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2005年02月02日

大阪シンフォニカーのシベリウスを聴く

久々にオーケストラの定期公演を聴きに出かける。大阪シンフォニカーの第98回定期で、会場はザ・シンフォニー・ホール。
大阪での平日19時開演は京都から参じるにはチト厳しく、何度か行きたい演奏会を逃していた。
今日は幸い早めに退勤でき、最も聴きたいプログラムを逃さずにすんだ。
すなわち、
シベリウス;交響曲第7番
猿谷紀郎;音の風韻II
シベリウス;交響曲第5番
という、シベリウスの後期交響曲2曲を採り上げるもの。
猿谷作品はオーケストラの委嘱新作とのこと。
 
ただ、事前に少し心配だったのは指揮者が山下一史氏という点。
北欧のオーケストラを指揮した経験が多いこと(ヘルシングボリ響マルメ響等)を買われたのかもしれないが、斉諧生の知るかぎり、この人は熱っぽい推進力が持ち味。
悪く言えば「煽り系」の人ゆえ、第1・2番あたりなら格別、後期作品に適合するかどうかは問題だと思っていた。
 
そうした先入主のせいとは思いたくないが、満足のゆかない結果となってしまった。
 
第7番は、弦合奏の響きが厚ぼったくなってしまっている(合奏の精度が低い)等、練度が低い印象を受けた。
弦の編成は14-12-10-8-6。
また、木管の性格的な音色を生かし切れておらず、金管の厳しい打ち込み(短く「ババッ」と吹き抜く部分)が意味を持たない等、斉諧生として「これぞシベリウスの音楽の醍醐味」という「ツボ」を外された感が拭えない。
 
特に全曲終結の直前、第1・第2Vnだけになって、全音符をクレッシェンドで弾き上げて、「Affettuoso」指定の絶唱を歌う部分。
ここで胸に沁みるような響きを奏でてもらえなかったのは、たいへん残念だった。
もっとも、斉諧生はシベリウス(とブルックナー)の演奏に関して「かくあるべし」が強すぎることは自覚しているので、その点は割り引いてお読みいただきたい。
 
また、この曲の終結は、けっして「閉じられる」ものであってはならず、解決しないまま消え入ってゆくもの、敢えて言えば「永劫回帰」の無限の世界へ溶けこんでいく趣を表現しなければならない。
非常に狭い考えといえば狭いのだが。
ここが満足できたのはベリルンド(指揮) ヨーロッパ室内管盤(FINLANDIA)のみ。
その点、当夜の演奏は、やはり「終止符を打つ」傾きを強く感じたと言わねばならない。
 
7番で失望したのが祟って、オーケストラはかなりよく弾いていた第5番の評価も、辛くなってしまう。
第1楽章最初の高揚で既に「煽り」傾向が感じられ、北欧の厳しい大自然を仰ぎ見る趣を失ってしまった。
ややあって長大なソロを吹くFgも、自然音ではなく人間の歌になっており、斉諧生のシベリウス演奏の理想とは食い違う。
楽章後半への入りや楽章終結も、騒ぎすぎというのが正直な感想である。
 
第3楽章の終わり近く、Vc以上の弦楽器が第2主題を奏ではじめ("Un pochettino largamente")、更にTrpが動機を反復しだすと("largamente assai")、Va以上の弦楽器が第2主題の前半を2度繰り返す。
ここでの浄福感こそがシベリウスを聴く喜びであり、音楽を聴く幸福である。
さすがにVnなど気持ちのこもった響きを聴かせてくれたが(コンサートマスターは森下幸路)、もっともっと…と思わずにはいられなかった。
 
なお、最後のTimpは、前打音を極力近づけて目立たなくする処理。
 
初演の「音の風韻II」は、オーケストラが色彩豊かな雲のようにたなびく中を、オーボエ独奏が官能的に歌い、ギターがそれに和す、という曲調(演奏時間20分ほどだったか)。
オーボエの美しい音色を堪能させてもらったが、ギターは見せ場(聴かせどころ)が乏しく、少々気の毒な感じがした。
 
なお、一言しておきたいのはプログラムの冊子に掲載された雑喉潤氏のシベリウス作品解説の酷さ。曰く、
第5番と第7番は、シベリウスの交響曲のなかでは、日本では演奏の機会のもっとも少ない2曲である。
統計的には第3・6番の演奏頻度が最も低い筈である。
ベートーヴェンの交響曲は、3・5・9と奇数ナンバーの作品が名曲とされるが、シベリウスは反対に2・4・6と偶数ナンバーの出来がよいといわれる。しかしこれはあまりに通俗的な評価にすぎず
第4・6番が通俗的に高く評価されているとは聞いたことがない。
7番を先に持ってきたのは、(略)演奏時間も約10分と短いからだろう。
一度でも聴いたことがあるのなら、約20分と書くべきだろう。誤植であることを祈りたい。

投稿者 seikaisei : 2005年02月02日 23:55

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