買ってみた。

 家人も土産用に記念品を大量に購入、予期以上の収穫で心弾ませつつ、楽友協会へ。周囲が工事中でわかりづらくなっている。
 チケット売り場で、家人ともども、土産用にマウスパッドなどを購入。←のリンク先には、大ホール内部のものが掲載されているが、それ以外に建物正面のものも販売されていた。
 
 続いてコンツェルトハウスに立ち寄るが、特段の記念品等は販売されていなかった。
 

(シェーンベルク・センター外観) (特別展「シェーンベルクと彼の神」) (シェーンベルクとアインシュタイン)

 旅行前にWebで見つけたアーノルト・シェーンベルク・センターを訪問する。ここがまた入り方のわかりにくいところで、ようやく辿り着いても、入り口のブザーを押してドアを開けてもらわないと入れない。どうやら、資料館というより研究所といった風。
 まず、特別展「シェーンベルクと彼の神」を見学。解説文(英・独)を読むのが骨だが、手稿や浄書譜、写真など、貴重なものを多数見ることができて面白かった。
 メディア・センターと札の下がった部屋で、CD・楽譜・書籍などを展示してある。訊くと販売用とのこと。作曲家の大きな顔写真が入ったTシャツなどという着る気のしないものもあったが、家人はシェーンベルクの画集や絵葉書を買い、斉諧生は国内で見たことのないCDを1枚購入(あとのCDは、メジャー・レーベルやKochあたりの日本でも入手可能なものばかり)。

 

マルティン・ムメルター(Vn)ミリティアディス・カリディス(指揮)ウィーン放送響 ほか
シェーンベルク;Vn協 ほか(Extraplatte)
独奏者は1948年インスブルック生れ、生地とフィラデルフィアで学び、20世紀音楽を得意とし、現在はザルツブルク・モーツァルテウム音楽院ほかで教職にあるという。
オーストリア放送によるライヴ録音で、1979年5月26日、リンツ・ブルックナー・ハウスでの収録。
カプリングも魅力的で、
ベルク;Vn協(ペーター・コイシュニヒ(指揮)インスブルック・チロル響、1985年11月15日)
B.A.ツィンマーマン;Vn協(ペーター・エトヴェシュ(指揮)バイエルン放送響、1989年4月7日)
というもの。
なお、レーベルの公式Webpageは→ここを押して

まだまだ見たかったが、「会議を始めるので」と追い出されてしまった(汗)。
 レジ横のモニターで、シェーンベルクが指揮している映像が流れており、ビデオを売ってもらえないか尋ねたが、非売品とのことで涙をのむ。
 
 ホテルに戻り、筋向かいの市立公園を散策。ヨハン・シュトラウスブルックナーシューベルトの像と記念撮影(笑)。

(ヨハン・シュトラウス) (ブルックナー) (シューベルト)

 
 夕刻、再びコンツェルトハウスへ。ホテルから歩いてすぐのところなので助かる。

今日の演奏者は、
ウラディミール・フェドセーエフ(指揮)
マイケル・コリンズ(Cl)
ウィーン交響楽団
曲目は、
モーツァルト;Cl協
マーラー;交響曲第6番
というもの。
1階ロビーでCDを売っており、売り子の若い女性が「今日の曲目よ」と薦めてくるが、ザビーネ・マイヤーのEMI盤やブーレーズのDGG盤。
「今日の指揮者のCDはないか」と訊くが、首を横に振るばかり。
 
なお、プログラムはホール内を歩いている係員から買う方式で、これは楽友協会やフォルクスオーパーでも同様。
 
正面オルガン演奏席の脇に、携帯電話禁止の標識が掲げられており、洋の東西を問わないものと面白く思った。
なお、標識は楽員入場時に片付けられた。
 
客席は、満員といっていい入り。
男性は、一部の例外を除いて、スーツ・ネクタイ姿。女性も軽装の人は少ない。
荷物が増えるのを我慢して、スーツ一式を持ってきて良かったと思う。
席は、2階正面右寄りの最前列をとってもらっていた。
 
モーツァルトは、柔らかい弦の響きで始まった。
第1Vn12人→Cb4人という編成。
Vnは対向配置、Vcを中央左手にCbを舞台中央最後列に配置する。
Hrnは、音色からするとウィンナ・ホルンではないかと思うが、遠すぎて形状は確認できなかった。
 
フェドセーエフの指揮は、基本的にはウィーン風を外さないものだが、ときにピアニッシモを強調し、ときにホルンを強めに出すあたりが、彼らしい。コリンズの吹奏も柔らかいもの。
 
第2楽章の半ば過ぎ、短いカデンツァのあと、大きくテンポを落とし、ひそやかなピアニシモで続ける。
ソリストの解釈か指揮者の音楽かわからないが、良いコラボレーション。
独奏と弦(第1Vn)の掛け合いも美しい。フェドセーエフの手腕、さすがと唸らされる。
 
マーラーでは、一変、筋肉質な響きが際だった。
弦合奏は、第1Vn16人→Cb8人に増加。
第1楽章冒頭、Vc・Cbのイ音が、実に元気よく響く。
一般的には、もっと重々しく、陰々滅々と響くものだが、アタックが鋭く明るい音色なのだ。
あとでスコアを見ると、スタッカート記号が付されている。それを生かした解釈と思われる。
 
全体に、音に余分なふくらみやグリッサンドが無く、耽美・思い入れを排し、音響をストレートに打ち出している。カウベルの音も直接的に響き(舞台裏でも、すぐ近いところにある感じ)、彼岸的な思い入れを喚起するふうではない。
ビシリビシリと決めどころを決めた演奏で、斉諧生的には快感だが、例えばテンシュテットのマーラーを好む家人には衝撃的だったそうだ。
 
スケルツォも早めのテンポで、実に元気(笑)。
トリオの主題には、マーラーの子どもたちが遊ぶさまだという話もあるが、全然それらしくなく、いかつい感じ。
 
第3楽章、弦の主題提示は美しく、レガートに永遠を思わせる感がある。Obによる主題の吹奏も、美しく、歌心が素晴らしい。
もっとも、楽章後半でも音楽は丹念にコントロールされており、むせ返るような陶酔感や激情の噴出といったものには乏しい。
 
第4楽章も、誠に英雄的で、破滅や悲劇とは縁遠い。
ハンマーが打たれても、音楽がまったく変わらない。「英雄が運命に打ち倒される」というより、激励されて元気になるような趣がある。
なお、ハンマーはティンパニ奏者が持ち替え。こういう処置は珍しいのではないか。
 
思うに、既成のマーラー演奏とは一線も二線も画した、フェドセーエフの確信犯的な演奏ではなかったか。
演奏中(楽章間ではない!)に退席する人や、終演後すぐに帰る人が多かったのは、そうした挑戦への拒否反応だったかもしれない。
 
オーケストラは上手いもので、特にTrpは光っていた。
ただ、音が客席の方に来ず、音圧があまり強くない。この点は少々欲求不満。
これは、かなり天井の高いホールであるにもかかわらず、舞台上方の反響板が設置されていないためではないか。
この点、京都コンサートホールと似ており、壁際の打楽器が派手に響く弊も共通している。

 

(客席から舞台を望む) (携帯電話禁止看板) (片付けられる看板)

 


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