作曲者 曲名 推薦盤 簡単なコメント
バッハ 管弦楽組曲第3番 ジョルディ・サヴァール
(Astree)
第2曲のアリアが有名だが、序曲の音楽的充実度は、管組の中でも抜群。オリジナル楽器の艶やかな味わいが満喫でき、演奏も立派なサヴァール盤を推薦したい。
バッハ フーガの技法
カール・リステンパルト
(ACCORD)
暖かく厚みがあり、躍動と愉悦に溢れ、それでいて威風とほのかな哀しみを併せ持つバッハ。名だたる奏者の面々が繰り出すソロの魅惑も堪えられない。とりわけ典雅にして淡愁を帯びた、絶妙の合奏が聴ける「対位法15」は、音楽における抽象性と感覚美の完全な合一を具現している。
バルトーク 弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 フリッツ・ライナー
(BMG)
1楽章の緊張感、2楽章の迫力とユーモアが見事に結合したスケルツォ、3楽章の闇、4楽章の白熱。1楽章のクライマックスの後の弦のグリッサンドや3楽章のシロフォンのリズムには、日本的感性に通じるものがある。名盤が目白押しだが、原点ともいえるライナー盤を。
バルトーク 弦楽のためのディヴェルティメント アンタル・ドラティ
(Hungaroton)
オケの技量や録音に関してはベスト盤と言えないが、2本のスピーカーの間に、バルトークの深い「闇」が現前する点では、この演奏に優る盤はない。
バターワース 管弦楽曲集 グラント・ルウェリン
(Argo)
壊れそうに繊細な「シュロップシャーの若者」、民謡の旋律が楽しい「緑柳の堤」、「2つのイギリス牧歌」。珠玉の名品を残して、第一次大戦に散ったバターワース。
ベートーヴェン 「エグモント」序曲 ジョージ・セル
(DECCA)
コーダでユニゾンのヴィオラとチェロが高音域で半音階的に下降し、そこへ第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがぶつかりあうところがあり(307小節以下)、その効果に戦慄を覚えたものだ。よほどの凡演でない限り興奮する曲だが、指揮者の厳しい音楽とウィーン・フィルのこくのある音色が相乗効果をもたらす、セル盤を。
ベートーヴェン 「レオノーレ」序曲第3番 カール・ベーム
(CANYON)
名曲ゆえ名盤にめぐりあえぬ部分もあるが、全曲盤の一部で申し訳ないが、伝説的名演で。
ショパン 軍隊ポロネーズ(グラズノフ編) カーメン・ドラゴン
(EMI)
グラズノフがショパンの独奏曲をオーケストレーションした組曲「ショッピニアーナ」の第1曲。
編曲がすばらしい。ピアノ曲であることを忘れさせる。とりわけ、中間部の旋律を金管楽器が嚠喨と吹奏するところは、ワーグナーのタンホイザー序曲を思い起こさせる。
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲 デジレ・エミール・アンゲルブレシュト
(DisquesMontaigne)
冒頭のフルートの旋律には、官能性、けだるさだけではなく、高貴さ、神々しさも備わっている。パンの神は、色好みではあるが、神性を持っている。この旋律にはそれだけの意味がこめられている。そして、95小節で冒頭の主題が戻ってくる時の、サンバル・アンティクの清澄な響き! 旧き佳き仏蘭西の音色が、椅子のきしみの音も床しいアンゲルブレシュトのライヴ盤を。
ドビュッシー 夜想曲 デジレ・エミール・アンゲルブレシュト
(DisquesMontaigne)
つかまえどころのない「雲」。光彩陸離とした主部と物悲しい中間部の対照が印象的な「祭」、母音歌唱の美しい「シレーヌ」。
ディーリアス 管弦楽曲集 トーマス・ビーチャム
(EMI)
どれか1曲に絞るのは難しいが、初めて聴くには「そり乗り」とか「春初めてのカッコウを聞いて」、「河の上の夏の夜」あたりがよい。「そり乗り」からは子供達の歓声が、「春初めての…」からは早春の空気が、「河の…」からは蛙が鳴くどろんとした闇の匂いが、聴こえてくる。演奏は、古いものだが、やはりビーチャムが最上。
ドヴォルザーク セレナード クリストファー・ウォーレン・グリーン
(Chandos)
セレナードは2曲ある。作品22は弦楽、作品44は管楽。爽やかな弦楽セレナード、ひなびた管楽セレナード、両方とも捨て難いので、2つをカップリングした盤を。いくつかあるが、新進ウォーレン・グリーンの表現意欲に満ちた演奏で。
フォーレ マスクとベルガマスク ミシェル・プラッソン
(EMI)
フォーレの管弦楽曲、「ペレアスとメリザンド」組曲も有名だが。組曲どうしでは優劣はつけ難い。しかし、声楽が入ると文句なしにこっち。ぜひプラッソン盤で。とりわけ「マドリガル」が牧歌的で美しい。
ガーデ 弦楽のためのノヴェレッテ アルフス室内管
(PAULA)
北欧の清冽な抒情を弦の音に変換すれば、この曲になるのではないか。下記のグリーグも、シベリウスの曲も良いが、これほど清らではない。
ガーシュウィン 交響的絵画「ポーギーとベス」 アンタル・ドラティ
(DECCA)
「サマータイム」は誰でも知っているがほかにも「ポーギーとベス」には魅力的な旋律がいっぱい。ラッセル・ベネット編曲の交響的絵画では名旋律を優秀なアレンジでたっぷり楽しむことができる。「主よ、私は祈りの道を」の旋律で盛り上がるラストは感涙もの。ドラティ盤が、演奏・録音ともに上々。
ヒナステラ パブロ・カザルスの主題によるグローセス ジゼル・ベン・ドール
(KOCH)
4楽章で、ヴァイオリンの高音域や木管が鳥のさえずりを模す中、チェロがユニゾンで奏する「鳥の歌」の崇高なこと! そこから浮び上がるのは、「永遠」という観念。音楽の玄妙さを思う。
グリンカ 「ルスランとリュドミラ」序曲 エフゲニー・ムラヴィンスキー
(BMG)
故・三谷礼二氏が「プロ野球1シーズン分、オリンピック大会4回分ぐらいのエネルギー、わずか数分に」と評した演奏である。(オケが鳴り切っていないとの批判をする人はライナー盤を。)
グリーグ 組曲「ホルベアの時代から」 オトマール・スウィトナー
(徳間)
前奏曲の弾んだリズム、サラバンドの憂愁、エアーの旋律美。擬バロックの弦楽合奏曲の中の最高峰だ。やや古い録音ながら、スウィトナーが最上。
伊福部昭 交響譚詩 広上淳一
(BIS)
夭折した次兄への追悼曲として、戦時中に書かれた作品。比較的初期のものだが、結局、伊福部の最良の部分のエッセンスとなったのではないか。
レハール ワルツ「金と銀」 ルドルフ・ケンペ
(DENON)
通俗名曲と軽んじるなかれ。ケンペとドレスデン国立管の名演のもとでは、R・シュトラウスの交響詩のような華麗さを誇る。
メンデルスゾーン 付随音楽「真夏の夜の夢」 オットー・クレンペラー
(EMI)
神韻縹渺、とはこうした曲、演奏を言うのだろう。
モーツァルト 「フィガロの結婚」序曲 オットー・クレンペラー
(EMI)
早いテンポで決める演奏はよくあるが、遅いテンポで、なお名演奏。POとの序曲集よりもNPOとの全曲盤の演奏がベター。
モーツァルト セレナード第13番 パブロ・カザルス
(Sony Classical)
いわゆる「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。可愛らしく演奏するなら誰にでも出来るが、カザルスのゴリゴリ低弦が押し寄せてくる迫力!
モーツァルト ディヴェルティメントK136 斎藤秀雄
(東芝)
斎藤一門のテーマソングの、師匠本人がスタジオ録音した超辛口の名演奏。演奏は全盛期の桐朋学園弦楽合奏団、Vnに安永徹、Vcに藤原真理、Cbに堤俊作!
パーセル シャコンヌ(ブリテン編)  ベンジャミン・ブリテン
(DECCA)
「キャロルの祭典」といい、この曲といい、ブリテンの目利きには感服する。
(全曲のMIDIファイル(19kB)用意しました。まだ音符を打ち込んだだけで表情をつけていませんが、ぜひお試しください。→)
ラヴェル 亡き王女のためのパヴァーヌ ピエール・モントゥー
(DECCA)
「神々しい」の一語に尽きる不滅の名演。
ラヴェル スペイン狂詩曲 ポール・パレー
(Mercury)
ふにゃけたラヴェルなんか、いらない。録音は現代のものより生々しく心に訴える。
R・コルサコフ 交響組曲「シェヘラザード」 レオポルト・ストコフスキー
(DECCA)
中学生の頃、岩波文庫の『千一夜物語』を全巻読み通した。ちょうど春に目覚める頃とて、エロティックな話を愛読した記憶がある。録音は少々古くなったが、この曲はストコでなければ! 
ルーセル バレエ音楽「蜘蛛の饗宴」 ジャン・マルティノン
(シカゴ響自主製作)
生のはかなさを昆虫たちの姿に託して、透明感のある管弦楽が美しい。組曲版だが、シカゴ響の技量・表現力が図抜けたマルティノンのライヴを推す。なお、レイボヴィッツ盤LPでは若いランパルが物凄いソロを吹いている。
シベリウス 組曲「恋する人」 ジョン・バルビローリ
(EMI)
シベリウスが何度もいろんな形に編曲して愛し抜いた曲。故・山田一雄が、この曲を振り終えた瞬間、ハンカチで目頭を拭われた光景を思い出す。第1楽章のMIDIファイルです→
ステーンハンマル 管弦楽のためのセレナード エサ・ペッカ・サロネン
(Caprice)
透明な明るさと、仄暗い北の抒情が交錯する名曲。とりわけ第4楽章「ノットゥルノ」の美しさ! フルート独奏の余情、ホルンのこだま、繊細な弦の歌…
R・シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」 ヨーゼフ・クリップス
(Orfeo)
指揮者が一番振りたい曲がR・シュトラウスだというが、「聴き欲」をそそられる曲ではない。「ツァラ」もファンファーレだけで十分ではないだろうか。まぁ、短くて面白いのが「ティル」だ。セル・クリーヴランド盤も痛快だが、色気に欠ける面がある。クリップスのライヴ録音でどうぞ。
ストラヴィンスキー ペトルーシュカ イーゴリ・マルケヴィッチ
(EMI)
ともに全盛期にあったマルケヴィッチとフィルハーモニア管による入魂の名演。切れ味鋭いリズムと舌を巻く名技、そして何より、充溢したエネルギー! 抜粋なのが惜しい。実に惜しい。全曲ならスピード感満点、格好良さが冠絶したサロネン盤(Sony Classical)。
スーザ 行進曲「星条旗よ永遠なれ」 レオポルト・ストコフスキー
(EMI)
痛快なストコの編曲! シロフォンの響き! テンポの動かし方!
ワーグナー ジークフリート牧歌 ハインツ・レークナー
(徳間)
暖かい弦の響き。こんな音、聴いたことがない。
ワーグナー ジークフリートの葬送行進曲 ハンス・クナッパーツブッシュ
(DECCA)
クナッパーツブッシュ盤以上の感動を与えてくれる演奏はない。年代は古いが、当時の最優秀録音であり、近めのマイクがウィーン・フィルの高雅な音色をヴィヴィッドに伝えてくれる点、むしろ最近の録音よりよい部分もある。