演奏者名等 アルバム・タイトル 簡単なコメント
ウェイン・マーシャル(P)
バリー・フォージー(指揮)
BBCビッグ・バンド
Swing It! 
(Virgin)
「A列車で行こう」・「ス・ワンダフル」・「ビギン・ザ・ビギン」・「スィング・スィング・スィング」等々、所謂「スウィング・ジャズ」の名曲で、マーシャルが美しいピアノを弾いている。とにかく楽しいアルバムで、「アンヴィル・コーラス」など、来るぞ来るぞとわかっていても、ヴェルディの主題がサキソフォン合奏で吹き鳴らされると、本当に笑えてしまう。ひところ休日の朝は、必ずこれから聴き始めたものだ。
デューク・エリントンと彼の楽団 3つの組曲
(Columbia)
グリーグ;「ペール・ギュント」組曲(抜粋)が猛烈に面白い。コンガが刻むリズムの上にテナー・サックス、バリトン・サックスが妖しく歌う「朝」は、北欧の朝どころか、アフリカの夜の雰囲気。ハリウッド映画で自動車が疾走するシーンに似合いそうな「山の魔王の宮殿にて」などなど、完全な換骨奪胎。
リシャール・ガリアーノ・セプテット
ピアソラ・フォーエヴァー
(Dreyfus)
ピアソラ自演に聴かれる、溶岩流のような重みのある熱を彷彿させる点で、ガリアーノに優るアコーディオン奏者はいないのではないか。彼が独奏した「『リベルタンゴ』の主題による即興」は、まるでピアソラが憑依したような凄まじさ。5分ほどが一瞬のうちに過ぎ去り、嗚呼、もう少し長く聴きたかったと嘆じずにはいられない。他のメンバーのプレイも、ライヴらしくテンションの高い全力投球が好ましい。昨今凡百のピアソラ演奏に冠絶する出来栄え。
ペーター・ホフマン ほか 聖しこの夜
(Sony)
ヘルデン・テノールが歌うクリスマス・キャロルの数々。…咆哮する金管、突き上げる弦、壮麗な合唱、ワーグナーのパスティシュを狙ったとしか考えられないアレンジには抱腹絶倒、とても聖夜の気分にはなれない(爆)。
一噌幸弘 ほか
リーヤリ
(ビクター伝統文化振興財団)
能管(田楽笛、篠笛、ゲムスホルンほか)とヴァイオリン、ウッド・ベースのトリオによる演奏だが、日本の祭囃子のようでもあり、シルクロードの民族音楽のようでもあり、ヨーロッパの中世・ルネサンス器楽曲のようでもあり、現代のジャズのようでもあり、まこと摩訶不思議な味わい。もちろん歌心と懐かしさに満ちた、きわめて上質な音楽。
真言聲明(豊山派) 日本7〜弘法大師御影供
(Ocora)
聲明のCDもいろいろ持っているが、やはりベストはこれ。優秀録音のおかげもあって、音色といい力といい、ただただ声に聴き惚れる。
この響き、この音の連なりに、体の奥底で共鳴するものがあるのは、民族の音楽的記憶というものだろうか。
エンマ・ザドゥリアン(指揮)男声合唱ほか アルメニア1〜中世の宗教音楽と器楽
(Ocora)
諸大国の狭間にあって苦難の歴史を歩んだアルメニア人の祈りの声には、哀切な響きが宿る。東方教会聖歌の中でも白眉というべきだろう。立花隆の文章で教えられた1枚。